欧州複合危機 - 苦悶するEU、揺れる世界 (中公新書 2405)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024053

感想・レビュー・書評

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  • 問題の解決するために生み出した制度が、新たな問題を引き起こすという全体構造がよく理解できる。

  • 20世紀に戦火にまみれた欧州を国境を越えて統合する壮大なイニシアチブは、ユーロ・ギリシア危機をはじめとして、シリアからの難民や、テロ、そしてはたまたBREXITと、2010年代に入って次々と困難に渦に飲み込まれることとなります。

    PWCの予測ではEU加盟国が世界のGCPに占める割合が10%未満へ低下する、としています。そうした中、欧州はアメリカそして今後より成長していく新興国(中国、インド、ロシア、ブラジルなど)に伍していくために、より一層バーゲニングパワーを結集させていく必要があることでしょう。著者は、そうした競争的側面から、EUは存在意義があることを本書の後段で述べています。

    一方欧州共同体が、パリ協定など環境基準や人権問題などで、世界的なスタンダードの構築にリーダーシップを発揮している分野も多岐にわたることも事実です。欧州が、今の危機を乗り越えて統治のモデルを提示し続けることができるかどうかが、欧州各国の首脳(政治だけでなく、経済や文化各界での)たちの双肩にかかっていると思いました。

  • 後半の「今後のゆくえ」についての考察部分は自分にはよく分からなかった(評価のしようがなかった)が、各危機の各論解説的な前段…ユーロ、難民問題、安全保障、イギリスのEU離脱…については、日頃ニュースに触れて「何となく」分かっているようでよく分かっていなかった内容について整理して理解することが出来、大変に有用だった。特に、ちょうど先に同じ中公新書の『ポピュリズムとは何か』を読んでいたのが…背景となるコンテクストが踏まえられ…よかったように思う。

  • 通貨、難民、安全保障、BrexitをEUにとっての複合的な危機と捉え、その全体像と歴史的文脈への位置付け、そして今後の展開を議論する。300ページ弱の中に相当な情報が詰め込まれていて、読むのにはそれなりの時間と気力が必要だった。しかし、ヨーロッパ、あるいはEUが置かれている状況をつかみ、分析的な視座を得ることができる。時事的なだけでない、広い視点をもたらしてくれる。

  • 欧州で起きている問題についてまとめた本。具体的には、難民問題、イギリスのEU離脱、反EU政権の誕生の傾向など。
    個人的に、欧州で起きている様々な変化は、現状に不満を持つ人々が増えたことにあると感じていたが、本書でも同様の見解がなされていた。しかし、それぞれについて事例の背景が紹介されており、今後の展望まで触れていることは本書の価値を上げている。また、最新の政治学の理論や知見に触れつつ、現状を分析しているのも良いところだと思う。

著者プロフィール

北海道大学大学院法学研究科教授
主著に,The Presidency of the European Commission under Jacques Delors (単著,Macmillan,1999年),『ヨーロッパ統合史』『原典ヨーロッパ統合史』(編著,名古屋大学出版会,2008年),『グローバル・ガバナンスの歴史と思想』(編著,有斐閣, 2010年),『グローバル・ガバナンスの最前線―現在と過去のあいだ』(編著,東信堂,2008年)など。


「2011年 『複数のヨーロッパ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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