「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて (中公新書 2332)

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著者 : 大沼保昭
制作 : 江川 紹子 
  • 中央公論新社 (2015年7月24日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121023322

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「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて (中公新書 2332)の感想・レビュー・書評

  •  「歴史認識」と書名にはあるが、内容はより幅広く、あの戦争に至るまでの20世紀前半の歴史、またその後の東京裁判、日韓・日中国交正常化、教科書問題、サハリン残留韓国人、指紋押捺等、戦争に纏わる多くの個別問題を網羅している。特にアジア女性基金については、筆者の関わりが強かったためか一つの章を割いている。インタビューの再構成なので平易で読みやすい。
     筆者はあとがきで、ある人から見れば「自虐」論者、ほかの人から見れば「御用学者」にされてしまう、と述べている。別の箇所で、80年代頃からいわゆる進歩派そしてメディアの間で、きっぱり加害と被害に分ける二分法的な物言いが目立つようになってきた、と書いているが、とかく歴史問題については、極端に走らない議論をしようとすると左右双方から攻撃されるということなのだろう。
     筆者は、たとえば東京裁判が勝者による不公正な裁きであったことや、日本のみならず欧米列強を含む他国も負の側面を抱えていることは指摘しており、また中韓の対日批判を全面的に肯定してはいない。その上で、他国からの対日批判には問い返せばいいとしつつも、「その問い返しが単に自己や日本の正当化のためであってはならない」と述べている。「自虐史観」「自尊史観」のいずれにも走らない難しいバランス感覚が必要となるが、二分法的な議論が世にはびこる中ではなかなか容易ではないだろう。

  • 江川紹子が慰安婦問題について 2013 に取材を申し込んだところから始まっている。大沼氏から江川氏に共同作業を申し込む形で、インタビュー形式の本書が成立している。主張が分かれ対立する主題に関するわかりやすい見取り図を提示している。

    話題は、東京裁判、サンフランシスコ平和条約、日韓・日中の正常化、戦争責任と戦後責任、慰安婦問題にわたっている。2015 年までの時間の流れの中で、南京問題や慰安婦問題をどう考えたらよいかの指針となる。
    現在騒がれていることは、本質を外していると思えてならない。
    中共が賠償を放棄したこと、

    一方、戦争と植民地支配の責任認識に関して、敗戦国の日独は進んでいて、戦勝国は緒にもついていないと感じられる。「知識人」とされる人でも、植民地支配を肯定的にしか捉えられずにいる様子。
    日本にしても、戦後二十年ほどの認識は実に貧弱。

    第一次大戦後に戦争が国際法で違法化された画期的時期に満州事変を起こすという情勢認識能力の欠如も目を覆うようだ。人種差別も、自分が差別されることには抵抗しつつ自分が差別する側に回りたいだけだったこと。
    満州事変を批判した横田喜三郎は脅迫に遭って沈黙したが、国際連盟脱退に反対した石橋湛山は正しいことを言い続けて逮捕されずに生き延びたことも教えられた。

  • 確かに、現在「歴史認識問題」と言えば、韓国併合から満州事変、太平洋戦争を経て、その戦後処理に係る日韓、日中の対立を限定的に指している。靖国参拝、竹島や尖閣諸島、慰安婦といった問題は、それなりに報道に注視し、親と語らい、解説書や小説を読むことで、自分なりに認識しようと努めてはきたけれど、容易じゃない。感情を排するのは無理だから、多様な角度から学ぶことで素直な感情を抱きたい。けれども、他国の激しく執拗な批判や、自国の政治家の言わずもがなの繰返しに憤り、冷静を保てない。本書で改めて学ぶに、この問題は今後「きっぱりと加害と被害に分ける二分法的な物言い」に辟易しつつ、自負と呵責の狭間で揺れ続けることが大切に思う。

  • 国際法学者として、史実に立脚した冷静できちんとした分析、日本以外への批判も自己弁護のためではなくちゃんとされているのもすがすがしい。

  • 今の日本にはこのように冷静に事実に基づいた分析、物言いが必要。もっと声大きく発言して頂きたい。

  • 勉強になりました。

  • 「歴史認識」とは、日本人として、日本の近代史をどう考えるのか、ということだ。著者は、この問題について頭で考えただけの人ではない。アジア女性基金理事として多くの人との対話を重ねる中で試され、磨かれた末に得たであろう、実の詰まったことばで、この難しい問題をていねいに説明してくれている。
     とくに慰安婦問題については、韓国の問題ばかりがクローズアップされるが、オランダやインドネシア、台湾などの慰安婦もいたこと。それらの国々には「アジア女性基金」などの取り組みを通じて、首相の手紙を渡したり、資金的な援助をしたり、いろんな活動を行ってきたこと。ただ韓国だけは、「国家補償」にこだわる支援団体の頑なな対応がゆえにうまくいっていないことなど、交渉に当たった当事者としての言葉だけに重みがある。
     日本はたしかに近代化の過程でとくにアジアの諸国に多大な迷惑をかけた。それを「解決」しようと思ってはいけない。「侵略じゃなかった」とか否定するより、間違いは間違いと認めてはじめて、かつての植民地支配について「謝ってもいない」欧米諸国とは違う立ち位置に立てるのだという指摘、実にそうだなぁと思う。

  • 国際法学者としてのキャリアが、史実を恬淡として読み解いておられると感じた。
    歴史修正主義者の発する言動は、少々暑苦しいところがあるが、大沼氏の説明には肩の力が抜けており、戦前戦後の日本の歩んだ道の概略として解りやすいものがあった。
    第5章 二十一世紀世界と「歴史認識」において、英仏・米などの植民地責任が今後問われる可能性に言及されている。
    日本が戦後取った戦争責任は堂々と世界に誇れるものだとの認識に国民も胸を張れという。
    江川紹子さんの聞き方もさりげなくていいものでした。

  •  戦後70周年の今年(2015年)、先の大戦が再び注目されている。特に周辺諸国との関係で歴史認識は重要な要素になっている。太平洋戦争とそれに付随する様々な問題。日本は加害者と被害者の両側面を持っており、認識が複雑になっている。著者は基本的に東京裁判史観を肯定的だが、過度に自虐史観に陥るのではなく、戦後の日本の取り組みで誇れる部分もあるとしている。特に強調しているのは俗人に視点というもので、よく議論でありがちな非現実的な思想を批判している。個人的に共感する考え方だった。

  • 「歴史認識」に関わる見取り図。戦争・植民地支配・人権への国際社会全体の捉え方が20世紀を通じて大きく変わり、法的に解決されたつもりだった問題に見直しが求められるようになったこと。日本国民に、反省をしつつも不公平さへの割り切れない思いが存在していたこと、中国韓国の被害者意識の矛先が日本に向けられやすいこと。

    よくある反論ポイントをきっちり質問し、納得できる回答。捉え方や考え方が示されていてわかりやすかったです。

  • 日中・日韓関係を極端に悪化させる歴史認識問題。なぜ過去をめぐる認識に違いが生じるのか、一致させることはできないのか。本書では、韓国併合、満洲事変から、東京裁判、日韓基本条約と日中国交正常化、慰安婦問題に至るまで、歴史的事実が歴史認識問題に転化する経緯、背景を具体的に検証。あわせて、英仏など欧米諸国が果たしていない植民地支配責任を提起し、日本の取り組みが先駆となることを指摘する。

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「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて (中公新書 2332)の作品紹介

日中・日韓関係を極端に悪化させる歴史認識問題。なぜ過去をめぐる認識に違いが生じるのか、一致させることはできないのか。本書では、韓国併合、満洲事変から、東京裁判、日韓基本条約と日中国交正常化、慰安婦問題に至るまで、歴史的事実が歴史認識問題に転化する経緯、背景を具体的に検証。あわせて、英仏など欧米諸国が果たしていない植民地支配責任を提起し、日本の取り組みが先駆となることを指摘する。

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