日本人だからうつになる (中公新書ラクレ 277)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121502773

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  • 「日本人だからうつになる」
    頑張ることが当たり前であり、周りに迷惑を掛けない為に必要以上に自分に付加を掛け、責任を背負い込んでしまう傾向が強い日本人。そんな日本人にとってうつは最悪の相性を持つのかもしれない。うつは日本人をどんどん傷つけていく・・・。しかし、うつだけが日本人を苦しめるのではない。うつになった人を苦しめるのはうつに抵抗を持ち続ける社会や企業であり、そしてうつから回復しかけているうつ患者その人である。


    著者・上野氏はうつでの闘病生活を続けてきた人です。うつに関する上野氏の意見は日本人という大枠の抽象的な視点からうつ患者への特定的で具体的な視点まで捉えているので、私は「ふんふん」と頷きながら読んでいました。


    私が考えるこの本の良い所は「上野氏がうつになった人に対してしっかり意見を言っていること、それも言いにくいことを言っていること」です。例えば、上野氏が連載しているコラムでの話ですが、うつ患者は負け犬という主旨の発言をしています。この発言理由は読んで頂ければ非常に納得出来るものです。


    この発言の対象者は「うつから回復する段階に到達しながらも社会へ戻ることを諦めかけている患者」です。この一連の上野氏の意見には、うつだからという理由で社会に目を背け続けていては、うつと真剣に向き合い戦っている患者に対して失礼であり、回復段階に到達した患者は社会に復帰して、社会のうつへの抵抗感と向き合って欲しいという思いがあると思います。


    しかし、社会に戻ることを諦めることには、当人に働く意欲が消えかけているということと社会にある強い抵抗感という2つの問題があります。前者に対して上野氏は先のように考えていると思いますが、彼がとても懸念している問題は後者です。


    この本で登場するうつの患者の経験を読むと、「これは本当か」と思ってしまう社会や企業、そして職場の人々のうつへの差別意識や排他意識があります。


    例えば、これはうつを克服し社会復帰した人への対応で挙がっていますが、彼らが社会復帰した場合(多くは仕事場に戻ることになる)、「本当にうつだったの?休みたかっただけじゃないの?」などと言われることもあるそうです・・・。


    またうつにかかり仕事を休むことになった際には、「気持ちが弱いんじゃないか」と言われ、休職願いを出して休んでいると「まだ治らないのか」と電話をかけられ、時間が掛かると自主退職を迫られる・・・。



    うつにおいては完治することと同じくらいに社会復帰することが難しいですが、私は一人の社会の人間として、この後者の問題に真剣に向き合うべきだと感じました。勿論、私一人の力どうこうでは難しい問題ではありますが、少なくとも自分の認識を再確認することは出来ますし、今後さらに知識を蓄えることが出来ます。


    上野氏はうつを経験したからこそ、声を挙げるべきだと考えていることが強く分かります。だからこそ彼は2つの問題に対して、この本で意見を述べていますし、「負け犬」発言も使用しています。


    私はこの本を読み、日本人としてのうつを考えるようになりました。

  • 日本人は「勤勉」「真面目」「几帳面」であり、非常に頑張る国民性である。「うつ」になりやすい国民性があり、またそれを認めてもらえないような社会性もある。昔と比べると最近はずいぶんと「うつ」に対する捉え方も変わってきたが・・。
    「うつ」になったという人の話を読んでいると「人事ではないな」というのが正直な感想である。

  • サービス残業して頑張ってるのに給料はそんなに上がらなかったり上司に怒られたり、そりゃあ、欝になるよ。法律を変えてサービス残業を無くしたらいい。特に東京に住んでると満員電車だし欝になるのもわかるわ。

  • 2008/6
    うつについて分かりやすく書かれているが、この本に書かれている内容の是非だけでなく、多くの人が簡単に結論めいたものを書きすぎる現状に不安を感じる。社会的に多くの誤解がることも否めないが、それでは何が正解なのか、そんな簡単にでるものでは無いはずなのに。

  • ウツは風土病というのは成る程だ。

    個人主義の発達した国のウツと世間に合わせることを美徳とする国とでは対処の仕方に差があるのも道理だし。

  • うつの理解を深めようと思い読みました。
    うつになる人はどんどん増えていくのに、企業はまだまだ対応しきれていない。
    うつって何が原因なんだろうとよく考えるようになりました。

  • うつについて知りたくて読書。

    著者本人もうつの治療中とのこと。うつについて強烈なメッセージを発信している。エピローグの話は本当に切なくなる。この種の自殺を防ぐことは個々の企業だけではなく、国がもっとしっかりとした対策を講じなければいけないと思う。

    うつで苦しんでいる人がいる一方で、自称うつという人も少なからずいる。うつだというと同情してもらえる、優しくしてもらえる、許してもらえると考えているのだろうか。都合に応じて自称うつとなり、言い訳に利用している人もいる。これらの人たちがうつへの理解促進を阻害している要因にもなっているのではなかろうか。

    日本のメンタルヘルス対策はまだまだ始まったばかりだとい印象だ。コミュニケーションを密にし、社会性を持ち、相談できる人がいる環境が重要だといえる。

    著者は新型うつについてどのように考えているのか見解を知りたい。日本は今後、若年層を中心にこの新型うつと呼ばれる種類が増えていくように思われる。一人っ子、教育、家庭環境、デフレ時代などが少なからず影響を与えていると思う。日本の人育ては大変な時代に突入したのかもしれない。

    本書はロサンゼルスのブックオフで購入しています。

    読書時間:約25分

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