美しい都市・醜い都市―現代景観論 (中公新書ラクレ)

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著者 : 五十嵐太郎
  • 中央公論新社 (2006年10月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121502285

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美しい都市・醜い都市―現代景観論 (中公新書ラクレ)の感想・レビュー・書評

  • 五十嵐太郎氏は『10+1』などの雑誌を開くと名前を非常によく見かける,建築分野の人気作家(?)。なので,私も彼の文章を一度や二度読んだことがあるのですが,あまり惹かれるタイプではなかったので,著書は本書が初めて。というのも,大学の講義の小レポートの課題として選出したので読んだ次第。いかにもなタイトルに読む気がしませんが,まあ読まず嫌いもよくありません。この中公新書ラクレというシリーズも初めて。

    第一部 21世紀の景観論
     1章 醜い景観狩り
     2章 景観を笑う
     3章 日本橋上の首都高速移設を疑う
     4章 渋谷のドブ川とソウルの清渓川
     5章 テーマパーク化する都市
     6章 東京の色彩と広告
    第二部 計画とユートピア
     7章 アジア・メガロポリスの建設と破壊――香港・上海・深圳
     8章 押井守の未来都市
     9章 幕張はいかにつくられたか
     10章 管理社会が生み出す”都市伝説”――ディズニーランド・筑波・都庁舎
     11章 ユートピアとしての平壌
     12章 過防備都市・再論

    案の定というか,本書は『10+1』に掲載された文章を多く含むもので,書き下ろしではなかった。確かに,第一部はかなり一貫して日本の現代都市景観を論じているが,第二部はバラバラな印象で,香港,上海,深圳,平壌といったアジアの諸都市の訪問記あり,押井 守のアニメーションの話ありな感じでまとまりはない。
    しかし,思ったよりは頭の固い人間ではないことが分かった。といっても,彼の関心は常に具体的なものに向けられていて,私が好むような抽象論や認識論に関する議論はほとんどなかった。といっても,3章の日本橋の話や9章の幕張の話は,新書という決して文字数が多くない著書の中ではしっかりとした情報に基づいて分かりやすく説明されており,学ぶことは多かった。本書は基本的に景観に美しい・醜いの絶対的価値軸は存在しないという立場に立っている。でも,実のところは完全なる相対主義ではなく,建築家として教育を受けてきたものとしてのかなり強固な価値軸があることも確かである。

  • 以前、五十嵐太郎氏の過防備都市を読んで、「集まって住むことの窮屈さと安心感のバランスが重要」というメッセージを受け取りました。

    今回受け取ったメッセージは、この巻末の一文がすべてを語っているように感じました。

    口当たりのいい復古的な景観の言説に流されず、現実の多様さをそれぞれが深く考えるきっかけになれば、幸いである。

    私は「自らのライフスタイルを度外視して、冷凍保存のような景観を生み出すガイドラインなどつくるべきではない」と思っています。しかし一方で、本書に出てくる普通のまちの「笑えるようなだらしない景観」は、なにか拠り所を求めている気がしてなりません。例えば、先日紹介したまちなみ住宅のススメはひとつの拠り所です。ひとつの建築や建築群がしっかりとした意志を持ってライフスタイルに呼応しながら設計されたとき、そのまちは生まれ変わるきっかけをつかむのではないでしょうか。

    景観を語るに、私のベースのイメージはいまだに陰影礼讃のこの言葉です。

    美と云うものは常に生活の実際から発達するもので、

    暗い部屋に住むことを余儀なくされたわれわれの先祖は、

    いつしか陰翳のうちに美を発見し、

    やがては美の目的に添うように陰翳を利用するに至った。

    (谷崎潤一郎)

    生活から逸脱した「美」は劇場的で、刺激を与えてくれる要素ではあるとは思いますが、直輸入した瞬間から陳腐化してしまう宿命にあると感じています。

    現実は多様で、その多様性が明日への活力へつながっていくのであり、その生活の実際の中であるべき景観を論じるべきです。色や高さや高速道路といった極論だけがクローズアップされるような状況に流されて、思考停止するような世の中だけにはなってほしくないものです。

  • 日本橋の上に架かる首都高速の地下化についての話が載っていたので読んでみた。日本橋が西洋のコピー橋である一方で、首都高速は世界にも稀に見る複雑な道路建築として評価していて、こういう考え方もあるのかと思った。また、全体を通して、世の中の風景を美しいもの、醜いものの2つに分けて、片方を淘汰するようなやり方の危険性が書かれている。関連図書としては、「ニッポン景観論」がおすすめ。

  • おもったより面白くなかった。

  • 都市の景観論について諸々の話題を書き連ねた本。日本橋の高速撤去の話題(ちょっと過去)、アジア各都市の都市デザイン、幕張の開発経緯、街の監視カメラ社会など、一見バラバラなテーマは無関係に章立てられているが、いずれも現代における都市景観論の視点での著述。一部には強いメッセージも感じられるが、概ね著者自身の心のうちを綴ったエッセイのような感じ。最後のほうに書かれた平壌の都市デザインについての見解が新鮮で面白かった。

  • 2014.06.17
    パラ読。

  • 人は生まれた場所や思い出に風景の美しさを見出すのでしょうか。

    だから私は広告やネオンで囲まれたまちや、ハウスメーカーが量産した欧米風が並ぶ住宅街にも美と愛おしさを感じることができるのかもしれない。

  • 美しい景観とは、醜い景観とはどのようなものか。世の中で言われる「美しい街」にも徹底的に疑問を投げかけ、なにが美しく、なにが醜いか考える。

    第11章ユートピアとしての平壌で、平壌を訪れた筆者は「ここは景観論者にとってのユートピアではないかと思った」と語る。

    「建築と都市のデザインは明らかにコントロールされている」
    「景観論者が嫌う諸要素が、ことごとく排除されているのだ」

    とても衝撃的。

  • レポートの題材として手にとった本書。

    個人的には日本橋の上を走る首都高速の景観がどのように考えられているかを知りたかった。
    そもそも美的感覚は極めて主観的なものである。
    その「美しさ」をまち・景観に当てはめる際には相当な注意を払う必要がある。
    他の書籍の表現を借りるのであれば、
    ”景観とはある一つの建造物をさしたものでもなければ、単に視覚的な印象に立脚するものでもなく、周辺の諸環境との調和を第一義的に考える必要がある”
    とのことである。

    その点を鑑みれば、
    欧米の都市は○○の点がよく、日本にはかけているので導入すべきだ的な物言いには疑問を感じる。
    単なる無い物ねだりである。
    いくらパリのシャンゼリゼ通りが美しいからといって、東京で同じ物を求めるのは不可能である。
    景観の個別性の強さを考えた上で、議論する必要がある、
    とまとまらないながらにも感じました。

  • 面白くなかった。

  •  建築学科の1年生に美しい景観の写真をとってこさせると、はりぼての結婚式場とか、カミソリ3階建戸建てをとってくる話が始まる。

     それ自体、びっくりするが、僕自身はきちんとした建築の教育もうけていないのに、建築学科1年生がとってきた写真は全部×だなと思う。それも自分でなぜかなと思う。

     その一方で、渋谷の雑踏とか、今はちょっと駅前がきれいになったが秋葉原の問屋街とか、香港とか上海の旧市街は好きだし、なんか圧倒されるアジアの息吹を感じる。それを景観上だめという伊藤滋先生の指摘もついていけない。

     五十嵐先生は、平壌までいって徹底的に統制のとれた都市計画、建築を説明して、これがいい景観かといわれると、先生同様納得できない。

     でも自分で大事にしたいという景観というポジティブリストはある。三陸の山並みや海岸の自然、鎮守の森、そういうのを緒雑な造成計画などでこわんさないでほしいこと。また、上村さんが指摘した保育園の隣の高層マンションなど。

     概して、自然については自分も断固とした判断ができるが、建築物の景観については、自分も悩むし、自己中心的になってはいけないなと思う。

     勉強になりました。

  • (111017)
    美しいか否かという基準はどんな理由をつけようか人間の主観でしかない。それ故に生じているであろう著者の発言の矛盾は客観的に受け止めてあげるしかない。
    それよりも、本書の有用性は、多くの事例や意見(偏りはあるが)を引用することにより、美しさとは何かという問いに対する答えを出すための手助けをしてくれるところにある。

  • 首都高の道路は本当に醜いのか?、上海に未来都市をイメージするように、日本橋にかかる首都高こそ東京のモダニズムを体現していたと100年後の人々は振り返るかもしれないという視点は新鮮だった。

  • 色彩、押井守、北朝鮮の話がおもしろかった。

    赤・白(日本的)の秋葉原と青(外国的)の渋谷。
    こういう切り口の景観論もあるのかー

    中華ゴシック論。

    過剰防備について。
    資本主義・自由経済では監視カメラやセキュリティによって、
    社会主義・共産主義では主体思想を顕現させる装置(モニュメントや計画的都市造営)によって、
    実現されるということ。


    等々…門漢外なのでおもしろい視点がいっぱいあった。

  • [ 内容 ]
    日本橋の首都高移設や景観法制定など、「美しい国」をつくる動きが始まったが、「美」とは何か?
    新世代の論客が、平壌取材からアニメの中の未来都市まで、縦横無尽に検証する。
    写真多数。

    [ 目次 ]
    第1部 二十一世紀の景観論(醜い景観狩り 景観を笑う 日本橋上の首都高速移設を疑う 渋谷のドブ川とソウルの清渓川 テーマパーク化する都市 東京の色彩と広告)
    第2部 計画とユートピア(アジア・メガロポリスの建設と破壊―香港・上海・深〓(せん) 押井守の未来都市 幕張はいかにつくられたか 管理空間が生みだす“都市伝説”―ディズニーランド・筑波・都庁舎 ユートピアとしての平壌 過防備都市・再論)

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 視点が良いと思う。確かに景観論争は、独裁国家の様相を帯びているし、善と悪に二分して悪を潰すことを正当化している。
    途中、中だるみするが、最後までしっかりと書かれていて好感を持った。五十嵐太郎さんは目の付けどころが良い。今まで見過ごされてきたようなことを意図的に論じるので読者の中でも新たな発見がある。実に刺激的な人だ。他の著作全て読んでみようかと思えるほどの出来。
    (『16章の・・・』は微妙だったが。)

  • 僕は五十嵐太郎を誤解していたのかもしれない。
    日本橋上の高速道路を擁護したり、なにやら難しい言葉で都市を語ったりするところが、あまり好きではなかった。
    しかし、この本を読むと、ただ奇をてらって言っているのではなく、そういう考えの人もこの世の中にはいるということを伝えたいだけなのかもしれないと感じた。
    中島義道とは180°異なるアプローチで。
    そして、基本的な考え方は同じなんだなとも感じた。

    ただ、そのロジックが映画だったり、建築家の感想だったり、個人をベースに組み立てられているのは共感できないところである。
    景観や町並みはみんなのものであって、決して映画監督が好む映画のセットを作るために考えるわけではないのだから。

    以上、個人的な感想でした。

  • 現代の情報化時代における都市の知覚と評価のあり方について述べた本。
    芦原義信に代表される、ヨーロッパ都市計画への憧憬を掲げたこれまでの都市の捉え方とは異なる立ち位置をとっている。
    これまで美しさをよしとしてきた社会に対し、管理されることでなりたつ「美しさ」に、またそもそも主観によって判断される「美しさ」の定義に疑問を投げかけている。

    一元的な解釈ではなく、多方向・多視点的に都市の景観を評価することで、今までとは違う価値感を創造できる可能性があると指摘するような主張には、個人的に共感。

    主張が強い一貫性を持っていて、やや言い過ぎ、ぐらいの表現であるがそのため専門外の一般の人でもわかりやすいと思う。

  • ざっくりしか読んでないけど、
    建築の人ってこういう感じだよねぇって
    改めて実感。
    いろんな都市の事例が出てきているのが
    興味深かった。
    特に、幕張と平壌。

  • すごくシンプルかつニュートラルな考え方で、読んでいて冷や冷やしなかった。
    景観論にきっと答えなんて無いんだよね。
    平壌の都市計画の引用の部分が特に面白かったな。
    この人の本をもっと読みたい。

  • 美しい街、日本らしいor東京らしい景観とはなにか?世に跋扈する安易な景観論をばっさり。

  • イデオロギー・経済・メディア論と深くつながりを持つ建築の奥深さを感じる一冊。

  • 都市が気になる。
    私はきちんと整備された、生活観のない都市を美しいとかんじてしまうが、そんな簡単なものではないんだ。下北沢の道路を広くするから、街もちょっと変わってしまうような話を前聞いたけど、ああいうカルチャーで出来上がっているような街を残していくことも大切だよね。
    んー都市を考えるのは、深くておもしろい。

  • 都市計画シリーズ!

  • 新進気鋭の建築学者・都市学者の本。
    一番読みやすいのでお薦め。
    というか作者をお薦めしたい。

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美しい都市・醜い都市―現代景観論 (中公新書ラクレ)の作品紹介

日本橋の首都高移設や景観法制定など、「美しい国」をつくる動きが始まったが、「美」とは何か?新世代の論客が、平壌取材からアニメの中の未来都市まで、縦横無尽に検証する。写真多数。

美しい都市・醜い都市―現代景観論 (中公新書ラクレ)はこんな本です

美しい都市・醜い都市―現代景観論 (中公新書ラクレ)のKindle版

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