革新自治体 - 熱狂と挫折に何を学ぶか (中公新書 2385)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121023858

感想・レビュー・書評

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  • 岡田一郎先生の最新作。

    革新自治体については一定の距離を置きながらその成果および限界点を論じている。こうした作品は特定の立場に肩入れしていることが多く、評価が難しいところがあるのだが、氏の場合社会党研究者でありながら、父親を過激派左翼に殺されている(後書きにあり)というきわめてオリジナルな立場に置かれていることもあり、この点に成功していると思われる。

    本書では革新自治体の成功の要因として中道政党(公明党・民社党)並び共産党の党勢拡大と首長との協力関係に求めるが、日本社会党については議会運営を機能不全化させたとして辛辣に批判している。

    その一方で、革新自治体→積極的福祉政策→放漫財政という批判は、東京都の印象が強いだけで革新自治体を一緒くたにするのはミスリードであるとする。

    個人的には岡田先生には是非とも研究を続けてほしいと思う。もっと作品が出ればよいのに。

  • 美濃部亮吉都政をはじめ、1960~70年代に脚光を浴びた「革新自治体」について、その台頭の背景から政治的取組までを振り返り、その功罪を検証することで、今日の地方自治制度への示唆を探っている。革新自治体という切り口で、日本社会党、日本共産党を中心とした戦後の革新陣営の政治史が浮き彫りになっている。一方で、革新自治体で行われた政策がどのようなものだったのかという点の記述はやや薄く感じた。
    革新自治体の盛衰の鍵を握っていたのが中道勢力であったこと、それにもかかわらず革新勢力(特に社会党左派)に自らへの過信があったこと、革新勢力内の内部抗争が革新自治体の終焉を招いた要因であったことなど、革新自治体をめぐる政治構造がよくわかった。それらは現在の野党にとっても教訓となる内容であると感じた。
    革新自治体の存在により、公害など高度経済成長によるひずみの解消が進んだという面は確かにあるし、財政破綻を招いたというのが革新自治体に共通する問題というわけではなかったということも理解した。一方で、革新自治体が首長任せの有権者の性質を変えられず、むしろ促進したとさえ言えるという筆者の指摘は、現在の地方自治や政治全般にも通ずる大きな問題点であると感じた。

  • 維新の会や都民ファーストの会などよりもはるかに昔、地方政治から中央政治を変えるなどという動きが現実味を帯びた時代の物語。往時の興奮と挫折から学ぶことは多い。
    有名な美濃部都知事の「住民が一人でも反対するならば橋は建設しない」という言葉は、差し替え前の言葉が誤って広まってしまったこと。当時でも誤って受け取られてしまったのだから、数十年の年月を経た我々が知る言葉のどこまでが確かなものなのか。
    (政治的な話も感じるところがありましたが、立場によって受け取り方が違うでしょうからその点の感想は割愛します。)

  •  江田三郎の評価に、この筆者の立場がよく現れている。
     革新首長といっても、完全に、共産党系の人は稀。
     社会民主主義政党が、日本では定着しなかったのはなぜなのか。その理解のための補助線になる一冊。
     

  • 高度成長のひずみを立て直すという風を受けて、60年代~70年代に各地の地方公共団体で、社会党系の知事や市長が誕生し、いわゆる革新自治体の時代がありました。本書は、この時代に、革新自治体がどのようにして生まれ、また消滅していったのかを、社会党の内部まで踏み込んで検討しています。

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