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- Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121502360
感想・レビュー・書評
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タイトルを見た瞬間に“胸キュン”の一冊。森羅万象を分類し記録・保存するという、人間の叡智とそれに費やされたであろう膨大な時間と体力の結晶=博物学を一冊の新書で簡単に紹介しているとは、著者の着眼点にただ脱帽。知的好奇心をくすぐりまくる刺激的な一冊。この本を読んでいて改めて感じさせられたのは、「編集者の客観性問題」ともいえるものだ。百科全書というと一つ一つの事物を列記し、それに“客観的な”説明を加えてあるものというのがおよそイメージされるところだが、知をすべて記述しようとする試み以前にも、洋の東西を問わず物語や日記のような私的(主観的)な記述の中にも、世にも珍しいとされる動植物や鉱物などが記述されており、それらの集積もまた当時の人々(当然読み手は限られていたが)にとって百科事典的な意味合いをもっていたことである。また逆に、“客観性”を保った百科全書であっても、その構成を見ると、編者の生きた当時の、世界の分類のあり方(世界観)の反映が見て取れ、編集権を持つ個人の私的判断結果の(それは時に挑戦的な)記録でもあるということだ。それらをもって客観性が担保されていない、完成度が低いと切り捨てられるのは、あまりにも「もったいない」。テクストというものの有難みがわかる好著だ。