カラー版 虫や鳥が見ている世界―紫外線写真が明かす生存戦略 (中公新書 2539)

著者 :
  • 中央公論新社
3.00
  • (2)
  • (5)
  • (13)
  • (7)
  • (1)
本棚登録 : 129
感想 : 14
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (179ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121025395

作品紹介・あらすじ

人間の目は、赤・青・緑の3色しか見ることができない。しかし、虫や鳥は紫外線も見分けることができる。それでは、虫や鳥には世界はいったいどう見えているか?著者は、紫外線カメラを自作し、動物や植物をかたっぱしから撮影してみた。すると、そこには驚きの世界が広がっていた。モンシロチョウは雄と雌で色が違うし、カラスも真っ黒いだけではなく、紫外色の違いで個体を識別していた。世界初の紫外線写真集。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 人間の目は、赤・青・緑の3色しか見ることができない。
    しかし、虫や鳥は紫外線も見分けることができる。
    人間には見えなくても虫や鳥には見える世界があり、それを豊富なカラー写真で示した本。
    生物学者である著者は、千葉生態系研究所所長を務める方で、元高校の生物教師でもある。
    以前この方のビオトープの話を読んだことがあるなぁと、思い出しながら読み進めた。
    これは面白い。自然科学の楽しさを久々に堪能できた。

    浅間茂さんが使用するのは紫外線だけに反応するカメラで、これは自作とのこと。
    一般的なカメラのレンズは紫外線を吸収するため、紫外線を通す蛍石や石英製のガラスで作ったレンズに紫外線だけを通すフィルターが使われたらしい。
    大変高価な代物だ。
    本書ではヒトの眼で見える画像と並列して掲載。
    思わず「え?そうだったの?」と驚くことばかりだ。

    同じ白でも雌雄がはっきりと区別がついたり、哺乳類の眼では紛らわしいものでも明確に区別がついている。
    人がシラサギと名付けた鳥も、シラサギからは白くは見えない。
    そもそも鳥の見ている世界に白色はほとんどないらしい。
    ハシブトガラスは個体によって異なる斑紋が浮き出たという。
    その斑紋で個体を識別しているということに驚いてしまう。
    多くの動物たちは紫外線を見ていると分かったのが1970年頃というから、それ以前はどのように考えられていたのだろう。

    人間が勝手に交配させて新種を作り出した気でいる花たち。
    例えばパンジーやチューリップなどはまだら模様に見えるという。
    自分たちの眼で見て「綺麗だから」などと思い込んでいても、自然の摂理に反したことをしているだけなのだ。
    動植物の生存戦略のための知恵を、人間がいたずらに手を加えて破壊していく。
    自分たちの眼で見える世界だけが全てではない。そんなことを思い知らされる。
    可視領域外の世界を見られるようなデバイスを人間にも埋め込むことは出来ないのか。
    もう少し考えるチャンスを与えてもらうために。

    ひとつ覚えたこと。
    動物の体色には色素によるものと「構造色」によるものがあるということ。
    この「構造色」とは体の微細な構造によって生じる色のことで、その構造が壊れない限り発色するという。
    1300年以上昔につくられた法隆寺の「玉虫厨子」の色が、今も変わらず色褪せないのは、その構造色によって発色しているかららしい。
    うーん、ふたつ前のレビューにリークして、嬉しかったな。

    出来れば新書版ではなくA4版くらいのサイズで読みたかったが、著者の好奇心がじゅうぶんに伝わってくる興味深い一冊。

    • goya626さん
      鳥学の世界も奥が深そうですね。読んでみたくなりました。
      鳥学の世界も奥が深そうですね。読んでみたくなりました。
      2019/10/23
    • nejidonさん
      goya626さん、コメントありがとうございます!
      この本は、読書=物語を読むことと思われてる方には不向きです。
      たぶんgoya626さ...
      goya626さん、コメントありがとうございます!
      この本は、読書=物語を読むことと思われてる方には不向きです。
      たぶんgoya626さんなら軽々とクリアできそうです(^^♪
      ぜひともお勧めです。
      レビューも気長にお待ちしますねー。
      2019/10/23
  • 緑色は私の好きな色だ。
    植物の葉には光合成を行うための葉緑素がある。
    子供の頃は、植物も緑色が大好きなんだなと思っていた。

    では、なぜ緑に見えるのか? 緑色が嫌いで反射しているからではないか!
    大人になってからは、単純に植物は緑が嫌いと決めつけていた。
    しかし、自分を緑色に見せることで得られるメリットがあるからなんですね。
    草木の緑に癒される今となっては、葉の色が赤や青紫でなくて良かったと、ほっとしたりもする。

    カラフルな生き物はカラフルな世界を見ている。
    犬猫は識別できる色の少ない世界を見ている。赤や黄色や緑や青の犬猫はいないですものね。
    虫や鳥やいろんな動物が見ている色の世界は知る由もないが、紫外線の少ない場所では鳥とヒトの見ている世界は似ているのでしょうか?

    本書は動植物の紫外線の吸収と反射の様子をスパイスとして生存戦略を考察しているが、そうだったの?というプチ情報もある。
    例えば、ドクダミの花のように見えるのは総苞片といって花弁はないとか、ミズバショウも花に見えるのは仏炎苞といって花はその中の穂状になって密生している部分だとか。

    本書で得た知識をふまえて、「ココリコ田中×長沼毅presents 図解 生き物が見ている世界」を読むといいかも。

  • カラーの写真がとてもよかった。
    私のような素人でも分かる。

    ①恐竜の時代に誕生した我々の祖先の哺乳類は小さく、恐竜を恐れ、夜活動していた。夜は紫外線を見ることは必要なかったため、紫外線をみる能力を失ってしまった。

    ☆今自分に見えているものが全てではない、ということは心に留めておく必要がある。

    ②生物の分布を見ると、同じようなグループでは、低緯度地方の動物が黒い。

    ☆熊とか?白くまは高緯度地方か・・確かにね・・
    白人と黒人の話も書いてあったがいまいち理解できず。

    ③秋になってイロハカエデなどの葉が紅葉するのは、寒くなり、葉と枝の間に離層が形成され、光合成によりできた糖が葉から枝へ通れなくなり、葉の液胞中で糖からアントシアニンがつくられるから。

    ☆リンゴが赤くなるのと同じだったとはね!!
    リンゴ好きな私としてはもう・・
    もうすぐ紅葉の時期だなあ。

  • 私達哺乳類には見えない紫外線の世界を、鳥や虫など他の動物は見ることができるそうです。
    (ただし最後まで読むと、もしかしたらマンドリルには見えるのかもしれない、とあります)

    紫外線が吸収されているか反射されているかがわかる特殊なカメラで動物や植物をみると、たくさんの発見があります!
    この本では綺麗な写真つきで紹介。
    それがどんな意味をもつか等解説していて
    本当に面白かったです!

    生き物たちが、こんなにいろんな工夫して生きているということ。
    素晴らしい。

    この本を読んだ後、墓のお花に水をやりに行ったら(私は墓の土のところに花を植えている)毛虫が遠くから一生懸命向かってきました。
    紫外線反射でお水を見つけたのかしら?
    なんていじらしいの。

    でも家のベランダに毛虫を見つけると、即行ぶっ殺す、非情な私でした。

    • 凪紗さん
      nejidonさん
      いつもありがとうございます。

      この本面白かったです。
      本当に。
      ポチをつけていただいた本については
      明日あ...
      nejidonさん
      いつもありがとうございます。

      この本面白かったです。
      本当に。
      ポチをつけていただいた本については
      明日あらためて。
      なぜなら今酔っているので
      可笑しなことをしそう。

      参考にしていただけるなら
      嬉しいです。

      nejidonさんはレビューを公開したり
      非公開したり、気分で変えているんですか?

      私も図書館派です。
      滅多に購入しなくて
      申し訳ないと思いつつ、でもこうしてレビュー書いていればいいかなって。

      自分の住む自治体以外でも
      たくさんカード作っています。
      だから時々たくさんの本がいっぺんにおしよせてきて大変な思いをして読んでいます。
      2019/08/23
    • nejidonさん
      nagisa-libraryさん、こんばんは(^^♪
      現在アルコール分何パーセントくらいでしょうか・笑
      そうですか、図書館派だったので...
      nagisa-libraryさん、こんばんは(^^♪
      現在アルコール分何パーセントくらいでしょうか・笑
      そうですか、図書館派だったのですね!
      では私も、何とかこの本を入手してみますね。
      我が町の図書館は子供向けの本は充実しているのですが、それ以外は若干寂しいのです。
      他の自治体の図書館カードは私も何枚かありますので、そちらをあたってみましょう。

      非公開にしていたのは、単純に疲れてしまったからです。
      誰も気にせず記録だけの日々にまい進していました。とても快適でした。
      ところが今年に入って21歳の子が亡くなってしまいまして(にゃんこです)。
      あまりに悲しくて私まで魂を持って行かれそうになりました。
      それで、少し忙しくしてみようと思い立ち、仕事も増やしブクログも公開することに。
      すみません、そんなわけです。楽しくもない話でして。
      また本棚を参考にさせていただきますね。
      2019/08/24
    • 凪紗さん
      nejidonさん
      そうですか。
      それはとても悲しい思いをされたことでしょう。

      悲しい思いをしたとき、その悲しさにじっくり浸るのも...
      nejidonさん
      そうですか。
      それはとても悲しい思いをされたことでしょう。

      悲しい思いをしたとき、その悲しさにじっくり浸るのもいいと思うし、
      やはり前向きに忙しくするのもいいことだと思います。
      いろいろなかたとの関わりのなかで、また良い本に出合えたら
      思いがけない発見になりますよね。
      2019/08/26
  • 専門書とするほどでもなく、かといって新書で扱うほど新しい知見が豊富というようなものでもなく・・紫外線カメラで写真を撮ったらこうでしたという本。
    もっと著者の解釈や考察などがないと、読み手の思考も広がらないのでは、と思う。

  • 分かり易さ優先、と筆者自ら書かれているが、その分浅くなってしまった。もう少しだけ深い内容を期待していたのでミスマッチなだけだ。

  • 正直に書く。人間の見えている世界だけで今世を見ることに飽きてきた中で手に取った著作だった。まさにその点ではピッタリだった。だが、この領域の研究者でも専門家でもないため、兎に角出せるところまで出し尽くそうとするようなライブラリー群にはお腹いっぱいになった。勿論今後どのような場面で本書がきっかけで新たな発見があるかはわからないのでバッサリいくつもりはないが、実直な研究者の著作と評価しておこう。

  • 人には見えない紫外線が見えて、紫外線が見えることでどんな風に世界が見えて、それが、生存戦略的にどんな意味があるかと。
    写真も多様。

    が。

    もちろんその紫外線映像が脳内でどんな風に認識れてるかは判らないのでモノクロ。紫外線の映像だけで、実際にはいわゆる可視光も見えてる筈だから、本当にこんな風に見えてるというわけではないことだけは確かだ。

    写真も綺麗なわけではないし。

  • あくまでも紫外線という側面からのもので、自分が期待したものとは違っていた。期待したのは、例えばシカの目にはオレンジが認識しづらい、だとか、虫の複眼ではどのように見えるか、という内容だったので、サラッと速読で終わらせた。

  • 雌雄で羽の色が違うモンシロチョウ、花びらの中央だけ色が違って蜜のありかを示すナノハナ…人には見えない紫外線の世界へようこそ!

全14件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

浅間茂

1950年,新潟県加茂市生まれ.1972年,山形大学理学部卒業.千葉県立高校の生物教師を経て,現在は千葉生態系研究所所長,NPO法人自然観察大学副学長,千葉県生物学会副会長,千葉県文化財保護審議会委員.生き物と環境の関係をメインテーマに水環境,クモの生態,ボルネオの生物,生物と紫外線の関わりについて観察・研究している.主著『カラー版 虫や鳥が見ている世界―紫外線写真が明かす生存戦略』(中公新書,2019),『フィールドガイド ボルネオ野生動物』(講談社ブルーバックス,2005),『校庭のクモ・ダニ・アブラムシ』(共著,全国農村教育協会,2001)ほか.

「2022年 『カラー版 クモの世界――糸をあやつる8本脚の狩人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

浅間茂の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×