人口と日本経済 - 長寿、イノベーション、経済成長 (中公新書 2388)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121023889

感想・レビュー・書評

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  • 人口と経済は切っても切れない関係だと思うが、労働人口の増加と生産性の劇的な改善により、これを乗り越えるべきだというのは賛成。
    具体案がないところが経済学者らしい。

  • 人口減少が日本経済の衰退になるか。
    これは、難しい問題である。と私自身も感じてきた。
    この本によると、人口減少は必ずしも日本の衰退には繋がらないとのこと。
    イノベーションを起こすことで、成長も可能とのことだった。
    一部賛成するが、やはり人口の維持は必要な気がする。
    疲弊する地方、いなくなる人口。経済の分野では必ずしも必要ない部分になるのかもしれないが、私たちは人間である以上、活気が必要だ。人間としての情が必要だ。と感じた一冊。

  • ふむ

  • 読み終えた父に半ば不用品を押し付けられるように渡された本。拾い読み程度。
    人口が経済成長の全てではないよ、という中盤までの展開から後の方向性が非常に不明確。
    特に最後が非常にふんわりしている。経済成長とは何か、を考えるのはいいが、著名な人の言葉を引用してばかりで結論にも意見にもなっていない。

    GDPの成長率と人口の成長率を単純に並べることに意味はあったのか。成長会計を考えたときに、人口にかかる係数によってもちろん変わるし、筆者も言っているように資本との関係によっても変わる。そして資本の増加自体は人口の成長の見通し、内需の増大の見通しに影響されると思うので、本書のようにそんなに簡単に関係ない言い切れる話ではないだろう。

    せっかくなら資本の側をもう少し掘り下げれば面白くなったと思う。
    最後の貯蓄投資バランスの話はやや乱暴だ。家計の貯蓄から投資への流れと、企業自体の規模の増大を無視して過剰貯蓄を論じてはならないのではないか。(取引額が増えれば必要な現預金も当然増えるのだから…)

  • 吉川洋 「 人口と日本経済 」経済成長と人口の関係についてのエッセイ。著者の結論は 「経済成長と人口は関係ない」「需要は必ず飽和する」「経済成長するには プロダクトイノベーションが必要」

    *マルサス/人は豊かになれば子供をたくさんつくる→食料の供給は 人口増加に追いつかない→人口は 食料不足、非婚化により抑制

    *ケインズ/投資は人口などにより決まる→人口減少=投資減少=不況→失業。投資に代わり 消費が有効需要を支える必要あり→所得を貯蓄にまわす富裕層から 消費をする一般大衆へ所得配分

    目からウロコだったのが
    *ヴィクセル/最適な人口=1人あたり福祉水準を最大にする人口
    *人口知能時代の人の所得=労働所得+AI所有による所得


    *GDP=1年間で作り出す価値を価格で評価したもの→人口増加により増えるものではない→豊かさの尺度としては不十分

    イノベーション→先進国の経済成長→一人あたりGDPが増加

  • 『人口と日本経済――長寿、イノベーション、経済成長』
    著者:吉川 洋(1951-)
    刊行日:2016/8/19
    判型:新書判
    頁数:208
    定価:本体760円(税別)
    ISBN:978-4-12-102388-9

    人口減少が進み、働き手が減っていく日本。財政赤字は拡大の一途をたどり、地方は「消滅」の危機にある。もはや衰退は不可避ではないか――。そんな思い込みに対し、長く人口問題と格闘してきた経済学は「否」と答える。経済成長の鍵を握るのはイノベーションであり、日本が世界有数の長寿国であることこそチャンスなのだ。日本に蔓延する「人口減少ペシミズム(悲観論)」を排し、日本経済の本当の課題に迫る。
    https://www.chuko.co.jp/shinsho/2016/08/102388.html


    【目次】
    はしがき [i-iii]
    目次 [iv-vi]

    第1章 経済学は人口をいかに考えてきたか 001
      日本の人口
      中国の人口
      世界の人口
      過剰人口という悩み
      近代ヨーロッパの「人口爆発」
      経済学者の人口観
      マルサスの『人口論』
      人口の原理
      数量的方法 交易条件をめぐって
      人間の社会は進歩するか?
      ケインズの「人口論」
      人口減少の経済的帰結
      Pの悪魔、Uの悪魔
      スウェーデンの人口論
      子育て支援の源流

    第2章 人口減少と日本経済 051
      日本が消える?
      超高齢社会の社会保障
      財政破綻の危機
      財政赤字はなぜ拡大し続けているのか
      市町村が消える?
      明治の都市人口ランキング
      経済成長を決めるのは人口ではない
      イノベーションの役割
      ソフトな技術進歩
      高度経済成長の時代
      高度成長のメカニズム
      AI、ITは人間の仕事を奪うか
      「第3次産業革命」とインダストリー4・0

    第3章 長寿という果実 093
      先進国における出生率の低下
      日本の出生率の推移
      寿命の延び
      中谷宇吉郎の驚き
      平均寿命の推移
      戦前の寿命
      寿命への新自由主義的視点
      戦後日本の経験
      国民皆保険の成立
      ジニ係数
      大金持ちの「金持ち度」
      寿命のジニ係数

    第4章 人間にとって経済とは何か 135
      経済とぜいたく
      一国経済の活動水準―― GDPの計測
      不完全だが有用な指標
      経済成長とは何か
      需要の飽和
      エンゲルの法則
      成熟経済にかかる下方圧力
      プロダクト・イノベーション
      ケインズの「未来論」
      ミルのゼロ成長論
      定常状態の幸福論
      成長か、平等か
      経済成長は必要か
      経済成長の恩恵
      娯楽の役割
      イノベーションの限界と寿命
      日本経済の将来  
      補論:ロジスティックな成長プロセス

    あとがき [192-194]
    参考文献 [195-198]



    【図表一覧】
    図表1-1 日本の人口の推移[鬼頭宏(1983)『日本二千年の人口史――経済学と歴史人類学から探る生活と行動のダイナミズム』PHP研究所。→ (2000)『人口から読む日本の歴史』講談社学術文庫] 003
    図表1-2 中国の人口の推移[加藤繁(1994)『支那経済史概説』弘文堂書房] 006

    図表2-1 少子高齢化の進行 054
    図表2-2 社会保障の給付と負担の現状 056
    図表2-3 歳出・歳入の推移 062
    図表2-4 一般会計の主要の歳出 063
    図表2-5 日本の都市人口の推移 070
    図表2-6 日本の人口と経済成長(1870〜1994年) 074
    図表2-7 労働力と経済成長の関係 079
    図表2-8 高度成長のメカニズム 081
    図表2-9 世帯数および人口増加率 083

    図表3-1 日本の出生率数と出生率の推移(1899〜2014年) 098
    図表3-2 年齢別出生率の推移(1947〜2014年) 099
    図表3-3 生涯未婚率と年齢別未婚率の上昇(1980〜2014年) 100
    図表3-4 日本とアメリカの平均寿命の推移(1900〜2010年) 106
    図表3-5 日本の乳児死亡率の推移(1899〜2009年) 114
    図表3-6 1947年の都道府県別乳児死亡率 115
    図表3-7 1955年の年齢階級別の有病率、受療率、死亡率の分布 117
    図表3-8 年齢階級別の受療率の変化 118
    図表3-9 ジニ係数の考え方 120
    図表3-10 各国のジニ係数(2010年) 122
    図表3-11 日本のさまざまなジニ係数(1979〜2010年) 123
    図表3-12 ジニ係数の長期変動 124
    図表3-13 最上位0.1%のシェアの推移(1920〜2010年) 126
    図表3-14 先進5カ国の「平均寿命」と「寿命のジニ係数」の推移(1750〜2000年) 129
    図表3-15 日本を含む中進5カ国の「平均寿命」と「寿命のジニ係数」の推移(1900〜2000年) 131

    図表4-1 1人当たりGDPと平均寿命[A. Deaton(2013), The Great Escape: Health, Wealth, and the Origins of Inequality(『大脱出』みすず書房、2014年)] 146
    図表4-2 消費者物価指数基準年の主な改廃品目[総務省統計局、消費者物価指数の概要] 152
    図表4-3 ロジスティック曲線[Fisher J. C. and R. H. Pry(1971), “A Simple Substitution Model of Technological Change” 『Technological Forecasting and Social Change』, vol.3 pp.75-88, Fig.9 (b)] 153
    図表4-4 紙オムツの出荷額(2000〜2014年)[経済産業省「工業統計」] 161
    図表4-5 部門別貯蓄投資差額の推移(1980〜2014年)[内閣府「国民経済計算確報」] 188
    図表4-6 エチレン普及のロジスティック性の検証[弘岡正明(2003)『技術革新と経済発展』日本経済新聞社、p.46] 190

  • 人口問題から経済学を見るなんて面白い発想だなと思って手に取ったのだが、全くの勘違いであった。面白い発想どころか人口問題とは経済学のメインストリームであることを本書で初めて知った。
    10年前にベストセラーになった藻谷氏の「デフレの正体」を著者が意識したかどうかはわからないが、経済成長は人口ではなくイノベーションによって決まる、が本書の主軸だ。確かに直接の因果を突き詰めればそうかも知れぬが、イノベーションは人間がなすものなれば、その数が多いほどイノベーションが生まれる確率も動機も高くなると見るのが自然だろう。さらに言えば経済成長と人口増減の相関を見るなら両者の微分をスケールを標準化して比較しなければ結論を出せないと思うのは理系人間だけ?
    また国債を日本人が持っているから安心だとの説(今で言うMMT?)に対する反証として、株と外国人株主で喩えているがこれもナンセンスだ。国債を企業活動に例えるなら、社債をその会社の従業員だけで保有している状態を想定すべきだし、その場合は会社は社債を返すために従業員の給料を下げる手段が取れる、という意味で社外の債権者に返済するのとは意味が異なるだろう(それが解決策だとは思わないが、増税で国債を償還するのはそういうことだ)。
    このように首をかしげる内容も少なくないのだが、「経済成長の飽和点=ゼロ成長社会」が存在するかどうかの命題は、「これ以上の寿命の延びを望むかどうか」に置き換えられるという説明は納得できる。言われてみれば不自然なテクノロジーで寿命を無理やり延ばす様子は、どうでもよいイノベーションでさして必要のない商品を無意識的に購買させられる姿と重なる。100年前なら葬式で「それは寿命でしたな」と慰められる状態も現在では短命と嘆かれる。つまり「寿命」には生物学的な定義などなく、人々の観念上の概念に過ぎないのだから、「これ以上長生きしなくともよい」との合意が形成されればゼロ成長社会が到来するのかも知れない。ただしその世界は旧共産圏のような色のないものになるだろうが、それも人々の総意なら皆Happyであろう。

  • 人口減少は重大な問題ではあるが、経済学の視点に立って、人口減少ペシミズム(悲観主義)への警鐘を鳴らした本。グラフの読み取り、資料の分析方法も勉強にある。

  • 中央公論新社 新書大賞2017 2位

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