声に出して読めないネット掲示板 (中公新書ラクレ 114)

著者 :
  • 中央公論新社
2.93
  • (3)
  • (2)
  • (18)
  • (4)
  • (3)
本棚登録 : 54
感想 : 14
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121501141

作品紹介・あらすじ

誹謗中傷罵詈雑言。殺伐とした国・日本の殺伐とした巨大匿名掲示板。インターネットに寄せられた膨大な声を"女子供文化評論家"の著者が読み解く。あなたは「ネット向き人間」か否か。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2003年、広島平和記念公園の折り鶴が放火されるという事件が起こり、その直後から「2ちゃんねらー」たちを中心にして、「しない善より、する偽善」という合言葉のもとに、折り鶴を折って広島に届けようというオフ会が実現されることになりました。本書はこの事件の顛末を追いながら、殺伐とした書き込みとその裏で芽生えつつある希望について語っています。

    著者の考えを思いっきり簡潔にまとめると、折り鶴オフ会を新しい「連帯」のかたちとして理解する試みだといえるように思います。ただ、著者がみずからの政治的なスタンスを前面に押し立てて議論を進めている点が、多少気になりました。「ヒロシマ」にかかわる以上、そうしたところにまで話がおよぶのは当然だと思われるのですが、手塚治虫以後の戦後マンガ史に反戦思想を読み取ろうとする議論が生煮えのまま提出されていたりして、読者は行き先のわからない議論に引っ張りまわされることになります。大塚英志の名前があげられているのでおそらく大塚の議論に依拠しているのでしょうが、本書を読んだだけではその内容があまり見えてきません。

    「2ちゃんねる」や「折り鶴オフ会」によって提起されている問題を、「右か左か」という切り口だけから読み解くのは、的外れとはいわないまでも、一面的であるような気がします。そのために、いまひとつ事件の核心に迫りきれていない本という印象をいだいてしまったのですが、それだけにかえって折り鶴オフ会という「祭り」の乱雑さというか、祝祭性みたいなものが強く印象づけられることになりました。

  • 37966

  • 著者は自らを「台詞にこだわるタイプ」とし、第2章では「折り鶴オフとは−台詞で読み解くインターネット」と題して2chを読み解いていくのだが、これはかなりおもしろかった。

    折り鶴オフというものは以前にどこかでそういうことがあったというのは読んだことがあるような気がするのだが、本書ではじめてその詳細を知った。なんというか実に2ch的だなあ、と。

    いや、決して悪い意味だけではない、とくに小さな発言がきっかけとなり、お互い見ず知らずの人間が触発され、折り鶴を折る過程で平和や反戦とは?
    という普段考えなかったことに戸惑いつつも「しない善よりする偽善」を合言葉にひと夏のムーブメントとして盛り上がり、やがてリアルワールドに帰着するという過程はドキュメントとしてみてもちょっと感動的ですらある。

    ただ、最後の最後は「でもやっぱり2chだなあ」という結末になってしまうのだが…(思えば2002年ワールドカップ放送に絡んで「江ノ島ゴミ拾いオフ」なるものが開催されたときもそうだった)。

    そこから第3章「『反戦思想』の消滅」、第4章「『殺伐』とした国・日本」と展開されていき、そこでの著者の主張もなかなかに興味深いのだが(ちょっと飛躍しすぎ?
    という点も無きにしも非ずだけど)、実はそれよりも興味深かったのが著者の「ブチ切れぶり」である。

    多少のユーモアを交えつつも論理的に展開していく文章が、突如ボルテージがあがりブチ切れ、日本を殺伐とした国にしてしまった支配権力層を滅多切りに罵倒する様は、読んでいて一種の爽快感さえ漂う(書物の中で「下司野郎」という活字を目にしたのは何年ぶりだろう?)。

    それは女性が権力(=往々にして男性)と対等に議論するためには「『強者』の座についている人間を愚弄するための言語を身につけること」が必要だという著者の考え方に基づくものだが、これにはなるほどと納得させられた。

    とはいえ誰かを罵倒する文章に爽快感を覚えるというのは、一歩間違うと2ch内の罵倒の嵐を「むしろ心地よく感じる」ようなところにも繋がりかねないので注意しないといけないが…。

    本書の主張とは関係ないが、あちこちにつけられている注釈の内容が著者自身も認めるところであるオタクっぽくてなかなか笑えるのが一服の清涼剤かな(笑)。

  • 著者と若者の年の違いが目立ち、実際どこへ向かっているのかがわかりにくい。2ちゃんねるの折鶴オフを取り上げ社会と政治観をぶった切ってるつもりだろうが、著者が上世代だということを振り回しすぎてぶった切りになっていない。この著者は、古いと言われようと、鶴を全部自分で折るのだろう。

  • 2ちゃんねるの巨大匿名掲示板。
    ほとんど見ることもなく、読むこともなく過ごしてきたが少し驚いた。
    通常は一言述べればそこに責任が生じるものだが、匿名なので言い放題なのか・・。
    一言の責任は重いはずだが・・。
    本に書かれていた最後の一言、
    「最後まで希望を捨てちゃいかん・・あきらめたらそこで試合終了だよ」
    そう、その通りだ。

  • [ 内容 ]
    誹謗中傷罵詈雑言。
    殺伐とした国・日本の殺伐とした巨大匿名掲示板。
    インターネットに寄せられた膨大な声を“女子供文化評論家”の著者が読み解く。
    あなたは「ネット向き人間」か否か。

    [ 目次 ]
    1章 「2ちゃんねる的なるもの」とは何か(あなたは「ネット向き人間」か否か;燃やすに事欠いて広島平和記念公園の折り鶴かよ!?)
    2章 折り鶴オフとは―台詞で読み解くインターネット(言い出しっぺ;「どうせ無理だから」まず行動 ほか)
    3章 「反戦思想」の消滅(「過ちは繰り返しません」;大衆娯楽の「光」と「影」 ほか)
    4章 「殺伐」とした国・日本(2ちゃんねるの悪名;「お金」と「誠実さ」の距離 ほか)
    終章 大人がすべきこと(ネットだからできること;しない善よりする偽善 ほか)

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 2011.3.12

  • 2ちゃんねるにふみこめなかっただけに興味深い。折り鶴オフ、こんな風にすすんでいたんだと、関心する部分があった。
    エージェント774。目にしたことはあったが、名無しを表していたとは。。。

  • わたしの言いたい(が、上手くことばにできない)ことをすべて言ってくれた気がする。ネットが殺伐としているわけではなく、世の中が殺伐としているのだ。(2009.12.10)

  • 匿名掲示板の文字の向こうにだって、必ず誰かの存在がある。
    善か悪かの二極では測れないのだ。

全14件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1963年、神戸市生まれ。いさましいチビの女子供文化評論家、食べテツ評論家。著書に『宝塚、おかわり!』『宝塚を食べる!』『宝塚バカ一代』(いずれも青弓社)、『食べテツの女』(朝日新聞出版)、『ホントの宝塚がわかる本』『宝塚・スターの花園』(ともに廣済堂出版)、『手塚漫画のここちよさ』(光栄)、『若者はなぜ怒らなくなったのか』『声に出して読めないネット掲示板』『なぜフェミニズムは没落したのか』(いずれも中央公論新社)、『バリバリのハト派』(晶文社)、『キャラクターバカ一代』(バジリコ)など多数。

「2012年 『宝塚まるかじり!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

荷宮和子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×