「買い物難民」をなくせ! 消える商店街、孤立する高齢者 (中公新書ラクレ 453)
- 中央公論新社 (2013年5月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121504531
作品紹介・あらすじ
昔からの商店街はいまやシャッター通り。大型スーパーは徒歩圏外。自家用車はない…日々の買い物に苦労を強いられる「買い物難民」が増大している。過疎地や古い団地だけではなく、日本全国いたる所に広がりつつある現状を伝え、政府・地方自治体や市民が何をすべきなのかを訴える。
感想・レビュー・書評
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高齢者を中心に、住まいの立地、交通、地域の商店街の衰退などの事情により日常の買い物が困難になっている状況及び改善の取組みを分析・紹介しています。
大型店の出店による消費者の利益等については考慮されていないので、「買い物難民」のみの視点からの分析・紹介です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
地方の過疎化した村々で、日常の食材などを買い出しできない高齢者などの「買い物難民」が急増していると言われている。しかし最近は中小の都市部あるいは都会においても「買い物難民」が急増中だそうだ。著者はその原因を徹底究明し、その対策を提言している。
実は私の住む地区でも50年以上営業していた唯一の食料品店が最近になって廃業した。集落のはずれにコンビニが流行る前からあった大型車のドライバーを狙ったコンビニ形態の店も閉店した。隣部落にあった小さな商店もいつの間にか廃業していた。これによってこの地区の人々は1キロメートル以上離れたスーパーマーケットまで行かないと食料品など生活必需品を入手できなくなった。車を持たない高齢者はまさしく「買い物難民」になったのである。
「買い物難民」が急増した原因は一般に少子高齢化と思われがちだがそうではないという。著者は経済産業省が管轄した規制緩和がこの事態をもたらしたというのだ。大規模小売店舗法の改定と後の同法の廃止、大規模小売店舗立地法の施行などである。この対策として新たな大店法をつくり、行き過ぎた規制緩和を改めるべきだと主張し、その具体案を提言している。
また、特筆すべきは一般にはあまりできなかったが、市民の責任を問うていることである。既存の店舗あるいは新規に出店した店舗を撤退させないためには、市民もある程度の覚悟をもって店舗経営に協力する必要があると実例を挙げて説いている。 中でも店舗が撤退した所では新規店舗の誘致もさることながら、とりあえず朝市の開催を勧めているのは面白い。全国の状況をつぶさに見てきた著者だから言えることなのだろう。朝市から始めてみようということらしい。
明日は我が身ではないが、既にそのような状況になっているのだから事態は深刻だ。経産省には早急に対策を講じて貰いたいと切に思う。
ところで一カ所とても理解できない部分があった。地方自治体の対策で福島県の条例を紹介する場面だ。一部引用する。
『残念だが日本の法体系では、自治体が法律に反した条例を制定することはできない以上、お手上げである。』
もし各自治体が法律に反した条例を制定できるとしたら、世の中は無秩序になってしまうのではないだろうか。「買い物難民」が増えることより大変なことになりそうな気がする。 -
消費者を見ていない行政・企業の無責任さに従順にしたがわなければならない「買い物難民」。これは高齢者だけの問題ではない。シャッター商店街の空疎を解消する動きはあるが、疲弊に追いつかない。勝ち組だけでないのだよ。きちんと生活できる原点の基盤が今、危うい。