シベリア出兵 - 近代日本の忘れられた七年戦争 (中公新書 2393)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121023933

感想・レビュー・書評

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  •  第一次世界大戦末期、1918年から1922年の長きにわたって続いたシベリア出兵について、発端から撤退までの経緯を著した本。記録寄りの史実解説である。
     シベリア出兵に触れた書物は少ない。実際、この戦争をテーマにした本は初めて読んだ。「元老制」という当時の政策決定背景、内閣と参謀本部の関係についても見通し良く解説されており、シベリア出兵という失策がどのように起きたのか、選択肢はあったのかなどが検討されており、意思決定者が自由をもたない国家の歯がゆさと苛立ちを感じられる一冊だった。
     この本も某国の争いをきっかけに長らく積んでいたものに手を付けた。某国の争いにおいては、「国際法規」なる恣意的な秩序、見せかけのバランスだけを照らし、議論を許さず、何の苦悩も調整もなく、一方に武装を無償供与し、一方に経済制裁を加えている。どちらの味方もする気にはならないが、官僚的と言えるこの対応には疑念しか感じられない。「われわれの時代の政治家の賢さ、愚かさは、われわれ自身の愚・賢の反映にすぎない。」シベリア出兵は過去の愚かもしれないが、某国への対応は現代の愚である。われわれの愚かしさに苛立ちが募るばかりである。

  • 第一次対戦末期の激動の時代。世界の力関係も刻々と変わり、昨日の敵が今日の友、政治による駆け引きと、武力による力関係で、不条理なこともたくさんあっただろうと思う。
    原敬が総理大臣の頃は、総理大臣は今よりも、全然権限がないこと、などあまり知らなかった。
    また、レーニンの革命直後の不安定な状況、山県有朋と原敬の関係など、臨場感のある筆致だった。
    軍が内閣と別に権力を持ってること、様々な人の思惑の相違からシベリアからの撤退が遅れるなど、誰かが、強力な意思を持ち、早く判断し、ぐいぐい引っ張れるといいのにと思ったか、それが、ファッショに繋がる考え方なのかも知れない。

著者プロフィール

麻田 雅文(あさだ・まさふみ) 1980年東京生まれ。2010年 北海道大学大学院文学研究科歴史地域文化学専攻スラブ社会文化論専修博士課程単位取得後退学。博士(学術)。専門は東アジア国際政治史。現在、岩手大学人文社会学部准教授。著書に『中東鉄道経営史—ロシアと「満洲」1896-1935』(名古屋大学出版会、2012)、『シベリア出兵』(中公新書、2016)、『日露近代史』(講談社現代新書、2018)などがある。第8回樫山純三賞受賞。

「2021年 『蔣介石の書簡外交 下巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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