醤油・味噌・酢はすごい - 三大発酵調味料と日本人 (中公新書 2408)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024084

作品紹介・あらすじ

料理の素材を引き立て、味付けの決め手となる調味料。古くから用いられてきた発酵調味料の醤油・味噌・酢は、日本の食卓に欠かせないばかりか、海外での需要も年々高まっている。本書は、発酵学の第一人者がこれら三大調味料の製造過程や成分をわかりやすく解説。我が国の食文化に根ざした歴史や魅力を述べる。さらには、近年の科学的知見をふまえ、血圧上昇や肥満の抑制、発ガン予防などの驚くべき効能も紹介する。

感想・レビュー・書評

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  • 「醤油・味噌・酢はすごい」ことを書いているのではあるが、つくづく小泉武夫はすごいと思う。専門の学者とは言え、日本の三代発酵調味料たるこの3つについては、その歴史・製法・成分・効能・調理法まで凡そこのコンパクトな新書にギュウギュウに詰め込んで出し惜しみすることがない。

    下手にネットサーフィンするよりも、この一書を読めば様々な調べ物は用を足すのではないか?とは言え流石に、発酵調味料が「腸に良い」という視点は、この学者には殆どなかった。医者でないので、 最新の病理学は得意ではないのだろう。あと現代風レシピもない。でも、「発酵調味料のおかげで、日本食はこんなにも美味い」ということは大いに主張している。日本全国、世界の発酵調味料は味わい尽くした御方ではある。

    私の関心は腸活に関すること、古代の知識に関することなので、そこに限定して参考になった部分を以下にメモする。

    〈醤油〉
    ・塩の土器製塩法(縄文後期〜)は茨城県霞ヶ浦に初現、以後松島、津軽、やがて弥生時代に児島、そして瀬戸内海全体へ、古墳時代に愛知や天草へ。
    ・醤油は6世紀初頭中国の豆醤(トウジャン)の上澄液の記録が有り。我が国へは仏教伝来(538)共に伝わったと言われているが、弥生時代に肉魚野菜を塩に漬け込んだ「比之保(ひしお)」があり、その保存液を捨てるはずがない(←私もそう思う)。「醤」に「ひしお」を当てたのは、似ているので、一緒にしてしまったのだろう。大豆も縄文時代からあることが、確かめられている。
    ・醤油1リットルに納豆5包、昆布、ニンニクを混ぜた「納豆醤油」を、小泉武夫は万能調味料として作ってきたという。粘り気のある調味料。気持ち悪いかもしれないが、私は試してみたい。

    〈味噌〉
    ・養老律令(718)によると、調味料は「醢(肉の塩辛)、醤、鼓、未醤、酢、酒、塩」だったという。このうち、鼓は大徳寺納豆に近いもの、未醤が味噌である可能性が高くなった。味噌という漢字は「日本三代実録(901)」に初めて現れる。
    ・味噌の保健効果は多い。「大豆アレルギーが起きない」「血中のコレステロールを下げる不飽和脂肪酸が多い」「メラニン色素の合成を防ぐ遊離脂肪酸」「動脈硬化を防ぐレチシン」「大腸癌を防ぐ食物繊維」「ビフィズス菌を増やすオリゴ糖」「抗酸化と食品保存効果のビタミンE」「血圧上昇抑制放射線防御効果」「抗腫瘍性と抗変異原性」

    〈酢〉
    ・酢の歴史は酒の歴史と同じ。ブドウ糖から酒が作られて、酒のエチルアルコールから酢酸菌が作用して酢酸ができる。
    ・奈良時代では既に酢を作るために最初から醸している。
    ・万葉集巻16に「醤酢に蒜つきかてて鯛願ふ吾にな見せそ水葱のあつもの」→「野蒜を刻んで加えた醤油と酢で鯛を食いたいと思っていたのに、水葵の煮物とは勘弁してくれよ」とある。←かなりのグルメだ!
    ・食酢の殺菌作用。o-157の様な薬剤に耐性を持つ細菌でも約150分で死滅。
    ・減塩効果並びに肉魚野菜からカルシウム、マグネシウム、カリウム、リンなどを溶出する力等々がある。
    ・熟鮓(なれずし)の知恵。保存性、魚臭の消滅、ビタミンの生成、整腸作用。
    ・酢の保健効果。コレステロール値の低下。糖尿病の予防効果。高血圧症予防効果。肥満の防止(脂肪面積の減少)。骨粗鬆症の予防。疲労の回復。
    ・食酢の有効摂取量は1日15-30ミリリットル。

    ←発酵食品博士の小泉武夫さん。現在77歳。これは4年前の書ではあるが、そろそろ身体をご自愛してもらって、無茶な食べ歩きはせずに、発酵食品で健康長寿ができると証明してもらいたいものだ。

  • 日本の三大発酵調味料である、醤油、味噌、酢について、歴史的経緯、地理的特異性、科学的特性などを説いた一冊。日本文化史との関わりや風土との絡みなど、深い知見に満ちていてとても面白かった。各地の発酵調味料を使ってみたくなった。

  • 自称「味覚人飛行物体」にして「発酵仮面」こと小泉武夫教授の新著ということで読んでみました。
    醤油、味噌、酢に関する蘊蓄の数々、楽しかったですが、味噌については愛知県岡崎市などが今でも産地として有名な八丁味噌、豆味噌はおそらく高麗人によって製法がもたらされたとのことで、韓国のテンジャンとも製法が近いとのこと。改めて八丁味噌を味わってみたくなりました。
    醤油については、小泉教授協力お勧めの「納豆と刻み昆布とニンニクのぶつ切りを醤油の中に入れて寝かせた特製の納豆醤油はぜひ試してみたいところ…
    酢については、、、脂質代謝にやや異常のある私としては、改めて1日30mlずつ「飲んで」みなくては、、、近日中に「飲む黒酢」か何かの入手を図ります。(苦笑)

  • 専門性が高くて難しかったですが、勉強になりました。

  • タイトルそのままで、醤油、味噌、酢について知れる本。

    単なる調味料としてしか思ってなかったが、どうやって作られるのか、歴史的にいつごろからあったのか、体にどういいのか、などいろいろと勉強になることが多かった。
    味噌汁などで味噌を日常的に取るようにするとお通じなど体調がよくなるのは自分でも体感していたけど、昔の人々も経験的にそれを知っていて、戦国時代などはタンパク源としても味噌を重用していたと知ってすこし驚いた。現代ではそのすごさが科学的にも解明、裏付けされている。
    体に良い、疲れも取れる、ということで、味噌、酢をもっと取るようにしようと思った。

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  • 醤油・味噌および酢の
    ありがたみを知りました。
    ご先祖様たちへ感謝。

  • すごいね、日本

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50027403

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著者プロフィール

小泉武夫(こいずみ・たけお):1943年、福島県の造り酒屋に生まれる。東京農業大学名誉教授。専門は醸造学・発酵学・食文化論。専門的な話を、分かりやすく伝える達人。また食の未来を中心に、日本が抱える多くの大問題に挑んでいることから、「箸(★正字)を持った憂国の士」と評される。140冊を超える著作があり、小説も『猟師の肉は腐らない』、『魚は粗がいちばん旨い』など、専門的な知識に裏付けられた独自の作品が多数ある。


「2023年 『熊の肉には飴があう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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