フィリピン―急成長する若き「大国」 (中公新書)

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著者 : 井出穣治
  • 中央公論新社 (2017年2月19日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024206

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フィリピン―急成長する若き「大国」 (中公新書)の感想・レビュー・書評

  • 経済面に特化してそつなくわかりやすくまとめられている。ビジネスマン向け。

    (フィリピンの成長)
     かつて経済成長から取り残され,「アジアの病人」などと揶揄されていたフィリピンであったが,21世紀からは急速な経済成長に入っている。国際協力銀行の「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」によれば,進出先としての有望度ランキングに関して,フィリピンは14位(2011)→11位(2013)→8位(2015)と着実にランクアップしており,世界がフィリピンに対して注ぐ視線は変わってきている。ポストBRICs(VIP)の一国として取り上げられることも多くなった。フィリピンの強みは,①2050年代まで続くとされ,アジア諸国の中でも特に長い人口ボーナス(人口そのものも多くインドネシアに次ぐ東南アジア第二位),②国民の英語力(インドなどに比べ癖が少ないとされ,BPO産業に適する国として選好されている)である。フィリピンの産業構造の特徴としては,①農業→製造業→サービス業という一般的な産業構造の変化を経ずサービス業が全体の約60%を占めていること,②外需主導型というより内需主導型であること,③積極的な海外への移住政策をとっており,出稼ぎ労働者による資金提供が経済を少なからず支えていることが挙げられる。こうした経済の好転は,エドゥサ(ピープルパワー)革命からしばらく経過し,アロヨ政権・アキノjr政権期に政治的安定が実現して,ある程度しっかりとした経済政策がとられるようになったところも大きい。

    (フィリピンの問題)
     経済成長著しいフィリピンであるが多くの課題を抱えている。❶高い失業率。国民の約5分の1が実質的な失業状態にある。❷貧困と格差。フィリピンでは未だ財閥が大きな力を持っている。❸製造業の低迷。製造業の発展は裾野産業を育て,労働人口を吸収する力があるが,サービス業に偏重しているフィリピン経済ではそれができない。❹インフラの弱さ。自然災害の頻発するフィリピンでは深刻な問題であり,特に安定した電力供給ができないことは製造業が育たない原因にもなっている。製造業の弱さがインフラの未整備につながるため,悪循環となっている(中国主導で結成されたAIIBに東南アジア諸国が参加した理由のひとつはこのようなインフラの未整備を解消したいという想いがあるからである)。❺スペイン・アメリカ占領下における負の歴史的遺産。スペインが主導したガレオン貿易はフィリピン経済を外部から流入する富に依存させ,産業の基盤をつくらなかった。ガレオン貿易に携わる中華系移民の流入は,現在フィリピンで力を有している中華系財閥の起源にもなっている。スペインによって導入された大土地所有制は格差を定着させ,モノカルチャー経済を生み出した。スペインに代わってフィリピンを植民地支配したアメリカは当初よりフィリピン人から強い反感を受けていたため,エリート層の支持を獲得するために,十分な民主化改革を実現できなかった。特に農地改革ができなかったことで,アジアでも最も早い段階で導入されたフィリピンの民主政治は独立後も機能しなくなった。農地改革は単に小作人の労働意欲を上昇させること以外にも,①農耕者が土地を売って製造業の担い手になる,②個人の尊重される社会への転換がはかれる,といった効果が期待できる。日本と同様にアメリカの支配を受け,冷戦期には国防をアメリカに頼れる好条件にあったにも関わらず,日本のような経済成長が達成できなかったのは農地改革の失敗に起因するところが大きい。❻未だ不安定な政府のガバナンス。輸入代替政策から輸出中心の産業転換を行うべく開発独裁を行ったマルコス政権は,汚職にまみれ政府のガバナンスを著しく劣化させた。エドゥサ革命はマルコス政権を打倒し,東南アジア全体に民主化革命を広げる契機となった(フィリ... 続きを読む

  • これまでの途上国の成長パターンとは異なるフィリピンの発展が本物となるか、ここ数年が勝負。

  • フィリピン経済の現在とこれからを考える上で非常に参考になった。

  • フィリピン関連の仕事をすることになり、日経の書評に掲載されていたため、購入。経済、政治、ASEANにおけるフィリピンの位置づけ(地政学)、歴史、軍事と多岐に渡る観点から大局的に現在のフィリピンを描いている。あとがきに筆者がひとつのストーリーとして書くことを試みたとあるが、その調査とまとめ方に敬意を表したい。個人的にとても参考となり、プロジェクトチーム全員に紹介しました。

  • かつて「アジアの病人」と呼ばれたフィリピン。近年、サービス業主導で急成長し、経済規模は10年強で3倍となった。人口は1億人を突破し、国民の平均年齢は25歳。「アジアの希望の星」との声さえ聞かれる。一方、貧富の格差はなお深刻で、インフラも不十分。ドゥテルテ大統領の暴言や強権的手法は世界から危惧されている。経済成長著しい島国の魅力と課題に、IMFでフィリピン担当を務めたエコノミストが迫る。

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