地方消滅 創生戦略篇 (中公新書)

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著者 : 増田寛也
制作 : 冨山 和彦 
  • 中央公論新社 (2015年8月24日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121023339

地方消滅 創生戦略篇 (中公新書)の感想・レビュー・書評

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  • 私の本来の計画は、関西の大学を卒業して、地元で就職することでした。しかし私の力が及ばず、希望した場所に進学できず、関東の私学で勉強することとなりました。

    就職を決めるとき、「関東の大学出たのだから、関東で仕事見つけるべき」というアドバイスに納得するところがあり、それ以来、関東地方に住んでいます。何度かの引っ越しを経験しましたが、記憶に残っている場所は、小学校5年生から大学入学まで過ごした、神戸です。

    故郷を離れて30年経過したときに出た、中学校の同窓会を機に、地元のことが気になるようになりました。そんな私にとって、この本の「地方消滅」というタイトルは私の興味を惹きつけるものがありました。地元の方が美味しいものも食べられるし、景色も綺麗だけど、仕事を見つけるのが難しそうというのが私の感触です。私が既に若くなく、中高年であることも起因していると思いますが。

    この本では、地方を活性させるためには、東京への一極集中でもなく、地方分散でもない、地方の核への集中・夫婦二人が働けば地方でも幸せに暮らしていくためにはどうすべきかについて、増田氏・富山氏の対談の形式で議論が進んでいます。明治維新で中央集権となってから、そろそろ150年、今のシステムを見直す時期に来ているのでしょうか。

    以下は気になったポイントです。

    ・従来、経済が衰退すれば人手は余るというのが常識であった、しかし東北地方を中心に、現在の日本の地方では、急激な人口減少が進んでいる(p3)

    ・労働生産性をあげて、そして賃金を上げるには、2つのやり方しかない。分子にあたる、付加価値生産額を上げる=お客さんにより高い価格で評価してもらう、もう一つは、分母にあたる、投入労働時間を効率化する、きわめて普通な企業経営の話(p4)

    ・全国1799の市区町村のうち、896において、2010年から40年にかけて、子供を産む中心的な年齢の女性の人口は半分以下に減ることがわかった、これを消滅可能性都市という、その中でも総人口が1万人を下回る523の自治体はより消滅可能性が高い(p10)

    ・日光鬼怒川温泉において、傾斜支援ができたのは、メインバンクだった足利銀行が破たんして国有化されたから(p18)

    ・日本人が世界でも稀なほど拡散して居住するようになったのは戦後である(p25)

    ・従業員にちゃんとした給料を払えるようにするためには、県庁所在地やせめて、第二、第三の都市に人を始めとした資源が集中することが重要になる(p32)

    ・地方で共働きで年収500万以上を稼ぐイメージ、それが重要(p35)

    ・大学にはいまだに実務家教員を軽視する雰囲気がある、迎え入れるときは平身低頭、いざいくと既存の学部教員のほうが偉い(p70)

    ・地方大学の理系は、地域の産業と近いケースが多い(p75)

    ・議員内閣制の国政に対して、地方自治は、大統領制に近い仕組み。国政では衆議院で多数をとった政党の党首が総理大臣になるが、地方議会の場合、首長と議員が別々に選ばれる大統領制に近く、議員の選挙では何を選んでいるのかわからない(p85)

    ・地方政治においては、首長の在位期間が長くなるほど、首長に力が集まる。地方議会には予算提案権がなく、予算の否決と、減額修正しかできない(p87)

    ・65歳の定年後ではなく、60歳手前だと、いろいろな決断ができる、50代でセカンドライフを考えるように促すべき(p97)

    ・アメリカビック3は、省エネ技術を磨く代わりに、マスキー法を葬り去ろうと、ワシントンで莫大なお金を使ってロビイングをかけた、日本の自動車メーカは、一生懸命エンジンを開発して、それをクリアーした(p111)

    ・福島県の農産物の収穫量は、14年には38.1万トンまで回復しているが、風評が買い叩く材料になっているので、値段はなかなか戻っていない(p121)

    ・国民皆保険・皆年金が実現した、昭和36年には、定年が55歳、平均寿命が66歳であった(p131)

    ・東京ではUberを使う必要性がない、それによる配車の効率性が活きるのは、むしろ過疎地域のほうである(p133)

    ・佐川急便がアマゾンの取引から撤退して、今は、ヤマトと日本郵便でやっている(p141)

    ・ローカルの大学がミニ東大を目指さないことが重要である(p152)

    ・すでにコマツは、IOT会社になっている。GPSによる運行監視システムはロシアのベンチャー企業を買収、それをハードウェアにおける自らのダントツ技術と組み合わせて、完全にIOTのサービス型ビジネスモデルのプラットフォームをつくりつつある(p198)

    ・日本人は世界で一番、キャッシュで買い物をする国民である。(p161)

    ・今は新幹線開業ブームに沸いているが、新幹線ができると企業が支店を引き上げることになる(p166)

    ・現在起こりつつあるイノベーションの例として、自動運転・Uber・ドローン・人工知能・IOTがある、これはいずれも地方でこそ活きる技術である(p172)

    2016年12月31日作成

  • 「地方消滅」の増田寛也氏。
    富田和彦氏については、よく知らない。
    その二人の対談集。

    面白かったのは、京丹後市が2015年3月に全国第一号で策定した「地方版人口ビジョン」についての話。
    (p12 第1章 消滅危機の実態とチャンス)

    2060年には、現在の人口5万8千人が約3割増えて、7万5千人に増えると書いてあるそうだ。

    増田氏の地方創生会議の試算では、41%減の3万5千人としているにもかかわらずである。

    地方創生会議による将来推計と、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の将来推計の違いは社会的移動の取り扱いだけなので、社人研予測でも、10年程度遅れて創生会議予測とおなじ結果が現れると、社人研の方が書いているの読んだことがある。

    にもかかわらず、京丹後市では、創生会議や社人研の錚々たる人口問題の専門家に逆らって、あえてあのようなビジョンを全国に先駆けて出したわけだから、よっぽど自信があったのだろう。

    それほど自信あるなら、京丹後市の方々にはぜひ国のトップに座っていただいて、国全体の人口減少問題の解決に指揮をふるってもらいたいところだ。

    などと皮肉を言ってもしょうがない。

    こういうビジョンを出しておきさえすれば、国から交付金だか補助金がもらえるからやっているだけなので、誰も人口減少や長期的な回復策について真面目に考えてるはずはない。
    京丹後市だけではなく、それがほとんどの地方自治体の現状だろう。
    (京丹後市のビジョンは各方面からの注目を浴びたようで、長文の反論をHPに掲げているだけまだ真面目である)。

    国の方でも、全国の自治体から出された地方版人口ビジョンを集計してみるとよいと思う。
    合計した2060年の総人口は、減少どころではなく、2億か3億人になっているのではないか。

    めでたしめでたしである。

    あと面白かったのが、「G型大学」と「L型大学」の話。
    (p64 第2章 L型大学から地方政治まで)

    そりゃあ文系の教授連中は怒るだろうなあ、という内容。
    面と向かって、「役立たず!」「ゴミ!」と罵っているようなもの。

    大学論の成否はひとまずおくとして、本書における富田氏の大半の意見はまっとうに思えるので、別の本も読んでみることにした。

  • ミクロではなくマクロとしての創生戦略の議論
    「地方消滅」(2014年)で新書大賞を受賞した増田寛也氏と、「なぜローカル経済から日本は蘇るのか-GとLの経済成長戦略」(2014)の著者冨山和彦氏の対談が新書形式でまとめられたもの。
    第一章では、地方消滅(人口減少)という不都合な真実を、行政はじめ受け入れることが容易ではないことが議論されている。特に、夫婦共働きで500万円を稼げる「質の高い」仕事を増やすことが大事という議論には納得できる。工業団地を整備して工場を誘致して一定の転出抑制効果はあっても、いわゆる頭のよい学生の流出は避けられない。また、冨山氏は、「あえて里山を選ぶ若者も一部いるとは思いますけれど、主流になるような数ではない。美しい里山のなかで循環して経済が回っていくという話は、日本の地方全体の話としては無理」と言い切っており、「田園回帰」の動きを理由に地方消滅を否定する人たちに、暗に反論をしている。
    第二章では、特に地方創生のための大学の役割が議論されている。大学進学率が飛躍的に向上した以上、アカデミックな研究を行う大学ばかりではなく、職業人として役に立つ人材を育成する大学も必要ではないかという主張は、当然のものだろう。ただし、例示されている簿記会計や宅建などで地域経済がうまくいくのかは疑問(ただ、第三章で冨山氏が強く主張する生産性の向上のためには、質の高い労働力が不可欠であり、「学問」よりかは役に立つのだろう)。
    また、同章で、政治人材の不足が指摘されているが、基礎自治体が機能するためにも首長の役割は非常に重要。私が住む地域の議会は傍聴に行っても眠っている議員もいれば、質問の質の低く、全く機能していない。今後このような地域が増えてくるのだろう。
    第三章では、地方でこそイノベーションが起こる理由が議論されている。また、地方創生のためには、生産性の向上による賃金上昇が、東京への人口流出を減らし、若年層の出生率が向上し、人口減少の流れが止まると冨山氏が主張し、それに増田氏も同調している。生産性の向上は確かに必要なことだが、指定都市、中核市など一定程度の人口の集積がある地域は別として、地方一般には難しい話。また、生産性の向上や賃金の上昇だけでは、東京圏の集積・憧れを超えることはできず、東京への人口流出は止められないのではないかと思う。
    増田氏がまえがきで言うように、農山村地帯での田園回帰の動きを過大評価することは問題を隠すことであり、すべての市町村でできるものではない。
    実際には、これまでの都市化を目指すなかで、その「まち」らしらが失われた地域が多いのではないだろうか。そのような地域の助けとなる書が書かれることを期待したい。
    増田氏の経歴から言っても、都道府県や市町村が地方創生のために果たす役割について議論があればよかったがマクロの話に終始していた点、具体的な生産性向上の話に対する踏込不足感があった点を考慮して、☆3つとさせていただいた。

  • 地方消滅に対する創生戦略というわりには、主立った戦略らしいのは見えてこない。
    基本的な構想は選択と集中、東京モデルの模倣を止めようという発想である。だが、別の本で批判にあったように地域ごとで選択と集中をしていけば、結局のところミニ東京ができるだけではないか。

  • 地方消滅を読み、それに対する施策も気になったため。

    「まとめ」
    ・地方はミニチュアの東京ではなく、あくまで地方独自の優位性を目指すべきである。
    ・対して東京は世界の先進各国に負けないグローバルな都市を目指していくべき
    ・上記二つの住み分けがあるため、その輩出機関としての大学も、その役割を見直す時期にきているのでは?
    「感想」
    ・結局地方のイノベーションは地方の人材にしか起こせなく、仮にコンサルなど外部から起こしても本質的に意味がないと考えている。そのあたりも踏まえて、短期長期それぞれの具体的な人材戦略をもっと深掘りして欲しかった。
    「学び」
    結局戦略を実行できるのは、ヒトモノカネ情報が必要分揃った時なのではないかと感じ、こと地方に関しては今後物事をかんがえるときそこまで説明することで説得力を持たせることができると感じた。

  • 商業サイトの連載なら2点。
    この内容で本にするとは。

  • GとLの棲み分けが明確になればなるだけGに伸び代がある様に思える。しかし、この本の上での話、出ないと論者が東京都知事を目指した理由が立たない。そして地方に住む殆どの者も、フィクションと思ってる。気付けよ!チャンスじゃないか、気付いた人が居るから動き出してんじゃないか!

  • ・地方創成の本質は、結局地域それぞれが持っている比較優位にどこまで集中できるかということ。東京は東京らしさを追求すべきだし、地方は地方らしさを追求したほうが、日本のトータルの経済も大きくなって、生産性も上がる。

    ・東京はGlobalの世界で活躍する人にとって、より活躍しやすい場所にしていくことが、東京の比較優位を活かすことになる。特に外国の高度人材を呼ぶため、シリコンバレー、シンガポール、ニューヨークに比べても魅力的な街としてアピールする必要がある。今足りないのは、彼らが家族連れで日本に住むために必要な補助人材。英語の話せるナニー(教育ベビーシッター)とか、その外国人の母国流の医療を行う医師、また学校の問題も深刻。トップレベルの国際バカロレア資格の小中学校を首都圏にもっと増やすことは急務。

    ・「伸びしろ」はこれからの地方を考えるときのキーワード。ローカル発のイノベーションの可能性も高まっている。自動運転、Uber、ドローン、人工知能、IoTなどはいずれも地方でこそ活きる技術だった。アベノミクスが目指す持続的成長のカギは、ローカル経済圏の生産性をどれだけ伸ばせるか。地方の生産性向上こそが、地方消滅を食い止めると同時に日本全体の超長期的な持続性を高める一番の対策である。

  • 増田さんがどういう考え方か、わかると思いますよ。
    ただ、
    地方消滅を読んでいましたし、地方創生に関心がある人が読むと既視感があるかもです。

  • 地方創生に関する重要な論点を体系的に理解するために最適な本。

    まとめると、以下の2点に集約される。
    ①人手不足の地方においては、選択と集中による労働生産性の向上が重要だが現状は手付かずで改善の余地が大いにある。
    ②人口消滅というストレスを抱えているからこそ、Gにも還元できるようなイノベーションを起こし得るのがLの世界である。

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地方消滅 創生戦略篇 (中公新書)の作品紹介

地方消滅を避け、真の地方創生へ進むシナリオとは?全国896自治体の消滅可能性を指摘し政治を動かした増田寛也と、GDPと雇用の7割を占めるローカル経済の可能性を明らかにした冨山和彦が語り合う。なぜ「選択と集中」は避けられないのか、移民を受け入れるべきか、大学が職業訓練を行うべき理由、東北地方がもつ可能性、自動運転やドローンなど新技術と地方の関係…日本を襲う危機を見つめ、解決策を探る。

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