物語 オランダの歴史 - 大航海時代から「寛容」国家の現代まで (中公新書 2434)
- 中央公論新社 (2017年5月18日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121024343
作品紹介・あらすじ
16世紀、スペイン王権との戦いから「低地諸州」北部であるオランダは独立。商機を求めてアジアや新大陸へ進出し、17世紀、新教徒中心の共和国は、世界でも最有力の国家となった。だが四次にわたる英蘭戦争、フランス革命の余波により没落。ナポレオン失脚後は王国として復活し、20世紀以降、寛容を貴ぶ先進国として異彩を放つ。本書は、大航海時代から現代まで、人物を中心に政治、経済、絵画、日本との交流などを描く。
感想・レビュー・書評
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いやぁ~真面目な著者ですねぇ。
新書というスタイルは専門家が学術書から離れ、一般人を対象にするのだから、少しズッコケて書くのは暗黙のルール。
この著者もできるだけそうするよう努めているのだが、真面目な本質は変えられない。
実に本格的なオランダの歴史書になっている。
日本人がこれだけ他国の歴史に詳しいって、面白いですね。
多分どのオランダ人より詳しいかも知れない。
本人も日本史に関しては、これほど詳しくないんじゃないかと思わされる。
オランダ史のほとんどが網羅されているといっていいでしょう。
ですから、読みにくさは確かにあります。
ぼく自身は、(江戸時代と現代の)オランダ人の国民性の秘密はどこにあるのだろうという点に興味を持ってこの本を選んだつもりですが、そういう点には殆ど触れられていません。
しかし、その国の国民性を理解するのに、その国の辿ってきた歴史を知ることは実は基本中の基本だと気付かされます。
すでに予断を持っている誰かが書いた本を通じてその国を理解するよりも、まったく手垢の付かない状態で提供さえるほうが却って、近道なのじゃないでしょうか。
前回読んだ司馬遼太郎の紀行文も面白かったけれど、そのときに感じたオランダ人気質の元となる歴史的バックグラウンドをこの本によって理解が進んだと思うのです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【History】物語オランダの歴史 / 桜田美津夫 / 20170928 (74/670) < 322/83916>
◆きっかけ
・出張に行く国故、事前勉強
◆感想
・オランダの過去500年の歴史を概説した書で、ハプスブルク家の記述から始まり、オランダがスペインの支配からの八十年にわたる独立戦争、大航海時代には交易地を拡大し世界経済を握り、英蘭戦争で衰退し、ナポレオンのフランスへの併合、ウィーン体制で王国として再び独立、戦後はインドネシアの植民地を失い、アメリカとの関係を保ちながらの復興等々、とても興味深い。
また、国の語源の通り、低湿地帯だったことから、水との格闘が常とされ、国を治めるのは水を治めること(歴代の国王は治水学を学んだよう)と同義だったという点は同国ならではという印象。
・共通して言えるのは、宗教勢力(カルヴァン派やカトリック)や主義者(社会主義者、自由主義者など)がそれぞれの生き方や自由を貫くために、妥協と自由の相互承認という道を選択したことであり、暴力に訴えるような内乱があまりなかった点は興味深い。行ってみて、改めて感じたのは、その国土が平坦なこと。その国土からは、おそらくダイバーシティーという考えが生まれたのではないかとも思える(起伏に富んでいると、優劣をつけたがある?)。
・また、日本との関係にも触れらている。ウィリアム・アダムスの推薦もあってオランダのみとの貿易という道を選んだ徳川家康の優れたバランス感覚は驚き。
◆引用
・初の株式会社:絶対君主のいない共和国では、大事業を行うにも、巨匠に集団肖像画を書いてもらうにも、皆で金を出し合うのは当然である。東インド会社の出資形態は突如湿原したものではなく、中世以来の商習慣の積み重ねの結果でもあった。
・八重洲=家康に仕えた、オランダ人航海士のヤン・ヨーステン
・オランダ軍はナチス・ドイツがオランダ人に行ったことを、今後はインドネシア人に行った。
・経済復興援助マーシャルプランに大幅に依存していたのはオランダ。アメリカはオランダがインドネシアでの軍事行動をやめないなら、援助の廃止を示唆。
・古来、オランダは通常の食卓の上に並ぶはずの魚がまれに玄関からゲストとして飛び込んでくる、そういう国柄であった。
・オランダの原発政策がどうなるかは、グローニンゲン州の天然ガス田の今後と関わる。枯渇寸前。 -
16世紀、スペイン王権との戦いから「低地諸州」北部であるオランダは独立。商機を求めてアジアや新大陸へ進出し、17世紀、新教徒中心の共和国は、世界でも最有力の国家となった。だが四次にわたる英蘭戦争、フランス革命の余波により没落。ナポレオン失脚後は王国として復活し、20世紀以降、寛容を貴ぶ先進国として異彩を放つ。本書は、大航海時代から現代まで、人物を中心に政治、経済、絵画、日本との交流などを描く。
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16世紀後半、反スペイン(ハプスブルク家)がきっかけとなり、低地諸州が結集していく様から話が始まっている。
強き皇帝がいたわけでもなく、ヨーロッパの中でもかなり独自の路線を進んでいる。そうは言いながらも、オランイェ公ウィレムが続く州総督は国父のような立ち位置であり、現在まで続く王室へと繋がっている。中でも、41歳差の再婚というとんでもない行動に出る爺から、安定した女王が3代続くのはネタのような実話。また、かのナポレオンの弟であるルイ・ボナパルトはオランダでは「被災者の父」と呼ばれるほど、災害発生時に熱心に動いていた。
ユダヤ人にも寛容であったオランダが直面したナチスドイツ。あそこまで苦しんだ彼らが、戦後、同じようにインドネシアを苦しめる。
江戸時代に日本と大きな関係があったオランダであるが、言葉の面でここまで大きな影響があったのは知らなかった。アルコールやコンパスなど単語として定着したモノは勿論の事、近代科学の叙述を可能にする為、平易な日常語で次々と造語を作ったオランダ語を訳す事で、酸素・水素・炭素など⚪︎⚪︎+素、結膜・角膜・網膜などの⚪︎⚪︎+膜が生まれている。これは凄いな。 -
かつての海洋帝国の歴史と、日本との関わりと現代のオランダについてよくわかった。
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いちばん知りたかったことには触れられていなかったのですが、だいたいの流れを掴むにはよかったと思います。
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17〜18世紀前半までの勢いが予想以上にすごいものだった。今のオランダは小国というイメージだが、この時代においては軍事的にも経済的にも世界の覇権を握っていた。
現代においてもオランダについても興味深い点がいくつか挙げられている。戦後オランダは寛容な国として移民受け入れに積極的だった。しかし近年では否定的な風潮に変わっている。
(後で追記、、 -
【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 反スペインと低地諸州の結集ー16世紀後半/第2章 共和国の黄金時代ー17世紀/第3章 英仏との戦争、国制の変転ー17世紀後半~19世紀初頭/第4章 オランダ人の海外進出と日本/第5章 ナポレオン失脚後の王国成立ー19世紀前半/第6章 母と娘、二つの世界大戦ー19世紀後半~1945年/第7章 オランダ再生へー1945年~21世紀 -
かなり長い間読んでました。他のレビューにもあるように、ちょっと難しいかもしれません。学術書のような文体だと感じました。恐らくオランダ人ですらここまで知っていないのでは?という具合に詳しく中世から2017年までのオランダを説明しています。
政治にあまり興味ないので、オランダという国の成り立ちと、東インド会社のあたりはとても面白かったです。 -
16世紀からのオランダの歴史をまとめた1冊。中公新書の歴史シリーズは3冊目だが、かなり面白く読めた。各国史を読んでいくと他国との違いや国民性までわかってとても興味深い。
オランダ史から私が得た印象は「狡賢い」である。正義であるようで、一方植民地では残忍な統治を行なったり、かと思えばしなやかに問題を解決したりもする。とても好きな国だ。
文章もかなり読みやすい。政治だけでなく文化や日蘭関係など読者の興味を持ちやすいトピックも漏らさず書いてくれている。おすすめの1冊だ。