- Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121504357
感想・レビュー・書評
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筆順の扱われ方の歴史などは必要な知識ではないと考える向きもあるだろう。だが筆順を知っているだけでは、その必然性を理解できなのではないか。
テストの時だけ教えられた筆順で普段は自己流という、裏表のある子どもたちの態度は、機械的に筆順だけを教え、「こういう歴史と理由があって、だから正しい筆順が必要なのだ」という理解を与えなかったからだ。
そういうことの理解があるとないとでは、正しい筆順の理解や文字の美しさだけではなく、人格形成にも影響するのではないか。
・楷書筆順の基準は行書の字形を安定させる上でも必要である
・姿勢や筆記具の持ち方を正しくしてこそ
・一度身についた筆順を修正するのは困難である
など、4章「筆順はこのように教えよう」は、これから筆順を学び直す大人にも必要なポイントが多い。何度も確認するのが良いと思う。
筆順とは何か、なぜそれを考えねばならないか。大人だからこそ知っておきたい。 -
著者はタレント…ではもちろんなくて,書写教育の専門家(仁≠人)。真面目な,書き順の話。 小学校の先生に是非とも読んでもらいたい。
書き順の歴史・意義,そして「正しい書き順」が決して絶対的なものでないこと。Twitterでは掛算順序問題がよく話題になるけれど,書き順の教え方も教条的に過ぎることはないだろうか?
筆順って一応基準(『筆順指導の手びき』S.33文部省)が定められているが,強制的なものではない。書きやすさ,整えやすさ,読みやすさ,覚えやすさといった機能性,漢字の成り立ち(字源),行書や草書の運筆など,筆順根拠にはいくつか異なるものが存在し,歴史的にも揺れている。
そもそも明治の近代化で,毛筆による草書・行書から,硬筆による楷書に移行,点画間の連続性が失われたことが,筆順という概念を必要としたのであった。本書でたどる筆順の歴史を見ると,唯一の「正しい筆順」というのは幻想にすぎないことがわかる。
とはいっても,どんな筆順でもOKというわけではない。厖大な数の漢字を覚え,的確に身につけるために,筆順について一定の基準を示しておくことは不可欠だ。
しかし漢字教育を受ける子供たちに,筆順の意義はきちんと伝わっていない。なぜ書き順を覚えないといけないか問うと,「テストに出るから」という回答がちらほら。筆順テストをぎちぎちやることは,多大な逆効果を生むだろう。第四章で,著者は筆順指導の工夫についても触れている。