チェ・ゲバラ - 旅、キューバ革命、ボリビア (中公新書)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121023308

作品紹介・あらすじ

1928年、アルゼンチンに生まれた革命家チェ・ゲバラ。医学生時代にラテンアメリカを旅し、貧富の格差や米国支配の問題に目覚める。カストロ兄弟と共にゲリラ戦で活躍し、59年のキューバ革命政権樹立に貢献。要職を歴任するものの、思いは全ラテンアメリカでの革命推進にあった。再び戦地に赴くチェ。だが前哨戦のコンゴ、続くボリビアで過酷な現実に直面し…。彼の遺した膨大な文章と関係者への取材から実像に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    中二心をくすぐるにはうってつけのキャラ・ゲバラ。
    「革命=ゲバラ」という概念が現漂うあたり、彼が現世に与えた影響はとても大きい。
    ただ、今のラテン・アメリカを見るあたり、彼の活動によって国自体が何か好転したのかと思うと、?マークが出てくる。

    彼の争いの結果、なにが生まれたのか、なにが変わったのか、いまだによく分からない。
    ただ、「生きがい」だけは強く持っていたんだろう。
    そしてそれに向かって日々邁進していたんだろう。

    自分の生まれた意味を知り、それに向かって生きていけた点。
    そして後世に名を遺せたというあたり、男冥利に尽きるだろうなー

    決して革命戦争を起こすつもりはないが、自分も頑張らねば・・・・


    【内容まとめ】
    1.アルゼンチン生まれの革命家エルネスト・チェ・ゲバラ
    2.大学医学部を卒業し医師資格を取得し、「手術するメスを銃に替え、肉体の患部ではなく社会の病根を断つ」と28歳の時キューバでの革命戦争に異邦人ながら参戦。


    【引用】
    アルゼンチン生まれの革命家エルネスト・チェ・ゲバラ(1928~1967)の生涯を描いたもの

    大学医学部を卒業し医師資格を取得し、「手術するメスを銃に替え、肉体の患部ではなく社会の病根を断つ」と28歳の時キューバでの革命戦争に異邦人ながら参戦し、30歳で英雄になった。

    貧困に苦しむ人々や虐げられた人々を救い、新しい社会や国を創る「革命という正義」に身を投じたチェは、革命家であふことを「人生最高の姿」と誇りにしていた。
    悲観も楽観もせず、ひたすら社会正義実現のために邁進するチェ自身のような「新しい人間」を21世紀に向けて生み出していきたいと願っていた。


    p31
    9ヶ月間のグアテマラ体験は、エルネストの人生の転換点となった。
    激しい戦闘、暴力こそが敵を倒し、ラテンアメリカを解放する唯一の手段だと認識したのである。
    「広大なラテンアメリカでの当てのない旅路は、思った以上に私を変えた。グアテマラで革命家になり始めた。」と後に記す。


    p65
    なぜキューバで戦っているのか?
    「私の祖国はラテンアメリカ全体だ。
    どの国であっても、その解放のために戦うという民主的努力を払わねばならないと考えていた。
    武闘以外に解放手段がないから戦っている」

  • チェ・ゲバラが英雄と呼ばれる所以、今でも信奉される所以を知りたかったのだが、その頃のキューバ内政にはあまり触れられず、肝心なところがよくわからなかった。あと次から次へ登場人物が出てきて混乱した。
    チェ・ゲバラの印象は、ちょうど素晴らしい写真が撮れたから有名になった革命アイドル。イケメンで良かったね。キューバに思い入れがあるわけでもなんらかの政治的思想を持っているわけでもなく、革命が好きなのである。

  • 革命に勝利してもそれで終わりではない。旧政府側の勢力はいつでも巻き返しを計っているだろうし帝国主義も黙っていてはくれない。それに内部での路線対立もある。アメリカ大統領がケネディでなかったらカストロ体制は崩壊していただろという著者の指摘からも常に紙一重だったことがわかる。
    この奇跡のような革命をアフリカやラテンアメリカでも起こそうと行動し、最後はボリビアに散ったゲバラ。キューバに残りカストロの右腕としての彼を見てみたかった。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/685439

  • すごく面白かったです!!!淡々とした形で、史料と関係者へのインタビューをもとに事実を追っていっているのですが、それが面白い。印象に残った部分がいくつもありました。
    ・先妻と後妻。後妻アレイダが、先妻イルダと初めて顔を合わせた機会について、自著に記した言葉。:「私が想像していたイルダ像は崩れ落ち、私の自尊心が強まった。この人は恋敵にはなりえないと確信した」
    ・1959年にゲバラさんが日本に来た時、ある商社の若い社員だった小松右京がスペイン語通訳として応対。小松右京の自著の言葉:「彼が死んだとき、あの深海のように底知れぬ深みをたたえた瞳と、砂糖を売る際に示した非常な熱意を思い起こさざるを得なかった」。広島訪問では「なぜ日本は米国に対して原爆投下の責任を問わないのか」と広島県職員に質し、フィルム4本を費やして広島を写真で記録した。
    ・ゲバラさんらキューバ使節団一行は、日本側から夫人用に御木本真珠を贈られたが、ゲバラさんは個人で店に行き、前妻イルダのために同じものを買った。
    ・ゲバラさんはけっこう外遊しており、1960年に北朝鮮で金日成主席にも会っている。その際にゲバラさんが記したこと:「朝鮮は最も印象深い国だ。都市には何もない。北朝鮮は死でできた国だ」
    ・ゲバラさんの有名な写真は31歳のときのもので、写真家アルベルト・コルダがとらえた一瞬の表情。
    ・「ケネディ政権は危機収束直後の11月初め、池田勇人首相の日本政府にキューバとの国交断絶を働きかけた。エドゥウィン・ライシャワー駐日大使が大平正芳外相に提案したのだが、外相は即答を避け、結局、国交断交はなかった。正しい判断だった」
    ・ゲバラさんが1965年、カストロさんに宛てた「別れの手紙」は、ゲバラさんが意図せずすぐに、しかも不本意な改竄が加えられて公開され、それがゲバラさんの有名な革命標語として残っている(←改竄の点は取材に基づく著者の自説ですが説得力がありました)

    ゲバラさんは、イケメンで、メモ魔で、大変な勉強家で賢くて、熱心でアツすぎて、喘息もちで、でもとても魅力的な人だと思いました。キューバを出てボリビア遠征に行く過程もしっかりと描かれていて、ゲバラ日記の位置づけもわかりました。

  •  チェは大きな旅を経て人生目標に辿り着いた。旅は若者を変身させる。個人主義的なアルゼンチン人医師エルネストは、愛他的なラテンアメリカ人革命家チェに変身した。言い換えれば、人間の病気を治す医師から、社会の病根を断ち切る革命家へと転じた。グアテマラで得た教訓と、メキシコでのフィデル・カストロとの邂逅が決定的だった。出会い結婚し一児を儲けたイルダ・ガデラは、思想や知的な面で触媒の役割を果たした。(p.44)

  • 医学生として、革命家として、政治家として、父親としてのチェが、ジャーナリストによって丁寧に記述されている。チェの半生を通じて、当時のキューバとラテンアメリカの様子がよくわかる。キューバメキシコ旅行中に読む。

  • 革命家こそ、人間のあるべき姿と考えたチェ。
    伸びきった生き方のように感じた。

  • 革命家チェ・ゲバラの生涯について、アルゼンチンで過ごした幼少期から革命家を目指すきっかけとなった南米大旅行、そしてキューバ、コンゴで起こした革命の様子やボリビアでの最期が記されている。

    内容的にはかなり詳細に記述さており、資料的な役割は非常に高いと思われるが、淡々と事実が語られているため、読み物としてはちょっと物足りなさを感じた。

    アメリカの帝国主義を憎み、革命によって神格化されたゲバラだが、もし生きていたのであれば此度の国交正常化に際し、どんなコメントを残したのだろうか、大変興味深い。

  • 信念と瞑想の男、チェ・ゲバラ。その確固たる思想ゆえの栄光と挫折の足跡を追うことのできる好書。若干マニアックと思われる情報もつぶさに記述することで、却ってこの時代のキューバや南米、そしてチェ自身の置かれた状況の複雑さを炙り出すことに成功していると思う。

    スターリン以降のソ連における一国社会主義に、それとは相反するはずのアメリカ帝国主義に通ずる大国による小国の搾取の腐臭を嗅ぎ取り、これに民族主義的な現地主義を対置しようとしたチェの理念は一貫している。しかしアルゼンチンでの「人民ゲリラ軍」全滅あたりから、実情を顧みず理念を無理矢理現地に適用するかのような言動が増えて行く。最期の地ボリビアでも理念至上主義は変わらず、その取り返しのつかない蹉跌の帰結は読んでいて痛々しいが、まさにこの頑なさ、一徹さが死後半世紀経ってもなお人々をしてチェを英雄視させている要因の一つなのだろう。

    それにしても、本書の刊行の契機となったはずの米玖国交正常化一つとっても、未だにチェやフィデル・カストロが活躍した時代からの光の照射によって浮かび上がることの多さに驚かされる。例えば、西欧的価値観の代弁者を自任する今のアメリカが、ほんの半世紀前にその立場を守らんがためになりふり構わずしたことを想起する意味でも、この時代に焦点を当てる意味は相当にあると思う。

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著者プロフィール

1943年、東京生まれ。ジャーナリスト。1967年からラテンアメリカ全域を取材。『チェ・ゲバラ』(中公新書)、近著『キューバと米国』(LATINA)など著書・訳書多数。月刊誌『LATINA』に「ラ米乱反射」連載中。ブログ「現代ラテンアメリカ情勢」掲載中。立教大学ラテンアメリカ研究所学外所員。元共同通信記者。

「2017年 『チェ・ゲバラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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