物語 ポーランドの歴史 - 東欧の「大国」の苦難と再生 (中公新書)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024459

作品紹介・あらすじ

十世紀に産声をあげたポーランド王国は、十四〜十六世紀に隆盛を極めるが、王朝断絶後、衰退に向かう。十八世紀、ロシア・プロイセン・オーストリアによる分割で国家は消滅。第一次大戦後に束の間の独立を勝ち取るも、第二次大戦中にはドイツとソ連に再び国土を蹂躙された。冷戦下の社会主義時代を経て一九八九年に民主化を達成。潜在力を秘めた地域大国は今、どこへ向かうのか。栄光と悲運に彩られた国と民族の歴史。

感想・レビュー・書評

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  • 日本では、国境の策定という作業はめったには起きないのである。しかして、大陸の国にとっては、よくあることなのである。
    歴史のイベントを負いながら、国境線の変更を追うのはちょっとむずかしいと思ってしまう。
    日本では、地方という単位は、単なる地理上の区分であるが、大陸にある国は、国境策定の歴史、民族の歴史を反映しているものである。

    ポーランドの歴史は、
      ポーランド王国の黎明期時代
      ポーランド・リトアニア連合王国時代
      ポーランド3分割の時代
      両世界大戦の時代
      第二次世界大戦後の世界
    にわけられる。

      数度の蜂起の鎮圧、シベリア抑留、ナチスのポーランド侵攻、アウシュビッツ、そして、ソ連軍のカティンの森の将校3000人殺害

    ポーランドも他の東欧の国々と同様、近年、ロシア(ソ連)とドイツ(プロシア・オーストリア)との脅かされた歴史なのである。

    ポーランドは、芸術にも、科学にも憧憬の深い地である。

      ショパン、ワイダ、スタニスワフ・レム
      コペルニクス、キュリー夫人
      政治的にも、ワレサや、ローマ教皇 ヨハネパウロ2世 を生んでいる。

    目次は、以下です。

    序章 王国の黎明期

    第1章 中世の大国
    第2章 王政の終焉と国家消滅
    第3章 列強の支配と祖国解放運動
    第4章 両大戦間期
    第5章 ナチス・ドイツの侵攻と大戦勃発
    第6章 ソ連による解放と大戦終結
    第7章 社会主義政権時代
    第8章 民主化運動と東欧改革

    終章 ポーランドはどこに向かうのか

    あとがき
    主要参考文献
    ポーランド略年表

  • ポーランド、名前は耳にするがその歴史はほとんど知らなかった。ソ連、ドイツに挟まれたこの国の歴史は常に戦争がつきまとう。自国が地図から消えたことも。日本で暮らしていると、そんな国賀あるのか⁈と思ってしまう。戦国時代に国内で戦っていた日本はある意味平和だったんだろう。

  • 物語 ポーランドの歴史 - 東欧の「大国」の苦難と再生。渡辺克義先生の著書。第二次世界大戦が始まったのはナチス・ドイツがポーランドに侵攻したことが直接のきっかけ。中世には隆盛を極めていて、歴史的にも重要なポーランド。でもポーランドの歴史について詳しく語れる日本人は多くないと思います。ポーランドの歴史を一から学べる良書。

  • ロシア、ドイツ、オーストリアという強国に挟まれ、百年以上国自体が失われていたこともあるポーランド。
    地動説を唱えたコペルニクス、フランスにありながら生涯ポーランドへの愛国心を燃やしたショパン、ローマ教皇ヨハネ・パウロ二世などの世界的な名声を持つ歴史上の人物を生み出した国、ポーランド。
    そして、ヒトラーとスターリンの密約により第二次世界大戦の最初の侵略の標的となり、その後はアウシュビッツ(アウシュビッツはドイツ語読み。ポーランドにおける地名はオシフィエンチム)などホロコーストが行われた収容所なども置かれたポーランド。
    欧州において波乱の歴史を経ながら、なかなか日本でその国の歴史を知る機会はない。そのポーランドの歴史を10世紀のポーランド王国の誕生から、現代までを辿った一冊。

  • 日本と同じく、敗北の美学を持つ国、ポーランドの歴史を紐解く入門書です。

    この本を例えるならば、東京にある地方アンテナショップでした。
    全く知らない読者に、ポーランドの征服の歴史、文化、風俗を幅広く教えてくれます。
    なので、一分野に限った研究をしたい方には不向きかもしれません。
    あと、ポーランド語源の名前が列挙されるので、一度読んだだけでは覚えきれないこと必定です。一目でわかったのは、辛うじて、コペルニクス、ショパン、キュリー夫人くらい(ワイダ元大統領って、一般常識の範疇ですかね?)


    私は、年末の渡航の予定に合わせて読みました。
    この本をプレゼントしてくれた友人いわく、
    『旅行は、現地の歴史を知るほど魅力的になる』とのこと。

    その助言に納得しました。

    ゲットーや市民蜂起を知らずにワルシャワにいくのは、源平合戦を知らずに壇之浦に行くようなもの。第二次世界大戦を学ばずに、広島原爆ドームを下から見上げるようなものだからです。
    歴史的な意義が、ただの瀬戸内海、火災事後処理待ちの建造物に貶められてしまいます。

    地図上いくども姿を消しながら民主化を達成した国、ポーランド。
    この国に初めての輪郭を与えてくれる良書でした。

  • 小学生の時に初めてショパンを聴いてから、
    ポーランドは私にとって特別な国になりました。
    だから、「偏見でしょ」と言われること百も承知で、
    「ポーランドの歴史はショパンの音楽と重なります」と断言します。

    ロシアのチャイコフスキーやラフマニノフ、
    ドイツのベートーヴェンやワーグナーは
    「勝ち組の音楽」。
    それにくらべてショパンはつねに哀愁をおびている。

    ただ、「大国に蹂躙されて、ポーランドという国が消滅していた時期もあった」けれども、
    今は存在している。
    完全に消えてしまった国なんてたくさんありますよね?
    なのにポーランドはのこっているんだから、
    それは「強い愛国心のなせるわざではないか」と思う私。

    バッハの音楽にメヌエットとかガボットとか舞踏曲があるけど、
    愛国心など全く感じられない。
    ショパンのポロネーズ、マズルカ、ワルツには、
    彼のポーランド愛がすさまじく感じられる。
    ただただ明るいヨハンシュトラウスのウィンナワルツとはまったく別の。

    そして、この本で初めて知ったこと。
    ポーランド王家略系図があるのですが、
    そのうちの一人であるジグムント三世ヴァザ(在位1587~1632)。
    彼はポーランド史上、命を狙われた唯一の王なのです!
    ただし未遂。

    私はここ数年たくさんの歴史本を読んできましたが、
    王家が身内同士で暗殺なんて日常茶飯事じゃないですか?!
    ですから、そんなところにポーランド人の優しさっていうのか、
    うーん、なんていうんでしょう。
    大国と違う何かを得ることができました。

  • ベルギーに続いて、物語シリーズのポーランド。ベルギーもそうだがヨーロッパの歴史はむしろ小国から学ぶべきなのかもと思った。大国に翻弄され、綱渡りをし、時には国家としては滅亡し、また復活する。しかしその復活の際には領土は以前と違っている。感覚的にはそんなことあるの?という話が普通にあり、「固有の領土」という概念は、現実世界には存在しないこと理解させられる。その教訓のなかでは色々な問題があるとしてもEUの成立は画期的だし、存続することは重要なのだ。西洋文化だけを賛美する必要ははないが、両大戦の重みを背負った上での文化がそこにはある。

  • ポーランドの歴史をコンパクトにまとめた通史(2017/07発行、886E)。

    本書は第2次大戦前後のポーランドの政治、外交などに重点をおいているため、通史とは云えやや偏りのある内容となっています。 又、比較的おおくのページを割いているワルシャワ蜂起の記述に付いては一部内容に間違いも見られ、微妙な感じの内容でした。

    期待していた程の内容ではなっかたので、個人的には残念な書籍です。

  • 手堅くまとまっている。ポーランドは理解の難しい国だ。まあ、理解の簡単な国などないが。読んでいて、また、読み終わって、暗澹たる気持ちになる。国家の発展の可能性は、ポーランドも日本もどこにあるのだろうか?

    蛇足だが、コラムがどれも面白かった。


  • 「ポーランド史は、『抵抗と挫折』という言葉で語られることも多い。その言葉どおり、独立を喪失している時代にあっても、ポーランドの民は抑圧に耐えるだけではなかった。この国の歴史を繙くと、『蜂起』と名の付く事件をたびたび目にする。『抵抗』こそ、ポーランド史のキーワードと言っていいだろう。しかし同時に、蜂起は毎回のように失敗し、その後が『挫折』で彩られるのもまたポーランド的であった。ともあれ過酷な運命に打ち克ち、不屈の精神を備えたポーランドの民の歴史に感動を覚えないわが同胞はいないだろう。」(p.ⅱ)

    「本書の執筆中に幾度かデジャ・ヴュ(既視現実)のようなものを感じた。ある事件について書いている時、これはすでに書いたのではなかろうかという感覚である。調べてみると、実際似たような事実が起きているのである。ポーランド人によるユダヤ人迫害・虐殺は、イェドヴァプネ事件(1941年)、キェルツェ事件(1946年)、三月事件(1968年)がそうであるし、大衆が指導者を熱狂的に迎え入れた出来事といえば、ピウスツキの場合しかり、ゴムウカの(復帰の)場合しかり、ワレサの場合しかりである。労働者の暴動で言えば、1970年と1980年は似ている。歴史的に見ると、先行する事件が教訓となった場合もあれば、そうならなかった場合もあり、人間の営みの不思議を見るような気がした。」(p.211)

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著者プロフィール

長岡崇徳大学教授
主要業績:『ポーランドを知るための60章』(編著、明石書店、2001年)、『ポーランドの高校歴史教科書【現代史】』(監訳、明石書店、2005年)、『物語 ポーランドの歴史』(中公新書、2017年)。

「2020年 『ポーランドの歴史を知るための55章』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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