代議制民主主義 - 「民意」と「政治家」を問い直す (中公新書 2347)
- 中央公論新社 (2015年11月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121023476
感想・レビュー・書評
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『首相政治の制度分析』でサントリー学芸賞を受賞している京大政治学の看板教授が、初めて一般読者向けに著した政治制度論。同世代の東浩紀や國分功一郎が、議会政治の不調を前提に、その補完的制度を提案していること(東『一般意志2.0』、國分『来るべき民主主義』等)を意識しながら、政治制度の専門家として、代議制(議会制)民主主義の特性を分析し、その優位性を明らかにする。無論、単に現状を肯定するのではない。必要な制度改革のポイントも、理論的背景とともに示される。
この本で説明される政治学的知見は多岐にわたるが、中でも現在のわたしたちにとって有用なのは、自由主義と民主主義のバランスに着目する視点だろう。権力の集中を防ぎ、多様な利害の相互牽制によって偏った政策決定を排除し、結果として人々の自由を守ろうとする「自由主義」と、有権者の意思=民意が政策決定に反映されることを何より重視する「民主主義」との間には、一定の緊張関係がある。この2つの理念を調合しながら政治を安定化させる機能において、代議制民主主義の意義が積極的に見いだされる。
先般、「民主党は嫌いだけど、民主主義は守りたい」というやや自虐的なコピーで民主党のポスターに注目が集まった。これは安倍政権が「民主主義」を守っていないという批判的メッセージを当然含んでいる。しかし、この本を読んだあとでは、安倍政権に批判的な人であっても、それは民主主義的でないからダメなのか、あるいは自由主義的でないからダメなのかと、分析的に考えられるようになるだろう。政治リテラシーを得るとはそういうことだ。選挙イヤーに必要な読書として推したい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
執政制度を権力分立(大統領制)・権力集中(議院内閣制)と選挙制度(比例代表制、小選挙区制)の2つに分けてマトリックスに分けたりしている。
筆者は、国家の究極目的として代議制民主主義は不可欠であると考えており、議会そのもの是非ではなく現在の機能不全を考えるには、執政制度と選挙制度の双方を考える必要があると主張してる?