ビスマルク - ドイツ帝国を築いた政治外交術 (中公新書 2304)
- 中央公論新社 (2015年1月23日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121023049
作品紹介・あらすじ
一九世紀ヨーロッパを代表する政治家、ビスマルクの業績は華々しい。一八七一年のドイツ帝国創建、三度にわたるドイツ統一戦争での勝利、欧州に同盟システムを構築した外交手腕、普通選挙や社会保険制度の導入-。しかし彼の評価は「英霊」から「ヒトラーの先駆者」まで揺れ動いてきた。「鉄血宰相」「誠実なる仲買人」「白色革命家」など数多の異名に彩られるドイツ帝国宰相、その等身大の姿と政治外交術の真髄に迫る。
感想・レビュー・書評
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厳格で、外交も戦争も内政もできる、強烈なリーダーシップを持ったカリスマ的指導者、それがビスマルク。読む前のイメージはめちゃくちゃかっこよかった。
実際どんな人物なんだろうと期待に胸を膨らませて読んでいたら、上に書かれたようなイメージと全く違うのだ。当時の時代に流されず保守的であるし、内政も外政も思い描いたとおりにいっていない。引退してからも政治に顔を出してくるややこしいおじいちゃんエピソードもめちゃくちゃ人間的だ。
だからといって、19世紀最大のドイツの政治家であることは間違いないし、政治手法やトラブルに対しての対処をこの本を通じて詳しく知ることができた。
筆者はあとがきで、それまで抱いていたビスマルク像をアップデートしてほしいという思いを持って書いたと語っている。等身大のビスマルクを知れる、いい本だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『鉄血宰相』のイメージが強かったのですが本書で生まれ持った考え方のベース、プロイセンの危機に対する外交手腕、彼の目指したものとその結果等の様々な事を知ることができました。
最新の資料や研究を基に分かりやすい解説で書かれておりビスマルクを知る良い本でした。 -
ドイツ建国の立役者、19世紀最大の政治家とも言われたビスマルクの生涯について、最新の研究成果をふまえて記したもの。自分は高校センター世界史レベルの知識しかなく、若い頃のエピソードなどは面白く読めた。政治家になってからについても、一歩間違えれば崩壊してしまいそうなヨーロッパで、なんとか国をまとめるために四苦八苦している様子が、これまで抱いていたビスマルク像と異なっていてそのギャップもよかった。
ただ逆に、研究的な視点から見てるせいか褒めることが少なく、彼のどこがすごかったのかわかりにくくなっている点はあるように見えた。 -
東2法経図・6F開架:B1/5/2304/K
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恥ずかしながら、ビスマルクなる人物を
深く知らなかった。
ちらっと、歴史の授業で習ったか、
どこかの書籍で登場してて、
名前を知ってる程度の知識。
なるほど、今のドイツの礎を
築いた人だたんですね。
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本書を読むまではビスマルクに関する基礎知識がほとんどない身でした。帯にも書いてあるとおり、ビスマルク=鉄血宰相、というイメージしかなかったのですが、本書を読んで全然違うイメージを持つようになりました。本書によればビスマルクはドイツ統一を政治目的として掲げていたわけではなく、あくまで保守的な価値観からプロシアの強大化を目指し、プロシア強大化の帰結(あるいは手段)としてドイツ統一がなされたという解釈です。また本書を読む限りにおいてはビスマルクが最も卓越していたのは政治外交術ということで、その反対に内政面では全然思惑通りに事が進まなかった、といった話も記述されていて興味深く読みました。
なるほどこういう風にビスマルクを解釈できるのか、と納得できた反面、おそらくビスマルクという人物は、批評家が簡単に表現できるような人物ではなく、本書で記述されているビスマルク像も「ワン・オブ・ゼム」なのだろうなという印象は持ちました。違う批評家が書けば違うビスマルク像が説得力を持ってあらわれる、という具合に。本書の冒頭に、ビスマルクは性格が全く異なる父と母のもとで育ち、その両方の特質を引き継いだ、というような記述がありますが、まさにこれこそがビスマルクを1つの枠にはめて語ろうとすることを困難にしているのではないでしょうか。それゆえにどのビスマルク像が他よりも「正しい」ということはなさそうである、というのが本書を読んだあとの印象です。 -
鉄血宰相というのはマスコミが誤って作ったフレーズであり、本当は違う。誤解。
ビスマルクは作られたイメージがある。
激動の時代、一つの決定が陳腐化するのも早かった。
というようなことが記載されており、ビスマルクに関する流れも同様だった。
読了60分 -
社会保険政策の始まりとされるビスマスク内政にふと興味を持って買ってみた。ビスマルクの生涯を考察する本だったので、社会保険政策に関する記述は少なめだったけど、高校の世界史を思い出しながら興味深く読めた。目的を達成するための手段の選択(近代的な広告手法やナショナリズムの利用など)と天才的な外交「術」に彼の特徴を見出すとともに、崇拝され、第一次世界大戦も経て神聖化された人物像を見つめ直し、客観的に考察している。内政外政において、全ての施策がうまくいった訳ではなく、むしろ当初の想定とは違う結果を招きながらも、場当たり的に対処していったみたい。
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一般的には、鉄血宰相と言われイメージが先行するビスマルクの人生を綴った1冊です。
文章が少し硬いせいもあるのか、回りくどい部分もあるけど、傲慢でワンマンな政治家というより、"プロイセンの1ユンカーがプロイセン存続の為にオーストリアを手玉に取り、フランスを撃破し、ドイツ存続の為に同盟を重ねがけして言った"と言う視点にすることでより等身大のビスマルク像が浮かび上がって来ます。
この人は"自分のスケールには身に余る19世期のヨーロッパの混乱をその外交センスと上からの革命を為すと言う信念だけで、時に自己を通しながら1つの形にして行ったのだ"、と。
丹念にその半生を見ていくとこのイメージはスンナリと腹に落ちて来ます。
因みにビスマルクの業績について、この本だけだと読むのに時間がかかるのでまずはYou Tubeで簡単な歴史を見てみると良いと思います。