満州事変はなぜ起きたのか (中公選書)

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著者 : 筒井清忠
  • 中央公論新社 (2015年8月6日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121100221

満州事変はなぜ起きたのか (中公選書)の感想・レビュー・書評

  • 天皇自らも言及したように、満州事変は日本の中国への侵略の第一歩とされているが、日本は最初から中国を侵略しようと思ったのかという疑問がぼくの頭にはずっとある。本書はたしかに満州事変はいけないことではあるが、日本がそこまで踏み込まざるをえなかったにはいろいろ理由があることを問題にする。1つは中国の老獪さである。それは中国がつねに列強から不平等な条約を突きつけられているということがあるが、日本の側に立てば、決めた条約を守らないということになる。もう一つは列強とりわけ米英の狡猾さで、それぞれが自分の利権に有利なように中国語と個別交渉をする。日本はある意味、お人好し、単純だったのである。だから、単純に武力で中国をなんとかできると考えたのではあるまいか。もう一つは日中両国の国民の覚醒である。それは中国では反日デモ、日貨排斥となっていくが、日本でも米騒動などで政府にたてついた国民(といっても富裕層ではあるが)が、軍といっしょになって中国を懲らしめろとなるのである。歴史は単純ではないと思い知った。ぼくは最初本書を書いたのは、まだ若い人かと思ったが、筒井さんはぼくと同世代の京都大学の教授。多くの業績と史実に基づいてこれだけのことを論じているのかと思うとよけい納得させられた。

  •  日露戦争後から満州事変までの通史。頁数も多くなく一般書だとは思うが、その割に個別の事実関係や先行研究の引用が多く、大きな流れがつかみにくい。一方で日本と満州のみならず中国全体や英米露との関係まで網羅しており、多角的な視点がある。
     その中で、最終章で挙げられた日本側の問題点6点は示唆に富む。うち多くが国際的イメージ悪化と国内の過度な大衆ナショナリズムの危険性、及びそれらの危機管理の失敗に関係しており、現在にも共通する教訓であろう。たとえば、現在の歴史問題に対する日本(人)(政府に限らない)の対応が日本のイメージを傷つけかねないことへの教訓にもなるのではないか。
    1)偽善ではあっても「民族自決」が広がる中で、日本(人)は「国際世論」及びそれを味方につけるという方策が欠けていたこと。
    2)国際連盟との関係。日本のイメージがよくない状況下で、満州事変のようなことが起こると世界の世論を一度に敵に回してしまいかねないという意識の希薄さ。
    3)大国としての責任。特に軍人に欠けていたのがずさんな謀略が国際的な印象を悪くすることへの責任の希薄さ。
    4)日本の大衆世論・ナショナリズムの盛り上がりが急進的軍人の背後に。同様の危機管理意識の薄さは国際世論を味方にする点でも立ち遅れていたことに共通。
    5)中堅幕僚・青年将校の独断専行は大正デモクラシー・大衆の影響力の拡大に既に端緒。
    6)日本外交・日中関係が行き詰まる前にワーストケースを避ける手立てを予め打っておく、言わば「堅実に行き詰まる」の失敗。

  • 複雑な国際関係の中で昭和初期の外交がなぜ敗北し「満洲事変」という軍部の暴発に至ったのかを日露戦後の大衆社会の誕生から整理して筋道を立てて説明している。本書は簡潔で的を射ていると思うが、それでも辛亥革命以後の中国情勢を理解するのは本当に難しい。理由の一つは当時の中国側資料にアクセスすることの困難さがあると思うが、これは現在の共産党政権が倒れでもしない限り、かなり難しいだろう。著者は慎重に当時の外地でのメディア資料なども用いて実証的に迫ろうとしている。日貨排斥運動などについて当時の国際世論から言っても中国側がかなり酷いことをしていたのがよくわかる(それが事変の正当化にはつながらないことは著者も言うとおり)。また米英の微妙な対中、対日スタンスについてもかなり踏み込んだ説明がなされており、勉強になった。

  • 日本はワシントン条約に忠実に行動したが、中国の不平等条約への反発は、英米との融和によって、日本の孤立化を導いた。中国の急進的な不平等条約解消運動は日本を追い詰める形となった。中国の強硬論に業を煮やしたイギリスの提案を日本がそれに応じるより早く、日本の内部の急進主義者が軍事行動を起こしてしまったのである。その間の様々な事件や出来事を簡潔に示していた。

  • 中国の老獪、欧米の野心、日本の熱狂−−息づまる日本史のドラマを明らかに。日露戦争後の日米関係緊張から説き始め、最新研究を基に満州事変史を捉え直した注目作

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満州事変はなぜ起きたのか (中公選書)の作品紹介

中国の老獪、欧米の野心、国民の熱狂-息づまるドラマを明らかに。最新研究をもとに満州事変への道をとらえ直す。

満州事変はなぜ起きたのか (中公選書)はこんな本です

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