ベーシック・インカム - 国家は貧困問題を解決できるか (中公新書 2307)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 411
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  • Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121023070

作品紹介・あらすじ

格差拡大と貧困の深刻化が大きな問題となっている日本。だが、巨額の財政赤字に加え、増税にも年金・医療・介護費の削減にも反対論は根強く、社会保障の拡充は難しい。そもそもお金がない人を助けるには、お金を配ればよいのではないか-この単純明快な発想から生まれたのが、すべての人に基礎的な所得を給付するベーシック・インカムである。国民の生活の安心を守るために何ができるのか、国家の役割を問い直す。

感想・レビュー・書評

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  • ベーシック・インカムー国家は貧困問題を解決できるか
    著作者:原田秦
    発行者:中公新社
    タイムライン
    http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698

  • ヤバい理論と言われるベーシックインカムを、現在の予算などを考慮して真剣に行うにはどうするかを記した本である。とても現実もがあって面白いと思った。
    ただこれをリアルでやるなら国会が荒れるだろうなあ。

  •  国家の財政はベーシック・インカムに耐えられるのか? 本書はベーシック・インカム最大の問題点と考えられている財政問題に切り込み、そして現在の国民負担をほとんど増やすことなく、成人一人当たり7万円/月程度(子供は半額)のベーシック・インカムが可能なことを明らかにする。
     世界で最悪な部類に入る子供の貧困率、シングルマザーの貧困、そしてこれから確実に増加する無年金の高齢者たち。それらを解消するための仕組みは現在機能しているとは言えない。そこで、生活保護や基礎年金、児童手当、失業手当・・その他の「健康で文化的な最低限度の生活を営む」(憲法25条)ための仕組みをベーシック・インカムに置き換えることで一気に網羅的に(現在では生活保護システムにアクセスできない人が数百万人いると推定されている)、そして単純に解決できる。所得を把握する必要もないので、行政事務コストは限りなく削減できる。それらをベーシック・インカムでは救えない、経済的ではない困難を抱える人々の救済、「本来の仕事」に当たることができる、と著者は言う。
     新書なので各論について十分に詳しいわけではないが、総論においてベーシック・インカムを導入しない、という選択はないほどに説得的な本である。

  • 究極の「バラマキ政策」BIについて初めてまとまったものを読んだ。
    格差社会の現状から説き起こし,思想的系譜を辿った上で,良くある誤解に対するフォローや批判に対する反論を通じて,今の日本においてもBI導入は充分実現可能であると主張している。
    データに基づいて論じているのは好感がもてる。それによると,今の生活保護の水準を上回るような給付額には無理があるようだが,著者はそれでも問題ないとしている。
    子供への給付は「母親の口座に振り込む」とか,狭い仮設住宅より普通の家に二家族で住む方が快適だとか,賛同できない点もいくつか散見されるし,何より現実に問題なく回る制度かどうかについては全く説得的ではなかったのだが,BIの哲学や具体的な中身を知るには良い本だった。複雑極まりない各種社会保障制度を整理していく必要はおそらくあるんだと思う。最終的にBIを目指すにしても,一気に導入というのはとても無理だろう。ある程度の時間をかけて,徐々に一元化していくことになるのかな。

  •  経済学者が語るベーシックインカム。

     前半は話があっちこっち行ってしまってる感があるが、ベーシックインカムの財源について計算されてる第三章は一読の価値あり。BIを現在の予算に上乗せして考えてしまって無理だと言う人がいるが、この本に書かれてるように既存の社会保障に置き換えて行われるものなのである。

  • 興味はあれど、どうも絵に描いた餅に思えてならないベーシック・インカム。機会を見ては議論に触れるようにしてきたが、経済学の素養がさっぱりないこともあいまって、どうにもよくわからなかったり。そんなぼんやりした知見で述べるなら、2015年の今世に出た本書の新しさは、「現状をなるべく変えないように」を基本指針としているところにあると思う。
    全国民にカネをバラマくって、その原資は…?→現状費やしている生活保護費+国民年金+子ども手当+α。逆に言うと、この範囲内で賄える金額しかバラマかない。著者の試算によると月7万円。研究者の中には、左派的な視点からもっと手厚くしろとか、現行の生活保護費8万数千円より低いとは何事か、という主張もあるらしい。だが著者は、7万なら出せるが8万は無理、無い袖は振れない、とバッサリ言い切る。
    全国民にカネをバラマく原資の一助として、ベーシック・インカム7×12=84万以上の所得には一律課税するというが、エッ税金高くなんの…?→最も数が多い中間層に関して、現状の負担とほぼ同じになるようにする。今非課税になっているような人たちにとっては「増税」となるが(もとがゼロなのだから当然)、そのような層には、最低84万円の収入保障は大きな助けとなる。
    つまり、今みんなが払ってる税金の範囲内で、今みんな…ならぬごく一部の人だけが受けている福祉と同じだけを払い戻す。たったそれだけのことで、ベーシック・インカムという、一見夢物語のような制度が充分実現できる。これが著者の主張である。

    もはや「ベーシック・インカムとは何ぞや」の時期は脱したとの判断なのだろうが、社会のコストとシステム的、そして何より人々の精神的に、「無理なく手が届きそう」と思わせる論理展開は画期的だろう。数字に強い人らしく、ちょっとドライに割り切りすぎでは…と思う部分はなきにしもあらずだが、そこは各自補完しながら読めばよい。ひとつの提案として、よくできているように思った。「貧しいとはお金がないことだ。ならば、国がその人たちにお金を配れば、貧困はなくすことができるのではないか」「3.3兆円不足しているという問題を、100兆円かけても解決できないのはなぜなのか」とは、とりもなおさず明快だ。

    なお、日本の生活保護の捕捉率の低さ、つまり「本来必要としているのに受給できていない人の多さ」はリベラル派の声高な訴えによってつとに有名だが、諸外国と比べた場合、支給額の高さもまた飛び抜けていることを、私は寡聞にして初めて知った。
    つまり日本の生活保護は、ごく少数の人に(諸外国の受給者や、日本で受給しそびれている人から見れば)ものすごく手厚い保護を与えるという、とても奇妙なことになっている。それなら、たとえ薄くとも広く、「おにぎり食べたい」と書き残して餓死するような人が二度と出ないようなバラマキをおこなったほうが、まだしも「マシ」なのではないか…この「マシ」という表現を、著者は幾度もくり返す。そこにこそ本書の真髄が表れていると、私は思う。

    2015/2/26〜2/27読了

  • 日本の社会保障制度はこの数十年、その体制をほぼ変わらずに維持しているが、果たしてそれは現代社会と適合しているのか?
    生活保護や年金など、その体制維持が破綻しかけているもの、本来の役割を果たしきれず、真に必要としている人の元へ届いていないものなどの、抜本的な見直しが必要だと感じた。
    また、ベーシック・インカムは現行制度と比べて効率性が高いことが分かった。

  • 最近何かと話題となってるベーシックインカムだけど、それに関して哲学的な問いから現在の政府の問題まで分かりやすく説明されていて面白かった。
    日本の生活保護の金額が他の国よりも高いってのはびっくり。狭く高額に配るよりと、広く浅く配ってほしいな。
    フリードマンの、平等主義者と自由主義者は真っ向から対立するってのは面白かった。 自分は平等主義者よりかも、、、

    自分は経済学者出ないし経済事情について詳しくないけど、本当にこの通りにすすむんだったらぜひベーシックインカムを導入して欲しいと思った。

  • 背ラベル:364-ハ

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001061967

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著者プロフィール

1950年生まれ。東京大学農学部卒業。学習院大学博士(経済学)。経済企画庁国民生活調査課長、海外調査課長、財務省財務総合政策研究所次長、大和総研専務理事チーフエコノミスト、早稲田大学政治経済学術院教授、日本銀行政策委員会審議委員などを経て、現在、名古屋商科大学ビジネススクール教授。著書『昭和恐慌の研究』(共著、東洋経済新報社、日経・経済図書文化賞受賞)、『日本国の原則』(日経ビジネス人文庫、石橋湛山賞受賞)、『若者を見殺しにする日本経済』(ちくま新書)、『ベーシック・インカム』(中公新書)、『デフレと闘う』(中央公論新社)など多数。

「2021年 『コロナ政策の費用対効果』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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