沖縄現代史 - 米国統治、本土復帰から「オール沖縄」まで (中公新書)

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著者 : 櫻澤誠
  • 中央公論新社 (2015年10月22日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121023421

沖縄現代史 - 米国統治、本土復帰から「オール沖縄」まで (中公新書)の感想・レビュー・書評

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  • データに忠実で硬めな記述。もう少しポップカルチャーの視点など入れてもいい気もしましたが,プロパガンダ地獄と化している沖縄に関する報道を踏まえると,これくらい硬めなほうが信頼が置けてよかったです。

    (要約)
     1945年の沖縄戦で,12万人超の沖縄出身者が命を落としたとされる。これは沖縄人口の約4分の1にあたる。沖縄県民に沖縄戦の遺族でない者はいないといわれるゆえんである。はじめ占領軍であった米軍はマッカーサーを含め,台湾や朝鮮などと同様に沖縄と日本を別民族と考え,日本との分離を当然視していた。独自の政府も組織され,日本からの独立を掲げる政党も存在した。しかし,冷戦の開始と共に沖縄はアジア地域の前衛と位置づけられるようになり,米国の力が沖縄の三権に優先するかたちで厳しい軍事的支配が行われた。女性を求めて市街地に出現する米兵と地元青年団との衝突や凄惨なレイプ事件が起こるたびに反米感情は高まり,そうした運動はマッカーシズムの吹き荒れるアメリカ側からは共産主義の運動とみなされ厳しく弾圧されていっそうの反発を生んだ。戦争とアメリカ支配への忌避感が,沖縄の中で日本復帰論が主流化した最大の要因であった。こうした動きはベトナム戦争が始まり沖縄がその後方基地となるとさらに強まった。しかし保守派を中心に,現状での日本復帰は時期尚早であるという意見も根強くあった。沖縄県民の反発を受け,アメリカは,路線を修正して本土並み統治をめざして経済支援を行っていた。これで沖縄は曲がりなりにも高度成長を遂げたものの,沖縄の産業は本土に比べて弱く,基地と援助に依存した経済構造が成立してしまっていた。事実個人のレベルでも,返還前から一定の本土との交流が行われていたが,本土へ移住した若者が差別を受けたり,本土の慣習になじめなかったりして,Uターンする例がしばしば見られた。一方,革新派を中心に,アメリカ支配と基地からの解放を優先すべきであるという声があり,東京オリンピック(1964)の開催などにともなってこちらが優勢となっていた。このように,自立経済への要求と基地反対の意志は不可分に結びついていることに注意しなければならない。
     沖縄返還は1972年に行われた。単なる国境線の引き直しというものではなく,交通ルールのレベルから住民の生活は一変することになった。この時点では復帰に「期待する」51%,「期待しない」41%(NHK住民意識調査)と復帰に期待する意見が優勢であった。しかし,石油危機やドルショックのあおりを受けたこと,さらに重要なのは基地負担が軽減せず(15%程度の縮小にとどまったため,結果としてより沖縄への基地集中は進んだ。全国と沖縄の比で言えば,59:41→75:25),本土企業との競争を強いられて自立経済の実現もかなわなかったことで,沖縄県民の期待は急速に幻滅へと変わっていった。復帰翌年の調査では復帰が「よかった」38%,「よくなかった」53%と逆転する。卒業式における日の丸掲揚・君が代斉唱率は本土に比べて大幅に低く(1985年の段階で高校卒業式の日の丸掲揚・君が代斉唱率は本土が81.6%,53.3%であったのに対し,沖縄県では0であった。その翌年から対策がとられ上昇する),女子高生によって卒業式壇上の日の丸が剥ぎ取られ,ドブに捨てられる事件も起こった。歴史教科書をめぐる対立も朝鮮や中国などの国々と同様に沖縄にも見られた。また,アイヌ民族とはことなり,現在にいたるまで(国連の度重なる勧告にも関わらず)琉球民族の独自性は認められていない。しかし,それでもこの時期には,本土との紐帯を示す目的で開催された国家的イベントなどを通じて観光業の基礎となる交通・宿泊サービスが整備され,のちの観光業の発展が準備された。首里城も修築され,沖縄独自の文化の再評価が行われたのもこのころであった。これは90年代に「沖縄ブーム」を生み出し,安室奈美恵など沖縄出身の芸能人の活躍により沖縄の経済構造を変化させていく。
     90年代には沖縄県民の間で米軍基地に対する反発が激しく再熱した。90年代半ばには基地経済の割合が全体の4.7%にまで縮小し,一方で観光業の割合は90年代末には10%を越えた(沖縄経済はたしかに本土経済に比べれば弱く,失業率の高さや所得の低さが課題となっているが,基地と支援金に依存しているとする言論は基本的に返還当時のもので古すぎる)。冷戦の終結と観光業の成長によって,基地の縮小=自立経済の実現=かつての琉球王国のような東アジア海域における経済的キーストーンの役割確立が期待されたにも関わらず,日米間で新ガイドラインが制定され,沖縄基地に新たに世界規模の軍事拠点としての役割が押し付けられたことに対する反発があったからである。香港返還と一国二制度の確立のニュースが本土への反発をさらに後押しした。
     21世紀の初めに達成された沖縄遺跡の世界遺産登録,さらにその後の同時多発テロと,その風評被害による観光業へのダメージは,沖縄県民に基地と観光業の両立が難しいことを強く印象付けた。一方で長引く不況と財政難から政府側からも「沖縄を甘やかすな」という声が表れるようになり,これは沖縄戦の記憶の風化と軌を一にしていると思われる。21世紀に入ってからの沖縄基地問題といえば,最も深刻なのが普天間基地の移設問題である。「世界一危険な基地」と言われる普天間基地は住宅地と隣接しておりできるだけ早い移設が求められているが,長い時間をかけて達成された辺野古移転の合意が民主党政権により破綻すると,後を継いだ安倍政権は仲井眞知事に大規模な沖縄への経済支援を約束して再び辺野古移設を推進しようとした。しかし辺野古移転にともなう基地の規模拡大などが懸念される中で発表されたこの策は自立経済の実現=基地の縮小を求める沖縄県民のプライドを大きく傷つける結果となり,移設反対を掲げる現職の翁長知事の当選を招くことになった。彼は「オール沖縄」を掲げているが,これは復帰以前にも見られた「島ぐるみ闘争」の系譜をひいている。そのときにも見られた現象であるが,沖縄本島とそれ以外の島々は距離的にも大きく離れており,投票行動にも大きな差があるため,名称通り「オール沖縄」が沖縄県民の総意であるとは言えない。
     現在の沖縄県民は,日米同盟の重要性を認め,必要な基地については同意するという立場をとっている。NHKの世論調査(2002→2012年)を見ても,本土復帰については「非常によかった。まあよかった」76%→78%,「非常に不満である。あまりよくなかった」13%→15%と,ほとんど変動がない。そのうえで,米軍基地については「必要・やむをえない」47%→56%,「危険である・必要でない」44%→38%と,必要論が上昇している。さらに,かつて反発の見られた自衛隊については,「必要・やむをえない」67%→82%,「危険である・必要でない」23%→13%と,必要論が大きく上昇している。このような結果となったのは,尖閣諸島問題などに象徴される中国への脅威を沖縄県民が本土住民以上により身近に感じている結果である。2012年の県民意識調査によれば,中国への反発度や海洋での軍事紛争への警戒度の数値は本土よりも大きくなっている。

  • 沖縄史の研究者が、ち密な研究の成果を細かな出来事まで記載している本である。対象は、沖縄史を細かい部分まで理解したいひと向けであって、概略をつかみたいひとには少し冗長的であるのでおすすめはできない。

  • 請求記号:219.9/Sak
    資料ID:50081487
    配架場所:図書館1階東館 め・く~る

  • 沖縄の戦後から現在にかけての歴史についてまとめた本。先入観を持ちがちな沖縄現代史であるが、経済的な面において、基地への依存度はそれほど高く無いことなどの先入観を取り払う記述、他にも対立軸を明確にしながら記述を進めている点に特徴がある。沖縄現代史の初歩を知りたい人には有益。
    本書を読み、考えたことの一つには、沖縄の未来を考える必要があるということである。沖縄は、日本復帰を肯定的に捉えている人、基地の必要性を肯定している人が大半であるものの、本土との「構造的差別」(不必要な基地が本土によって押し付けられている)に苦しんでいる。こうした状態で、どのような姿が今後あるべき姿なのか、ということを考える必要があるのでは?そして、それを踏まえて沖縄と向き合うかが重要なのでは?と思った。

  • 2015年12月新着

  • 219.9||Sa

  • -

    太平洋戦争中、地上戦で20万人強の犠牲者を出した沖縄。敗戦後、米国統治下に置かれ、1972年に本土復帰を果たすが、広大な基地は残された。復帰後の沖縄は保革が争いながら政治を担い、「基地依存経済」の脱却を図る。だが95年の米兵少女暴行事件を契機に、2010年代には普天間基地移転・歴史認識を巡り、保革を超えた「オール沖縄」による要求が国に行われる。本書は、政治・経済・文化と、多面的に戦後沖縄の軌跡を描く。

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沖縄現代史 - 米国統治、本土復帰から「オール沖縄」まで (中公新書)の作品紹介

太平洋戦争中、地上戦で20万人強の犠牲者を出した沖縄。敗戦後、米国統治下に置かれ、1972年に本土復帰を果たすが、広大な基地は残された。復帰後の沖縄は保革が争いながら政治を担い、「基地依存経済」の脱却を図る。だが95年の米兵少女暴行事件を契機に、2010年代には普天間基地移転・歴史認識を巡り、保革を超えた「オール沖縄」による要求が国に行われる。本書は、政治・経済・文化と、多面的に戦後沖縄の軌跡を描く。

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