徹底検証 韓国論の通説・俗説 日韓対立の感情vs.論理 (中公新書ラクレ 439)
- 中央公論新社 (2012年12月7日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121504395
作品紹介・あらすじ
竹島(独島)、天皇、慰安婦、歴史認識、政権交替…国交正常化以来、まったく新しい局面を迎えた日韓関係。その行く末は?韓国は本当に怒っているのか?歴史と現状に通じた研究者とジャーナリストが、ネットやマスメディアに流布する通説・俗説を検証し、正しい見方を模索する。
感想・レビュー・書評
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日韓どちらにも肩入れしない、俯瞰的な視点での論議。「官民一体の反日国家で、わけわからん人たち」という誤認の正体を、政治・経済・近代史の側面から解明していく。これ一冊で日韓問題を語り尽くせているとは思えないが、少なくとも、愛国者(レイシスト)の垂れ流す「ネットde真実」な妄言の、百万倍アテになることは間違いない。
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韓国における日本のプレゼンスは、グローバル化に伴い、低下する一方である。それにともない「反日」カードは、有効性を失いつつある。日本が何度謝罪しても韓国が「不十分」と言い続けるのは、日本が「法」と「倫理」を分けて考えるのに対して、韓国が「法」と「倫理」を一体として考えていることに起因する。つまり、「倫理的にはよくなかったけど、当時の法律的には問題ない」という態度では韓国人は納得しない。同様の構図は慰安婦問題でも見られる。日韓の請求権は「法的に解決済み」という立場を日本は崩せないが、韓国は法律を後付けしても「間違ったことは正すべき」なのだから、両者は平行線。今までは〈両国の統治エリートが「うやむやにする」と合意し〉てきた問題が、情報化が進んでコントロールがきかなくなってきた。一方、日本の側でも、韓国との関係の重要性は相対的に下がってきた。今後は経済パートナーというより、米国も加えた三国の安全保障パートナーという側面で考えるべきだろう。
というのが本書の趣旨。日韓の問題は「解決する」という希望を持つべきではなく、「問題でありつづける」としたうえで、協力できるところはする、という態度でよしとするべきではと感じた。 -
李明博ー竹島上陸と天皇の謝罪要求
多くの日本人は、韓国を反日で感情的だと見なし、「李大統領の言動の背景や韓国内での受け止めなどについて、」冷静に見ていない
親日派=売国奴
李大統領は、親日派として批判されていた
竹島上陸は、支持率あげるためか?
選挙論点ー北朝鮮問題や汚職、対日関係はあまり論点にならない
実際支持率そんなに影響なし
韓国内からも批判的な意見
韓国に対する日本の影響力低下
日本:慰安婦問題の請求権は、日韓請求権協定により解決済み
慰安婦問題を人道的な観点から、国際的な問題にしようとしている←計算された戦略
竹島ー韓国人にとって身近
竹島の島根県編入は(1905)は、韓国植民地化の過程であり、認められない←植民地支配の象徴
韓国では倫理的な謝罪に加えて、法的な謝罪も絶対必要
日本切り離して考えている
「法」と「倫理」の考え方に双方の大きな壁
お互いの違いを知り、認め合う
「韓国には一定の倫理があって、聞くべき内容があるんだという前提に」立つべき
韓国、日本から経済的に自立したので、積極的な外交できるようになった
「日韓関係の大きなファクター」:「韓国の世論」
世論に抗えない
大統領任期末期:意思決定ちゃんとできなくなり(「ブレーンが逃げ、大統領府の情報取集能力崩壊」)、国民の期待ばかりに応える
外交ー大統領の意向(専門家を直属の部下に)
↔官僚機構としての外交通商部
意思決定の仕組みはかなり構造化
韓国:竹島に対する関心格段に高い
→国民が竹島に行きだした
河野談話:「「旧日本軍が直接あるいは間接に関与した」と認め、「心からお詫びと反省の気持ち」を示す」
韓国憲法裁判所ー一元化して違憲審査
日本と比べると大きな権限
ex)国会が大統領を弾劾訴追
憲法に反する政党を解散させる
個人が具体的案件について訴訟
「比較的短期間で結論が出る」
裁判官政治任用、任期6年
「憲法裁判所を使うことによって世論を背後にする市民団体が外交を動かせる」
→韓国政府への批判→積極的な行動
「世論が憲法裁判所の判決というかたちで表面化し、これに従って行政が動かざるを得ない」
憲法裁判所の意思決定の仕組みとは?
韓国:以前の法でも正義に則らないものは従わなくてもいい
反日カード:支持率上がっても一時的、そんなに効果ない
竹島保護や慰安婦問題請求支持は、韓国人にとって常識なのでインパクトない
反日デモ(水曜集会)普段20人
日韓関係水平→競合するように(特に若い世代)
ほぼ日米二か国のみと貿易を行っていた時代が終わり、グローバル化が進んだことで日本の経済的影響力低下
地理的近接性による協力(グローバル化の中でも両国に重要なもの)ー災害、電力etc、安全保障
在韓米軍、在日米軍もいるので安全保障の協力は絶対必要だろう
民主化して、韓国世論を無視できない、エリートのみ対象の外交はできない
日韓基本条約は、「合意できないことに対して合意する」→国内で別々の主張→情報社会で相手の主張も見れるようになり、もはや曖昧な状態保てない
韓国世論に対して日韓関係を良好にするメリット伝える必要ある
「相手のメンツを潰すことはするな」
韓国は国際司法裁判所に行っても勝ちうるくらい準備している
日韓関係時代区分(小此木政夫)
①1965年~1990年代初め:体制摩擦
日本:先進国 韓国:発展途上国
日:自由民主主義、市場経済
韓:権威民主主義、官治経済
②1990年代初め~:体制共有
韓国:民主化、市場経済
③意識共有
日本人:「個人的な親近感と二国関係に対する客観的な評価を切り分けて判断」
日韓「それぞれにおける中国という存在の客観的比重やその役割や重要性に対する主観的認識や期待の祖語」
⇒「「外交安保体制共有」の揺らぎ」
「韓国にとっての中国の存在感が年々増している」
天安艦沈没事件や延坪島砲撃事件の対応等で不信感もある
韓国は米中の狭間
「自由と民主主義を」を「共有しているが「ゆえに」、日韓関係が新たな局面をむかえるようになったという逆説」
李明博、民主党それぞれに対する期待を裏切られた
05~06の紛争は小泉、廬武鉉によるものという想定
「「若い世代が活発に交流すれば状況が改善する」とは言えない」
旧い世代(日本の教科書で教えられていた)にとっては、日韓の教科書内容が異なるのは当たり前
若い世代:自分たちの教科書絶対視
反日教育それほど効果ない
むしろ慰安婦や領土について関心高まったからこそ、教科書に記述
72年国定教科書制度→民族主義的要素(対日本に限らない)
「日本の重要性の相対化」
①「冷戦の消滅」
冷戦期はソ連、中国と国交持たず
②経済発展
ヨーロッパ韓国に関心持たず
③「経済のグローバル化と情報社会化」
安全保障の相互依存が冷戦終焉によって弱まる
日韓関係良好の重要性より、領土問題や歴史認識問題に関わる個々のイシューの重要性が上回った時、それらの問題に抗議を上げる声が大きくなる
領土問題や歴史認識問題は過去のことなのでそんなに重要性変わらない
日韓関係の方が重要であれば、政治家や経済人が調整役となる
「任期の末期になると与党内部で有力な次期大統領候補者たちの力が弱まり、大統領から離反する動きで加速」=「レームダック化現象」
領土・歴史問題は、国民の意見が一致しているので、取り上げやすい
「「隣国との間だからこそできること」」を追求すべし -
時に理解しづらい点もあった韓国の対日姿勢が分かりやすく提示されていて納得する点は多かった
ただし、著者達は韓国研究のエキスパートではあるものの、韓国人の研究者をいれた方がさらに良かった気もする -
韓国カルチャーには毛嫌いも熱狂もしない、嫌韓を熱く語りはしないが韓国人の「反日」は快く思わない…というおそらく平均的な日本人が対象か。専門家が偏りも美化もせず日韓関係を語る、というなかなかない本である。
まず、法・事実関係と倫理を峻別する日本と後者が前者を規定する韓国、という根本的な違いを根底に置いている。そして竹島については韓国側でじわじわ実効支配を進めていたが事が大きくなり、紛争化という韓国にとり好ましくない副作用ももたらした、慰安婦問題は憲法裁判所の判決を機に韓国政府が追い詰められた、としている。
ただし、鼎談を交えた3人の共著であり筆者間の見解は必ずしも一致していない(たとえば李明博大統領の竹島上陸につき、佐藤氏は「反日カード」を否定しているのに対し、木村氏は一定の背景があったと見ているようである)ことや内容が多岐にわたることから、本としてはまとまりがない印象はある。それでも、「日韓関係は水平化しており、日本人の上から目線はもう通用しない」「韓国ひいては日韓関係を一旦冷静に突き放した上で何ができるかを考えることが重要」という主張は伝わってくる。 -
座談会が興味深い。
座談会①竹島問題
座談会②慰安婦問題
座談会③「感情」と「論理」の問題
重点がすべて「歴史問題」に置かれている。
タイトルのように、多くの人が信じている「通説」が、本当に真実であるのかを1つ1つ見ていく作業がなされている。私は座談会参加者のうちの二人を知っているので、彼らの主張の大筋は知っているが、それでも「なるほどなー」と思う部分が多い。
特に、韓国にたいして「ぼんやり」としたイメージしか持っていない人たちにお勧めしたい。
正直に言うと、韓国にそれなりに関わっていながらも、「歴史問題」は非常に面倒くさく、できれば避けたいと思ってしまうテーマである。その「面倒くささ」は、それらについて話し、議論すること自体への面倒くささというよりも、それぞれの主張、それぞれの主張の背景には、それぞれの「論理」があり、それをすり合わせることが到底出来ないだろうという諦めにも似た面倒くささだ。
この本を読めば、「相手のことを知ったからといって、関係がよくなるわけではない」ということをさらに深く思い知るかもしれない。
しかし、これまで「理想」とされてきた「よい日韓関係」でなくとも日本と韓国は一緒にやっていけるし、またそういった新しい関係を築いていくことで、よりよい関係が形成されるのではないか、という希望もまた、そこにはあるのである。 -
これが「検証」と呼べるのかというと、ちょっと違うと思う。ただ、内容的には日本と韓国の外交に関する認識の違いはどこから来るのかと言うことであり、解決の糸口を探るきっかけとしては広く読まれるべきだと思う。本書で採り上げられている日本と韓国の態度を見ると、かなり悪い意味での「映し鏡」的になっているように感ずる。「感情」同士をぶつけるような不毛な言い争いにならないようにするためには貴重な一冊である。