ベーシック・インカム - 国家は貧困問題を解決できるか (中公新書)

  • 189人登録
  • 3.56評価
    • (2)
    • (25)
    • (19)
    • (2)
    • (0)
  • 31レビュー
著者 : 原田泰
  • 中央公論新社 (2015年2月24日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121023070

ベーシック・インカム - 国家は貧困問題を解決できるか (中公新書)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  •  国家の財政はベーシック・インカムに耐えられるのか? 本書はベーシック・インカム最大の問題点と考えられている財政問題に切り込み、そして現在の国民負担をほとんど増やすことなく、成人一人当たり7万円/月程度(子供は半額)のベーシック・インカムが可能なことを明らかにする。
     世界で最悪な部類に入る子供の貧困率、シングルマザーの貧困、そしてこれから確実に増加する無年金の高齢者たち。それらを解消するための仕組みは現在機能しているとは言えない。そこで、生活保護や基礎年金、児童手当、失業手当・・その他の「健康で文化的な最低限度の生活を営む」(憲法25条)ための仕組みをベーシック・インカムに置き換えることで一気に網羅的に(現在では生活保護システムにアクセスできない人が数百万人いると推定されている)、そして単純に解決できる。所得を把握する必要もないので、行政事務コストは限りなく削減できる。それらをベーシック・インカムでは救えない、経済的ではない困難を抱える人々の救済、「本来の仕事」に当たることができる、と著者は言う。
     新書なので各論について十分に詳しいわけではないが、総論においてベーシック・インカムを導入しない、という選択はないほどに説得的な本である。

  • 究極の「バラマキ政策」BIについて初めてまとまったものを読んだ。
    格差社会の現状から説き起こし,思想的系譜を辿った上で,良くある誤解に対するフォローや批判に対する反論を通じて,今の日本においてもBI導入は充分実現可能であると主張している。
    データに基づいて論じているのは好感がもてる。それによると,今の生活保護の水準を上回るような給付額には無理があるようだが,著者はそれでも問題ないとしている。
    子供への給付は「母親の口座に振り込む」とか,狭い仮設住宅より普通の家に二家族で住む方が快適だとか,賛同できない点もいくつか散見されるし,何より現実に問題なく回る制度かどうかについては全く説得的ではなかったのだが,BIの哲学や具体的な中身を知るには良い本だった。複雑極まりない各種社会保障制度を整理していく必要はおそらくあるんだと思う。最終的にBIを目指すにしても,一気に導入というのはとても無理だろう。ある程度の時間をかけて,徐々に一元化していくことになるのかな。

  •  経済学者が語るベーシックインカム。

     前半は話があっちこっち行ってしまってる感があるが、ベーシックインカムの財源について計算されてる第三章は一読の価値あり。BIを現在の予算に上乗せして考えてしまって無理だと言う人がいるが、この本に書かれてるように既存の社会保障に置き換えて行われるものなのである。

  • 興味はあれど、どうも絵に描いた餅に思えてならないベーシック・インカム。機会を見ては議論に触れるようにしてきたが、経済学の素養がさっぱりないこともあいまって、どうにもよくわからなかったり。そんなぼんやりした知見で述べるなら、2015年の今世に出た本書の新しさは、「現状をなるべく変えないように」を基本指針としているところにあると思う。
    全国民にカネをバラマくって、その原資は…?→現状費やしている生活保護費+国民年金+子ども手当+α。逆に言うと、この範囲内で賄える金額しかバラマかない。著者の試算によると月7万円。研究者の中には、左派的な視点からもっと手厚くしろとか、現行の生活保護費8万数千円より低いとは何事か、という主張もあるらしい。だが著者は、7万なら出せるが8万は無理、無い袖は振れない、とバッサリ言い切る。
    全国民にカネをバラマく原資の一助として、ベーシック・インカム7×12=84万以上の所得には一律課税するというが、エッ税金高くなんの…?→最も数が多い中間層に関して、現状の負担とほぼ同じになるようにする。今非課税になっているような人たちにとっては「増税」となるが(もとがゼロなのだから当然)、そのような層には、最低84万円の収入保障は大きな助けとなる。
    つまり、今みんなが払ってる税金の範囲内で、今みんな…ならぬごく一部の人だけが受けている福祉と同じだけを払い戻す。たったそれだけのことで、ベーシック・インカムという、一見夢物語のような制度が充分実現できる。これが著者の主張である。

    もはや「ベーシック・インカムとは何ぞや」の時期は脱したとの判断なのだろうが、社会のコストとシステム的、そして何より人々の精神的に、「無理なく手が届きそう」と思わせる論理展開は画期的だろう。数字に強い人らしく、ちょっとドライに割り切りすぎでは…と思う部分はなきにしもあらずだが、そこは各自補完しながら読めばよい。ひとつの提案として、よくできているように思った。「貧しいとはお金がないことだ。ならば、国がその人たちにお金を配れば、貧困はなくすことができるのではないか」「3.3兆円不足しているという問題を、100兆円かけても解決できないのはなぜなのか」とは、とりもなおさず明快だ。

    なお、日本の生活保護の捕捉率の低さ、つまり「本来必要としているのに受給できていない人の多さ」はリベラル派の声高な訴えによってつとに有名だが、諸外国と比べた場合、支給額の高さもまた飛び抜けていることを、私は寡聞にして初めて知った。
    つまり日本の生活保護は、ごく少数の人に(諸外国の受給者や、日本で受給しそびれている人から見れば)ものすごく手厚い保護を与えるという、とても奇妙なことになっている。それなら、たとえ薄くとも広く、「おにぎり食べたい」と書き残して餓死するような人が二度と出ないようなバラマキをおこなったほうが、まだしも「マシ」なのではないか…この「マシ」という表現を、著者は幾度もくり返す。そこにこそ本書の真髄が表れていると、私は思う。

    2015/2/26〜2/27読了

  • この著者の論説はベーシックインカムの問題のみならず、広く社会学を学ぶ上で役に立つ考え方が盛り込まれているのでかなり勉強になった。しかし、きちんとかみしめようと思うと一回読むだけでは足りない。
    また、経済学の話はちょっと理解しがたい部分もあったので改めて勉強しなおさないとだめだと感じた。
    ベーシックインカムの議論自体は別の著者の本やコラム等で見ているので改めて語ることはそんなにないが、ベーシックインカムを導入すべきかは各人の哲学に依るという一つの事実が提示されており、その哲学の例がいくつか出されていたことは本書におけるハイライトだと思う。大変興味深い。

  • メモ
    大学授業課題として読んでる

  • ベーシックインカム。それは「すべての人に生きていくために必要なお金を年齢、性別に関係なく配ってしまおう」という政策のことだ。最近ではAIの発展との関係で語られることも多くなり注目を集めている。

    本書は、そのベーシック・インカムについて具体的な例をあげつつ、その実現の可能性について論じている。著者の結論は「私は、日本もイギリス、フランス、ドイツ、アメリカのように給付水準を引き下げて、生活保護を受ける人の比率を高くすべきと考える」というもので、その行き着く先がベーシック・インカムだということだ。もちろん、是非はあるだろうが、現在の格差や貧困の問題を解決しうる一つの方法として学んでおきたいテーマであり、本書はその基本図書のひとつになるだろう。

  • 特定のバラマキ政策をするよりはBIを採用する方が効果があることが分かった。基本的に全ての人の年間所得は「自分の所得×70%(30%は税金)+BI 84万円(月7万)」となり、収入のない人でも84万円が支給されるというもの。これで今の生活保護制度や年金といった社会保障等の代替えができ、かつ財源もそこからと所得税30%でカバーできるという。あくまで理論上の話ではあるが、現状の政策はお金ばかり使って目的を果たせないのだから、実際やってみる価値がある理論だと思う。

  • AIからBIへ。今年の日本でこの議論はすすまないだろう。公務員の仕事が減るだろうから。

  • ベーシック・インカム(BI)に関する議論は、日本では一時盛んだった。山森亮『ベーシック・インカム入門』(光文社)は2009年刊、2010年には『POSSE』や『現代思想』がBI特集を組んでいたし、それ以外にも堀江貴文や東浩紀といった様々な立場の人がBIについて積極的な発言をしていた。2017年の今日、議論は低調である。本書『ベーシック・インカム』が刊行された時点(2015年)でも、すでに低調だった(書店の新刊コーナーで本書を見つけたとき、妙なタイミングで出てきたものだな、と思ったことを覚えている)。低調の理由として著者・原田は、1.BIが巨額の財政支出を伴うとの誤解が広まったこと、2.貧困は必ずしもお金だけの問題ではないとの認識が広まったこと、の2点を挙げる(「はじめに」)。おそらく、大きいのは1点目であり、そして本書の特色はこれに対してなるべく具体的な解答を提示しようという点にある。

    つまるところ、本書の肝はBIの財政学的検討であり、それは具体的には最終章である第3章でなされる。ちなみに、第1章では日本の貧困の現状を概観し、第2章ではBIの思想的位置づけを整理する。第2章はそれなりに有用かもしれないが、近衛文麿のくだりはあんなに紙数を割く話でもないだろう。

    そして肝心の第3章である。「BIは財政的に実現可能なのか」という点のみが知りたい、という向きはこの章だけ読んでもよいかもしれない。具体的には、BIの給付水準、財源、既存の制度との整合性、などの制度設計の問題に加え、BIに関してよく話題となる「労働意欲を阻害するか」「BIは賃金を引き下げるか」といった問題も検討される。

    この章に限らず、本書の特徴は多くのBI本にありがちな左翼臭さがない点である(著者自身も別に左翼ではないだろう)。理念・理想を説くという風でなく、文体なども全体的にサバサバした印象だ。そんなわけだから、左翼系の議論が避けたりごまかしたりしがちな領域にも、恐れることなく入っていく。例えば「BIと移民」の問題(152‐154頁)。著者は、この問題を論じるにあたって、まず宣言する。「BIは、移民を制限することになる」「福祉国家は、移民を制約する国家であることを、むしろあらかじめ明らかにしておくべきだ」。まぁ当然と言えば当然の話なのだが、「弱者への配慮」や「開かれた共同体」を旨とする左翼にあっては、このような言い切りがなかなかできないものなのである。

    文章もわかりやすいし、気軽に読める一冊である。広く読まれてほしいものだ。確かに、日本での議論はすっかり下火だが、世界ではBIに関して様々な実験がなされつつある。依然として注目に値するアイディアだと思う。

全31件中 1 - 10件を表示

原田泰の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
トマ・ピケティ
エリック・ブリニ...
有効な右矢印 無効な右矢印

ベーシック・インカム - 国家は貧困問題を解決できるか (中公新書)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

ベーシック・インカム - 国家は貧困問題を解決できるか (中公新書)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

ベーシック・インカム - 国家は貧困問題を解決できるか (中公新書)を本棚に「積読」で登録しているひと

ベーシック・インカム - 国家は貧困問題を解決できるか (中公新書)の作品紹介

格差拡大と貧困の深刻化が大きな問題となっている日本。だが、巨額の財政赤字に加え、増税にも年金・医療・介護費の削減にも反対論は根強く、社会保障の拡充は難しい。そもそもお金がない人を助けるには、お金を配ればよいのではないか-この単純明快な発想から生まれたのが、すべての人に基礎的な所得を給付するベーシック・インカムである。国民の生活の安心を守るために何ができるのか、国家の役割を問い直す。

ベーシック・インカム - 国家は貧困問題を解決できるか (中公新書)はこんな本です

ベーシック・インカム - 国家は貧困問題を解決できるか (中公新書)のKindle版

ツイートする