ラテンアメリカ文学入門 - ボルヘス、ガルシア・マルケスから新世代の旗手まで (中公新書 2404)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024046

作品紹介・あらすじ

文学は社会にいかなる影響を与えたのか-一九六〇〜七〇年代に旋風を巻き起こし、世界に強い衝撃をもたらしたラテンアメリカ文学。その潮流はどのように生まれ、いかなる軌跡をたどったのか。ボルヘス、ガルシア・マルケス、バルガス・ジョサ、ボラーニョら作家の活動と作品はもとより、背景となる歴史、世相、出版社の販売戦略なども描き出す。世界的ブーム後の新世代の台頭にも迫った本書は、広大で肥沃な新しい世界へ読者を誘うだろう。ブックガイドにも最適。

感想・レビュー・書評

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  • 山形浩生は『ラテンアメリカ文学入門』を読んで文化の力の源泉について考えた | レビュー | Book Bang -ブックバン-
    https://www.bookbang.jp/review/article/529917

    『ラテンアメリカ文学入門』/寺尾隆吉インタビュー|web中公新書(2016/10/21)
    https://www.chuko.co.jp/shinsho/portal/098158.html

    寺尾隆吉の仕事場|web中公新書(2017/4/27)
    https://www.chuko.co.jp/shinsho/portal/102125.html

    ラテンアメリカ文学入門|新書|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/shinsho/2016/10/102404.html

  • 漠然と読んでいたラテンアメリカ文学が整理されると、いろいろと目からウロコ。G・マルケスの百年の孤独が、当時のラテンアメリカ文学界にない土着の民族性を協調した「古臭さ」がウケて世界的にブレイクし、それに引っ張られてボルヘスやリョサ(本書ではジョサ表記)が次々スターになり、プイグなんかも恩恵を受け…そうだったのか!「ブームの五人衆」がマルケス、リョサ、コルタサル、フエンテス、ドノソ。
    読みどころは筆者寺尾氏の辛口批評だ。ラテンアメリカ文学ってマジックリアリズム面白いよね、という甘いイメージを持っていると全否定される。初心者が読むとバイヤスがかるんじゃないかと思うくらいだ。
    五人衆も、初期の百年の孤独や都会と犬どもなどは評価するが、ブームを経て文学への関心を失いろくなものを書かなくなる、などとさらっと書いている。アジェンデなど見る影もない。読者層が劣化・大衆化したからうけたのであり、「芸術的・学術的価値を持つ作品は全く書いていない」。アルケミスト、赤い薔薇ソースなどのベストセラー本は軒並みばっさり。
    大人気のボラーニョすら、2666は「分厚い小説をありがたがるアメリカ人読者から熱烈な指示を受けた」が、「難解な作品にはついていけないが低俗なベストセラーには満足できない読者が、カルト集団のようになんでも闇雲に崇拝する」。セサル・アイラは「玉石混合どころか玉より石を生産しており書けば書くほど評判を落としている」。
    まずは、百年の孤独(読んだ)、都会と犬ども、夜のみだらな鳥 コルタサルの短編など、評価されている本から読むのが良さそう。
    最近ではキューバのレオナルド・パドゥーラ「犬を愛した男」バスケス「廃虚の形」(ただし名声は駄作)が「地図と領土」や「HHhH」に匹敵するくらい良いと。翻訳が待たれる。

  • 単騎野を行くが如き仕事量の翻訳家、寺尾隆吉ならではのガイダンス本。巨匠の作品でも評価は辛辣。こういう著述態度で臨んでくれると、薦められた本に強い興味がわく。
    空前のブームを経て、現在では玉石混淆どころか玉が見つからなくなるように至る過程が、要点を絞って書かれている。流れをつかむ意味でも分かりやすく、また出版文化論として読んでも秀逸。

  • 凄まじい勢いで凄まじい労作を翻訳なさっている寺尾先生の作った教科書。
    索引がないのが残念だが……。
    作品論よりは、作品の完成に至る背景や南米文壇の歴史、出版社の思惑、などに力点が置かれており、その点でも面白い。
    憶えるくらいに読み込む必要あり。

  • ラテンアメリカ文学を歴史に沿って解説。作家のエピソードも豊富で読書のモチベーションが上がる。
    いま流行りのボラーニョにはちょっと厳しい。

  • 書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記は控えさせていただきます。

    http://www.rockfield.net/wordpress/?p=8441

  • この本のなかで、傑作と言われてる文学作品は信頼できそうな気がする、、
    読み進めていくうちにその想いは確信に変わった。
    ここ40年くらいでベストセラー、世界中で売れた(わりと崇高な作品とされているもの)小説であっても、この本のなかでは辛口で評価されてたりする。
    そしてラテンアメリカ文学の中で欠かせない文豪たち(ガルシアマルケスやイザベルアジャンテ他)の作品の中にも良し悪しがあること、わたし自身もこれはどうなのか?と思ってた作品に、寺尾先生が同じようなことを感じていらしてる箇所(偉そうにすみません!)もあって、ますます信用度アップ。
    ラテンアメリカ文学の歴史やブームを牽引した作者たちの裏話なども盛り込まれています。
    ラテンアメリカ文学好きにはかなりオススメな本かなと。

  • ラテンアメリカ文学というとマジックリアリズムしか知らなかったのだが,本書でその前後の文脈が理解できる。ブームがある種の陳腐化を招くところはどこも同じだなと思いながら読み進めた。

  • ここ100年くらいのラテンアメリカ、スペイン語圏の小説を巡る状況と背景を理解するのに、大変役に立つ一冊です。著者ならではの毒舌的!表現も楽しめます。

  • なるほど、ブラジル人作家を始め、ラテンアメリカの作家が少ない理由が分かった。

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著者プロフィール

1971年名古屋生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。メキシコのコレヒオ・ デ・メヒコ大学院大学、コロンビアのカロ・イ・クエルボ研究所とアンデス大学、ベネズエラのロス・アンデス大学メリダ校など6年間にわたって、ラテンアメリカ各地で文学研究に従事。政治過程と文学創作の関係が中心テーマ。現在、フェリス女学院大学国際交流学部教授。
主な著書に『フィクションと証言の間で―現代ラテンアメリカにおける政治・社会動乱と小説創作』(松籟社、2007)、『魔術的リアリズム―20世紀のラテンアメリカ小説』(水声社、2012)、主な訳書にエルネスト・サバト『作家とその亡霊たち』(現代企画室、2009)、オラシオ・カステジャーノス・モヤ『崩壊』(同、2009)、マリオ・バルガス・ジョサ『嘘から出たまこと』(同、2010)、フアン・ヘルマン『価値ある痛み』(同、2010)、フアン・カルロス・オネッティ『屍集めのフンタ』(同、2011)、カルロス・フエンテス『澄みわたる大地』(同、2012)、ギジェルモ・カブレラ・インファンテ『TTT トラのトリオのトラウマトロジー』(同、2014)、ホセ・ドノソ『別荘』(同、2014)、グレゴリー・サンブラーノ編『ゴンサロ・ロハス詩集(アンソロジー)』(同、2015)がある。

「2015年 『怒りの玩具』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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