フィリピン―急成長する若き「大国」 (中公新書)

  • 70人登録
  • 3.67評価
    • (4)
    • (5)
    • (4)
    • (1)
    • (1)
  • 7レビュー
著者 : 井出穣治
  • 中央公論新社 (2017年2月19日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024206

フィリピン―急成長する若き「大国」 (中公新書)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • ドゥアルテ大統領で悪目立ちをしてしまった感はあるものの
    しかし、どのような道行を経てそこに来たか知らない人は多いだろう。

    この本はASEANの中での差異も取り上げながら、
    簡潔にスペイン植民地時代から歴史も抑えてあり、
    概要をとらえるのにとてもよくまとめられた本だ。

    名目GDPは3000億ドル弱でASEANでもトップ集団ではないが
    人口は1億を超えて2番手、さらに平均年齢25才という人口動態の特徴がある。
    働き盛りがこれからバンバン増えていくという爆発力を秘めているわけだ。

    今、日本とフィリピンの関係は悪くはないと思われるが
    第二次世界大戦時には激戦のあった場所も多くあって、
    日本への感情は穏やかでない時期もあった。

    (以前読んだマッカーサーの回顧録でも
    互いに大きな被害が出た戦いであったことがよくわかる。)

    それがどのようにして、今フラットなところまでこれたか
    改めて見ておくことは価値のあることかとも思う。

  • 経済面に特化してそつなくわかりやすくまとめられている。ビジネスマン向け。

    (フィリピンの成長)
     かつて経済成長から取り残され,「アジアの病人」などと揶揄されていたフィリピンであったが,21世紀からは急速な経済成長に入っている。国際協力銀行の「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」によれば,進出先としての有望度ランキングに関して,フィリピンは14位(2011)→11位(2013)→8位(2015)と着実にランクアップしており,世界がフィリピンに対して注ぐ視線は変わってきている。ポストBRICs(VIP)の一国として取り上げられることも多くなった。フィリピンの強みは,①2050年代まで続くとされ,アジア諸国の中でも特に長い人口ボーナス(人口そのものも多くインドネシアに次ぐ東南アジア第二位),②国民の英語力(インドなどに比べ癖が少ないとされ,BPO産業に適する国として選好されている)である。フィリピンの産業構造の特徴としては,①農業→製造業→サービス業という一般的な産業構造の変化を経ずサービス業が全体の約60%を占めていること,②外需主導型というより内需主導型であること,③積極的な海外への移住政策をとっており,出稼ぎ労働者による資金提供が経済を少なからず支えていることが挙げられる。こうした経済の好転は,エドゥサ(ピープルパワー)革命からしばらく経過し,アロヨ政権・アキノjr政権期に政治的安定が実現して,ある程度しっかりとした経済政策がとられるようになったところも大きい。

    (フィリピンの問題)
     経済成長著しいフィリピンであるが多くの課題を抱えている。❶高い失業率。国民の約5分の1が実質的な失業状態にある。❷貧困と格差。フィリピンでは未だ財閥が大きな力を持っている。❸製造業の低迷。製造業の発展は裾野産業を育て,労働人口を吸収する力があるが,サービス業に偏重しているフィリピン経済ではそれができない。❹インフラの弱さ。自然災害の頻発するフィリピンでは深刻な問題であり,特に安定した電力供給ができないことは製造業が育たない原因にもなっている。製造業の弱さがインフラの未整備につながるため,悪循環となっている(中国主導で結成されたAIIBに東南アジア諸国が参加した理由のひとつはこのようなインフラの未整備を解消したいという想いがあるからである)。❺スペイン・アメリカ占領下における負の歴史的遺産。スペインが主導したガレオン貿易はフィリピン経済を外部から流入する富に依存させ,産業の基盤をつくらなかった。ガレオン貿易に携わる中華系移民の流入は,現在フィリピンで力を有している中華系財閥の起源にもなっている。スペインによって導入された大土地所有制は格差を定着させ,モノカルチャー経済を生み出した。スペインに代わってフィリピンを植民地支配したアメリカは当初よりフィリピン人から強い反感を受けていたため,エリート層の支持を獲得するために,十分な民主化改革を実現できなかった。特に農地改革ができなかったことで,アジアでも最も早い段階で導入されたフィリピンの民主政治は独立後も機能しなくなった。農地改革は単に小作人の労働意欲を上昇させること以外にも,①農耕者が土地を売って製造業の担い手になる,②個人の尊重される社会への転換がはかれる,といった効果が期待できる。日本と同様にアメリカの支配を受け,冷戦期には国防をアメリカに頼れる好条件にあったにも関わらず,日本のような経済成長が達成できなかったのは農地改革の失敗に起因するところが大きい。❻未だ不安定な政府のガバナンス。輸入代替政策から輸出中心の産業転換を行うべく開発独裁を行ったマルコス政権は,汚職にまみれ政府のガバナンスを著しく劣化させた。エドゥサ革命はマルコス政権を打倒し,東南アジア全体に民主化革命を広げる契機となった(フィリピンでは現在もこの経験から政府主導というより民間の力を重視する傾向が見られる)が,アキノ政権下では十分な改革が達成できず治安も悪化した。21世紀に入ってから改善はみられるが,フィリピン政治は依然として大統領の個人的手腕に依存している部分が大きく,ポピュリズムの温床となっている。ドゥテルテ政権はその経済政策においてはこれまでの成長路線を安定的に継続し一定の支持を受けているが,度重なる暴言や犯罪者に対する重罰で批判を浴びることも多く,その好例であるといえる。

    (日本とフィリピン)
     フィリピンは日本から飛行機でわずか5時間程度と,東南アジアの中で最も近くに位置している。距離的な近接性だけでなく,フィリピンと日本には多くの共通点がある。①島からなる海洋国家である,②米国の統治下におかれた経験を有し,現在では米国の同盟国である,③民主主義という価値観を共有している,④中国との領土問題を抱えている。フィリピンから見ると日本は最大の貿易国であり,現在では第二次大戦時の対立
    を乗り越えて一定の安定した関係が築けているといえる。

  • これまでの途上国の成長パターンとは異なるフィリピンの発展が本物となるか、ここ数年が勝負。

  • フィリピン経済の現在とこれからを考える上で非常に参考になった。

  • フィリピン関連の仕事をすることになり、日経の書評に掲載されていたため、購入。経済、政治、ASEANにおけるフィリピンの位置づけ(地政学)、歴史、軍事と多岐に渡る観点から大局的に現在のフィリピンを描いている。あとがきに筆者がひとつのストーリーとして書くことを試みたとあるが、その調査とまとめ方に敬意を表したい。個人的にとても参考となり、プロジェクトチーム全員に紹介しました。

  • 312.24||Id

  • かつて「アジアの病人」と呼ばれたフィリピン。近年、サービス業主導で急成長し、経済規模は10年強で3倍となった。人口は1億人を突破し、国民の平均年齢は25歳。「アジアの希望の星」との声さえ聞かれる。一方、貧富の格差はなお深刻で、インフラも不十分。ドゥテルテ大統領の暴言や強権的手法は世界から危惧されている。経済成長著しい島国の魅力と課題に、IMFでフィリピン担当を務めたエコノミストが迫る。

全7件中 1 - 7件を表示

井出穣治の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
リンダ グラット...
有効な右矢印 無効な右矢印

フィリピン―急成長する若き「大国」 (中公新書)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

フィリピン―急成長する若き「大国」 (中公新書)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

フィリピン―急成長する若き「大国」 (中公新書)を本棚に「積読」で登録しているひと

フィリピン―急成長する若き「大国」 (中公新書)はこんな本です

ツイートする