言葉の力 -   「作家の視点」で国をつくる (中公新書ラクレ 389)

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  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121503893

作品紹介・あらすじ

国難の今こそ、政・官の言葉を検証し、自ら思想を鍛え、ヴィジョンを示せ。東京都が進める「言語力再生」の目的とメソッドを紹介。グローバル時代を生き抜くコミュニケーション力とは?グローバル基準の言語技術、俳句・短歌、ツイッター等のソーシャル・メディアを検証。

感想・レビュー・書評

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  • 2013年2冊目。

    再読だったが、改めて、「こんな教育受けてみたかった!」と思う事例が満載。
    世界基準に置いていかれていることを強く感じる。
    今からでは遅くはないと、言葉の力の強化に努めたい。
    どの仕事であれ「言葉の力」が必須であることが分かった以上、
    あらゆる仕事に就いてゆく子ども達を育てる教育者こそ、
    本書を読みとおして欲しい。
    ====================

    2011年58冊目。(2011年12月15日)


    「感性とはすなわち論理なのだ(p.140)」

    直感的に物事を捉える背景には、それまでの人生経験や歴史の中にリンクする部分がある。
    過去のどのエピソードや言葉にリンクしているか、
    そのエピソードや言葉と、直感的に捉えた「今」の間にある関係性はどんなものか、
    それをきちんと論理的な言語に落とし込めてこその「感性」だと感じた。

    全体感の中の「今」を捉える力は大事。
    「今」という点を、ただ点のまま捉えるのでは不十分。
    歴史感という縦軸があれば、線の中の点として位置を得られるし、
    そこにグローバルという横軸も加われば、平面の中で座標を得られる。
    そうやって点を配置するための敷地を設ける事を自分はまだまだ疎かにしているし、
    知性を感じる人はこういう平面をしっかり持っている気がする。

  • 論理的思考力、言語表現能力の重要性については、他の類書でも上に挙げた力の鍛え方の紹介、あるいは日本人の実力の貧弱さが指摘されている。

    しかし本書は、それらの力は、芸術鑑賞の場面でも必要だと言っている。私が驚いたのは、その具体的方法である。
    「何人いるのか」「どんな色が使われているのか」「人物は何をしているのか」と徹底的に分析する。絵画の説明をするのに自分の何となく感じた感想は、何も述べていないのと同じことなのだと気付かされた。

    私は本書を読んで、まず「自分とは何か?」と説明できるようになりたい。他者と時間的、空間的、歴史的にどのような共通点、相違点があるのか、それを分析するには「読書が必要である」と痛切に感じた。

    なぜなら読書とは、文字を読む作業だけでなく、他者に触れ自己と他者との共通点や相違点を確認していくそれでもあるからである。
    また、今の状況を考える場合にも、「歴史的に見てどうなのか」と多量の読書経験があれば、それだけ判断材料が増えることにもなり、読書は有効である。

    久々に身の引き締まる思いがした。国民一人一人の言語技術を向上させるためには、まず自分が言語技術の修練を実行する必要がある。

  • 最近プレゼンなどにおいて質問の要点を理解し、的確に答えることや、そもそも準備不足であたふたしてしまって満足な回答ができないなど、自分に対して非常に危機感を持っていた。猪瀬さんのTwitterでも読者の方からの反応など、ぜひ読んでみたいと思っていた一冊。
    ノウハウ本ではなく、「読者それぞれが原点に振りかえり、しっかりと勉強せい。勉強のツボはこんなところ」ということを説いていただいた。
    さっそく<言葉の力>再生プロジェクトの報告書を読むとともに、本書で紹介されたいくつかの書籍も読むことにした。
    急には「力」は伸びないかもしれないが、読書や考えることを通して、少しずつ言葉の力を身につけていきたい。

  • 作家であり副都知事の猪瀬さんの本。

    いま、様々な国難を迎える日本において、日本は国民国家であるのだから、国民一人一人が個の先に日本の一部を担っている意識が問われている。
    その上で、個々の国民は意思を持つ必要があり、その意思を表明し、遂行するには他人と相互理解が可能な「言葉の力」が必要。

    「言葉の力」は言語技術を学ぶこと、実際に本を読むこと、その上でヴィジョンを描き、リアルにつなげることが重要。
    リアルにつながらない場合は、批評にすぎない。

    実際に「言葉の力」を駆使し、官僚と対峙しているだけにその気迫と説得力を感じました。

  • 以下、メモ。

    ・読書は重要。若い頃に多読すること。活用可能なストックが必要。そうして、ポイントはハウツーものばっかりじゃなくって、きちんと古典を読むことと、(本の中には書かれていなかったけど)読み捨てにしないこと、かな。

    ・おしゃべりである必要はない。小泉さんの例。余白部分にも語らせる。結論からね。ただ、このあたりは「キャラクターの問題」もあるかな、と。例えば石原さんが都知事になった時に「これから考えます」と言っていたけど、もし同時期に首相だった小渕さんが同じこと言ったら叩かれちゃってたと思う。小泉さんだからこそ、バシッと短いワンフレーズ・ポリティクスが可能だったのでは?とも考える。

    ・言葉のストックをためると同時に、より重要なのは「なぜ」と自分の頭で考えて、それをきちんと表現する力を養うこと。

    ・外国における「言葉の技術」教育が行われており、これが、世界スタンダード。だから右教育が行われていない日本で育った日本人が外に出ていくのにちょっと抵抗があったりするんだろうな。TOEFLのスピーキングとライティングはまさに、「言葉の技術」教育のスタンダードで作成されたもの。ある命題に対して、自分の意見を論理的に述べる。英語力よりも、自分で考えること、それを論理的に説明すること、が重要なキーポイント。

    ・読書することは、他者の考えを聞くこと。ある意味コミュニケーションの一つ。

  • 先に読んだ「突破する力」は、どちらかというと平易な啓発書的な感もあった、この「言葉の力」の考察はとても深く、興味深く読むことができた。

    特に、実際に官僚と対峙している氏が語る、官僚主権国家という実情は説得力がある。そして、官僚が「昨日と今日と明日が同じであることを求める」という分析は、まさにその通り!と膝を打ちたくなった。

    日本は、ずっとアメリカに「追従」することを「自由」という曖昧なフレーズで正当化してきていたが、3/11の大震災によって、奇しくもこの体質の脆弱性が露呈した。
    自ら考え道を切り開き、進んでいくには、必ず失敗もつきまとう。それを「国」が恐れることなく、突き進んでいって欲しい。
    そして、メディアはその卓越した技術を些末な揚げ足取りに使うのではなく、「国」を後方支援する屋台骨としてバックアップして欲しい。

    本著を通して、氏はこのような事を伝えたかったのではないだろうか。
    少なくとも、自分はそう感じた。

  • 恥ずかしながら、猪瀬さんが作家だったことを初めて知りました。

  • 言葉の力を感じる内容。
    著者がタイトルどおり自分の言葉で表現し伝えている本

  • 言語技術の大切さについて平明に述べられている。海外ではキチンと教える技術で、批評、分析に関する技術みたいなものかな。そういうところから入っていって副題にあるように作家の視点で国をつくるっていう。活字離れについてや、諸々良識に基づいた話。言語技術に関しては面白かったので更にもう少し触れてみようかなと思う。いろいろ為になるし、さらに深めようと思う良書。

  • 猪瀬直樹氏の著書です。
    「言語技術」の重要さ、鍛え方を現在の日本で実践できる事例を含め論じています。

    猪瀬氏自身の実務能力は、道路公団改革、東京副都知事、東京都知事の数々の業績で証明されています。
    その猪瀬氏が重要と説く「言語能力」を身につけることは有用であると考えられます。
    まずは本を読むということですね。

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著者プロフィール

猪瀬直樹
一九四六年長野県生まれ。作家。八七年『ミカドの肖像』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。九六年『日本国の研究』で文藝春秋読者賞受賞。東京大学客員教授、東京工業大学特任教授を歴任。二〇〇二年、小泉首相より道路公団民営化委員に任命される。〇七年、東京都副知事に任命される。一二年、東京都知事に就任。一三年、辞任。一五年、大阪府・市特別顧問就任。主な著書に『天皇の影法師』『昭和16年夏の敗戦』『黒船の世紀』『ペルソナ 三島由紀夫伝』『ピカレスク 太宰治伝』のほか、『日本の近代 猪瀬直樹著作集』(全一二巻、電子版全一六巻)がある。近著に『日本国・不安の研究』『昭和23年冬の暗号』など。二〇二二年から参議院議員。

「2023年 『太陽の男 石原慎太郎伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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