ビッグデータと人工知能 - 可能性と罠を見極める (中公新書 2384)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 79
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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121023841

作品紹介・あらすじ

ビッグデータ時代の到来、第三次AI(人工知能)ブームとディープラーニングの登場、さらに進化したAIが2045年に人間の知性を凌駕するというシンギュラリティ予測…。人間とAIはこれからどこへ向かっていくのか。本書は基礎情報学にもとづいて現在の動向と論点を明快に整理し分析。技術万能主義に警鐘を鳴らし、知識増幅と集合知を駆使することによって拓かれる未来の可能性を提示する。

感想・レビュー・書評

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  • ずっと日本のコンピュータの進歩に携わってきた著者のAIに対する俯瞰した冷静な視点を知りたくて開いた新書でした。が、熱い熱いアンチ・シンギュラリティ論でした。その熱さは著者も関わった1980年代の日本の第五世代コンピュータプロジェクトの失敗体験から来ているのかもしれません。シンギュラリティを礼賛するカーツワイルの楽観主義をもともとコンピュータ開発の根本にあるユダヤ系普遍主義者たちの理想主義や宇宙観にあるとし、それを相対的文明論で批判していきます。そう、AIを理系の技術ではなく文系も巻き込んだ大きなテーマとしてみんなで考えることを提唱しています。AIと共生する時代のリベラルアーツの必要性を語る本でした。予想を超えた読後感。

  • 人工知能の未来を基礎情報学の立場から見直した本と言えるだろうか.深層学習などのAI技術にはさらりと触れるだけで,もっぱらその技術の社会的意味を問う本.

    著者はソフトウェア技術者として出発しコンピュータ工学者から転身し,「情報社会や情報文化を論じる文系の学者になった」という人.「普遍主義を批判し相対化するため,構造主義やポスト構造主義などのフランス現代思想に夢中になり,1990年代半ばにフランスに留学」し,その後「文理融合の東京大学大学院情報学環」の教授になった人.
    ここまで書くと,本書の読者層は全く限られたものになるんじゃないか.

    人間のような生物と機械は「概念」「意味」「知識」といったものが持てるか持てないかによって劃然と区別されるべきで,従って機械は「人口知能」に進化することもなく,シンギュラリティなんて言うのも,一神教の欧米人達の戯言にすぎないというのが主張のようだ.

    さすがの私でもこれはちょっと大雑把にすぎやしないかと思う.この前に読んだ戸田山和久の「哲学入門 」では少なくとも,「意味」や「情報」とは何かを丹念に考察していた.そういうスタンスがここにはどこにもない.文系の学者と理系の学者がもっと話し合うべきという著者の提言はその通り.しかしその前にお互いに会話のできる言葉を学ばなければいけないのだな.専門者の間のバリアは非常に高い.

    私はコンピュータが人間を超越する人格を持つようになるとか,ならないとかの議論はするのはいいけど,実りがないんじゃないかと考える.それよりも人間から見て,「感情」「情緒」「気配り」なんてものを,全くもっていないような「人工知能」が重要な決定を瞬時に確率的なことだけで行う可能性のある社会の方がよほど怖い.もう金融市場はそうなっているし,金融恐慌は人間が止められるものではなくなっているように見える.そういう意味では是非「人工知能」にも心を与えて欲しいとも思うが,何が善で何が悪かというのはあまりにも線引きが難しい.

    そういうことを偉い学者さんや政治家たちは文理を超えて,国境を超えて一生懸命考えなくてはならないのだな.

  • AI、IoT、深層学習、ビッグデータ、ニューラルネット、などなど、流行のワードを目にするたびに理系としてなんとなく警戒してしまう東工大生は多いような気がします。この本は、こういった流行のテーマに対して早いうちから自分の意見を持ち、大学で何を学べばよいか考えるための一助となる本であると思います。
    (システム制御系システム制御コース M2)

  • 主に読んだ箇所のまとめ。

    ・機械学習
    ・ディープラーニングの概要
    ・現在進められてる人工知能は、あくまでも所与の目的関数の元に判断し、正しい結果またはその根拠になる蓋然性(確率)を提示するだけ。これは「機械」。
    ・一方「生物」は、「生きる」という広義の目的の元に、個々の目的関数を設定。必要に応じ分析、判断もする。
    ・ヨーロッパ系研究者に多い汎用人工知能を危惧する声は、人間機械論を前提とし、目的関数の設定さえも可能と勘違いしているから(?)。
    ・一神教の延長線上には、神を頂点としその下に人間、(人間以外の)動物などを置く秩序体系がある。しかし人間機械論に立てば、すべてのことは一つ(目的)につながるので、機械でさえも目的を設定する最上位、神の位置に立てるのではと考えてしまう。

    • naochan1204さん
      これ難しそう?
      読んでみようかな。
      これ難しそう?
      読んでみようかな。
      2016/09/24
  • 副題を意識しないままに読みはじめた。人工知能を完成させるためのビッグデータ……そんな誤解があった。しかし、本書を読み進めるうちに、人工知能に対する誤解や、SFに出てくる「意思」を持った機械、人類に君臨するコンピュータが出現することの困難さを理解できた。p.147「そういう疑問をふまえて、近未来のコンピュータ文明のあり方をさぐるのが本書の目的」が腑に落ちるのだ。基礎情報学をもっと知りたい。

  • 貸出状況はこちらから確認してください↓
    https://libopac.kamakura-u.ac.jp/webopac/BB00273276

  • ビッグデータ、人工知能両方の初心者の立場として本書を手に取りました。副題が「可能性と罠を見極める」ということで、本書はまさにその両方について書かれているのは理解できました。ビッグデータと人工知能はセットで考えるべきであること、また両者が掛け算されることでディープラーニングというテクニックが可能となって、ここから汎用人工知能や人知を超える?人工知能の可能性が議論されている、といったことが書かれていました。そして著者の一貫した主張は、「人工知能は人間を超えない」です。私自身はこの主張は説得力があったと思います。確かに特定分野では人間の能力を超えて何かができるとは思いますが、それをもってして人間を超えた、と判断するのは間違っているでしょう。この分野の新聞、雑誌記事は少し冷静な視点でこれから眺めてみたいと思いました。本書が面白かったのは、かなり哲学的な要素も入っていたことです。主観と客観の対比、オートポイエーシス理論、また宗教観などで、その多くは私も共感しました。情報学の中身に入ると、やさしく書かれているとはいえやはり意味がわかりづらい箇所が多かったのですが、大枠の意味は伝わりました。興味深く拝読させてもらいました。

  • 6年前の本だけど、そもそもこの分野に詳しくないから十分勉強できた。
    著者は人文系の学問にも通暁していて、その視点からも現代の技術観を検討しているから、文系でもなんとかついていける。

  • 近い将来AIに人間が振り回されるという状況にならないように、新設されるデジタル庁の方々にぜひ読んでいただきたいものだ。

  • 人間(生物)と人工知能は根本的に違うことを説き、人工知能に人間か取って代わるというシナリオは甚だおかしいと。これを読むと、恐らく、人工知能云々を超えて、「情報学」という学問分野にも興味が掻き立てられると思う。

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著者プロフィール

東京経済大学コミュニケーション学部教授/東京大学名誉教授

「2018年 『基礎情報学のフロンティア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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