ニッポンの経済学部 - 「名物教授」と「サラリーマン予備軍」の実力 (中公新書ラクレ 501)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121505019

作品紹介・あらすじ

「京大を蹴って阪大!?」「一橋商vs経」「早vs慶」「Ph.D.の値打ち」「なぜノーベル賞受賞者数ゼロか?」「底辺大は"実務偏差値"を上げよ」等々のトピックから、政策論議にも影響を及ぼす諸学風を歴史的に整理し、経済学の本質に迫る。教育・研究・人材力の観点で、各校の実力を徹底検証。

感想・レビュー・書評

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  • 「シカゴ大学は,保守派の学説で有名 (p.103)」とあるが,フリードマンは保守派ではないでしょ。「自由の国」だから自由主義(新自由主義)はアメリカでは保守なのかもしれないけど。宇沢さんも嫌気が差すわけだ。

    日本の経済学の地位低下が著しいのは,政府などから経済政策の策定に駆り出されたとしても「経世済民」にならない結果しか生んでいないからでしょう。自国ですら豊かにする政策を提案できないのに,世界の経済学を牽引するなど無理筋。

    第6章に「なぜ日本人はノーベル経済学賞を受賞できないのか?」という節があるのだが,挙げられている理由を見ると,①輸入学問,②言葉のハンディ,③優秀な人が経済学者にならない,④中高年以降でマスコミや政府で活躍してしまう,⑤日本経済の地位が落ちた。①と②は経済学に限らない話だけど,⑤の問題を解決できないのだから,④がウソ(諮問委員であっても経世済民への活躍ではない)。したがって③が証明される。

    グローバリゼ―ションが日本を駄目にした視点はなく,「トップの大学はグローバル・スタンダードとして講義を英語で」とか書いている。大阪公立大学がどうなっていくかを見て,反省できるだろうか。今の経済状況を生んだことすら反省する姿勢がないのだから,グローバルな日本人経済学者は有害だと思わせる本だった。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/691676

  • 経済学部という視点から大学を論じているが、前半は経済学の一流どころの研究者の紹介。そして、後半は、結局のところ、偏差値と同じく昔からのトップ校・一般校・底辺校の序列があるということか。特に目新しさはない。
    一方、海外と日本のビジネススクールの対比と学生レベルの違いなども論じられているが、少子化時代のなか大学院重点政策とやらで、旧帝大からトップ私立大学、地方国立大学に至るまで軒並み院生の定員を増やし、いまだ大学=底辺校増設の動きの中で、いわゆるトップ校大学院の功罪については語られていないのが残念。

  • 【感想】
     日本人経済学者だけの話を聞けて満足です。
     ただ、内容面でも表現面でも、推敲を怠ったのではないかと邪推。余分な蘊蓄や主述がこんがらがった文が散見していたので……。


    【目次】
    はじめに [003-005]
    目次 [006-014]

    第1章 経済学部は、他学部と何が違うか? 017
    なぜ経済学部生は勉強をしないのか?
    哀しき文系学部
    国立と私立の教育格差
    経済学部誕生のいきさつ
    法文学部、法経学部、法政経学部
    経済は慶應、政治は早稲田
    大学で学ぶ経済学は将来役立つのか?
    法、商、経営の地位向上、経済の地位低下
    経営者たちはどこで学習してきたか?
    経済学を学ぶと、将来どんな役に立つのか?

    第2章 経済学部盛衰史(1)――マル経と近経 043
    経済学の学派
    なぜ帝大がマル経だったのか
    帝大における学派間の争い
    戦前、京大の経済学
    戦前の早慶
    戦後、マル経の復権
    マル経はなぜ衰退したのか?
    マル経に存在意義はあるか?
    権力の側に立つ東大経済学部

    第3章 経済学部盛衰史(2)――阪大が『近経のメッカ』になれた秘密 059
    京大を蹴って阪大へ
    阪大はなぜ「近経のメッカ」になれたのか?
    大学院教育のアメリカ流改革
    旧帝大の威光
    学外からの人材登用
    名物教授・森嶋通夫
    近年の名物教授

    第4章 経済学部盛衰史(3)――神戸など旧高商の底力 077
    三商大と三大高商
    旧高商系における経済学
    一橋大が東大に吸収合併
    一橋大商学部と経済学部の覇権争い
    対照的な神戸商大と大阪商大
    戦後の神戸大と大阪市立大
    長崎、小樽、横浜の三大高商はいま

    第5章 アメリカンPh.D.の値打ち 097
    アメリカンPh.D.の先駆者たち
    都留重人とサミュエルソン、西山千明と八イエク
    アメリカンPh.D.急増と奨学金制度
    東大三羽烏と大学紛争
    厳しい競争環境のアメリカ、貧しい教育環境の日本
    テニュア獲得競争
    変動の激しいアメリカの大学ランキング
    学風から見た欧米の大学・大学院
    地位低下著しい日本の経済学
    なぜ経済学者だけPh.D.取得者が多いのか?
    Ph.D.に人生を左右される人々
    今後、アメリカンPh.D.出身者に期待できるか?
    留学のメリット

    第6章 経済学者という種族 133
    経済学者を類型化する
    経済学と数学の深い関係
    入試科目に数学を入れるか否か
    金融工学をどう考えるか
    日本の数学者、幻のノーベル経済学賞
    宇沢弘文
    小宮隆太郎と根岸隆
    切蹉琢磨する同期たち
    メディアや政治と関わり始めた世代
    ゲーム理論という一大勢力
    安倍政権のブレーン、浜田宏一
    アメリカの経済学者は政治とどう関わっているか?
    ノーベル経済学賞には傾向がある
    なぜ日本人はノーベル経済学賞を受賞できないのか?
    経済学部の女子学生事情
    女性経済学者ならではの特徴
    女性の名物経済学者?須田美矢子と大田弘子
    女性の名物経済学者?浜矩子と新関三希代
    世界の代表的な女性経済学者

    第7章 ライバル比較――研究力と人材輩出力 173
    経済学者を格付ける指標
    研究分野はトップ4
    早稲田政経の純血率
    IFランキングから読み取れること
    人材輩出力を比較する
    早慶ライバル比較
    同窓会ネットワーク
    関西圏の大学はいま?

    第8章 底辺大学とトップ大学 195
    シラバスと授業評価
    経済学部の偏差値比較
    「底辺」の実態
    就活の格差
    二流、三流の“武器”とは?
    「実務偏差値」を高める教育を
    早慶レベルでも、むしろ教育を重視せよ
    ティーチングの重要性
    生き残る道は?

    第9章 ビジネススクールの可能性 217
    ハーバードとシカゴの二大校
    ビジネススクール卒業生の活躍
    ヨーロッパのビジネス教育
    日本のビジネススクール前史
    なぜビジネススクールが増えたのか
    一橋大のビジネススクール
    苦戦するビジネススクール
    結果を出せるか?

    おわりに(橘木俊詔) [233-234]

  • 経済学部のあり方を上から目線で述べたもの。周辺領域の商学や経営学、ビジネススクールにも言及しているが、経済学者の偏見とも受け取れる言及には、異論も多いのではないか。これから経済学部を受験しようとする人は読まない方がいいです。

  • それで?といった感じ。

  •  底辺大学というネーミングは、ちょっと安直な気はするが、教育が出来る人材が求められるというのは賛成したい。
     

  • 大学の経済学部について、研究・教育・育成する人材の3つの視座でまとめられている。新書なので関心を誘うトピックと内容が、やわらかい文体で書かれている。日本の経済学説史というより、研究・教育の主体となる機関と教員を主な対象としている点で、高等教育論としても捉えられるのではないかと思った。

    帝大がマル経だった理由が旧制高校と法学部の存在があったからであり、戦後も東大・京大にマル経が復職し、近経より優勢だったところから、同学部の歴史が始まるのが興味深い。国の政策と学問は別だったということか。これに対して阪大が、財界からの支援・アメリカ様式の大学院・旧帝大・学外からの人材登用という4点で近経の研究が盛んとなり、今日に引き継がれているとのこと。

    参考になった指標ないし変数は、教員の純血率、論文の引用回数(総被引用数、一人当たりの被引用数、中位値)比較、役員数・属性といったものがあった。

    本書に紹介された学部の特徴を、天野(1986)の二元重層構造でかなりきれいに説明できると感じた。2つの区分はここでも明確で、その壁は決して越えていない。

    シラバスを厳格に運用すると、授業が規格化されていまう(p.197)ことになるという言説は参考になった。大学の水準によって、この効果が異なる。

    8章では、二流、三流の大学は理論ではなく実務で役立つ教育を重視すべきと述べている。経済学部であるにもかかわらず、商学寄りの科目をより多く設けるということは、学内外でいろいろな議論があるだろう。研究と教育の分化も同様。

  • 今のところ、特に響く内容なし

  • 日本の大学の経済学部をテーマとし、各大学の経済学部を研究面、教育面から解説。正直、あまりアカデミックな内容ではなく経済学部をめぐるゴシップ的な内容が中心。
    帝大ではマルクス経済学が主流だったという話や、阪大が近代経済学のメッカとなったいきさつなどなかなか興味深いエピソードが紹介されている。
    いわゆる、底辺大学をタテマエ抜きでばっさり切っており、そういう大学は「実務偏差値」の向上に力を入れるべきだと主張している。ちょっと上から目線な気もするが、方向性としては著者の意見に賛同する。
    はっきりと書かれているわけではないが、著者の自己顕示欲が随所に感じられたのがちょっといただけなかった。

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著者プロフィール

京都女子大学客員教授,京都大学名誉教授
1943年兵庫県生まれ。
小樽商科大学,大阪大学大学院を経て,ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。京都大学教授,同志社大学教授を歴任。元日本経済学会会長。
専門は経済学,特に労働経済学。フランス,アメリカ,イギリス,ドイツで研究職・教育職に従事するとともに,日本銀行,経済産業省などで客員研究員を経験。
和文,英文,仏文の著書・論文が多数ある。
〔主要近著〕
『日本の構造:50の統計データで読む国のかたち』(講談社,2021年)
『教育格差の経済学:何が子どもの将来を決めるのか』(NHK出版,2020年)
『“フランスかぶれ”ニッポン』(藤原書店,2019年)
『日本の経済学史』(法律文化社,2019年)
『21世紀日本の格差』(岩波書店,2016年)
『フランス産エリートはなぜ凄いのか』(中央公論新社,2015年)

「2021年 『フランス経済学史教養講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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