方法序説: ほか (中公クラシックス W 9)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (431ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121600127

感想・レビュー・書評

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  • 『哲学原理』と『世界論』が入っているので読んだ。『哲学原理』の第一部は『省察』とだいたい同じだが、もってまわった言い方が少なくなって、すっきりしている。人間が間違う原因の分析が5つになっているが、あまり整理されているようには思えない。第二部には、運動の相対性とか、慣性とか空気抵抗などにふれており、面白い点もある。物体を延長と考え、ワイヤーフレームモデルのように考えており、これを物体の本質としたところは面白い点であり、デカルト座標(XY座標)の話にもつながるのであろう。『世界論』は出版を断念した本で遺稿であり、未完である。基本的には第一元素(火の元素)、第二元素(空気の元素)、第三元素(それ以外)の組み合わせて、位置が入れ替わる渦動宇宙論だが、空虚を否定しているので、どうしても運動の説明に無理が生じているように思う。元素の渦動から太陽系(天球)が生まれたり、地球の周りを回る元素の渦動で重力を説明していたりするが、どうにも腑に落ちない。光についての理論がこの本のメインであるが、棒の端を押したら瞬時に他の端に作用が伝わるという着想は面白いが、やはり、納得できない。デカルトは文章があまり上手ではないと思う。『方法序説』は文学としては面白いが、哲学的にはあまり面白くない。神の証明と霊魂の不滅について書いた『省察』も、マテオ・リッチのような本物の異教徒に説教した人と比べたら、説得力が格段に落ちるし、神の証明もトマスなどをしっかり消化しているとは言いがたい。デカルトはイエズス会のラフレーシ学院では虚弱体質のために寛大な扱いをうけていたようだが、イエズス会で優秀な人は海外宣教にでているんである。そう考えると、『方法序説』で述べている遍歴も、なんだか古典の勉強がいやで、好き勝手にモノを考えたがる現代でもよくいる学生みたいに思えてくる。『世界論』は未定稿なので、こう判断するのは酷かもしれないが、後半など、変な前提を挿入しすぎで、自らの方法を放棄しているとしか思えない。科学読み物としても、ガリレイの方が文才があり、徹底的に反論を引き出しているので魅力的である。『哲学原理』は第二部までで、全訳がない。デカルト学者は翻訳すべきではないだろうか?

  • 感想

    半分ほど理解できたといった感じか。この本を読む前に入門書のようなものを読んでいたので、方法序説に関しては、理解することができた。しかし、現代の自然科学の分野に分類される内容に入ると、途端退屈に。

    神の存在証明に使われた無限の観念から、神とはいかなるものか、について考察し、広げてくれれば、個人的な興味を刺激してくれる内容になったのに、と思う。まぁ、本文中でデカルトは、無限の観念について言及してはならないと記しているが。

  • デカルトの代表作。
    新たな哲学の土台を確立するまでを自伝的エッセイ風に書いた作品。
    哲学の第一原理とした「我思う、ゆえに我有り」が有名。

    おそらく10数年振りに読んだが、なかなか面白かった。
    真理を導き出す方法として4つの規則が出てくるが、
    真理が確立するまでの暫定期間中に守るべき道徳法則としての
    3つの格率の方がより哲学的に感じた。
    哲学をどのように定義するかによるかもしれないが。。

    3つの格率とは、
    1)自分の国の法律と習慣に従う。
    2)疑わしい意見でも一度従うと決めたら従い続ける。
    3)世界の秩序より自分の欲望を変えるようにすること。
    となっている。
    これが面白いのは、真理を導き出す方法としての4つの規則
    (明証性、分析、総合、枚挙)と矛盾するところ。
    いずれ真理に到達するんだから、それまではこれでいいと言い切る
    デカルトの柔軟性は見習いたい。

    今回、読み直して見ての一番の収穫はやはり3つの格率。
    初めて読んだときは、4つの規則と3つの格率をメモって
    よく見直していたような記憶があるが、今読むと3つの格率の方が
    現実的だと思う。
    一歩間違えば妥協になってしまうが、やはり形而上学では
    生きていけない。
    この辺の結論はニーチェが出しているので、
    そちらの感想に譲ろうと思う。

    それにしても、格率3)なんて自己啓発本のおきまりのフレーズ。
    やはり、輸入物には西洋哲学とキリスト教の影響があるのかも。

    また、大陸合理論、心身二元論、動物機械論などその後の哲学史に
    影響を与えた部分をチェックしてみるのもそれはそれで面白い。
    さらに、本の中には出てこないが、三つの夢や、神の存在証明の循環など
    本書にまつわる話はまだまだある。
    いずれゆっくり読み直したいと思う。

  • 哲学徒としてこれは外せない。
    アリストテレスやカントやヘーゲルやマルクスを無視しても、
    どんなに難しくて、どんなに後世から非難されても、スゴイもんはスゴイ。

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著者プロフィール

デカルト

Rene Descartes 一五九六―一六五〇年。フランスの哲学者、数学者。数学的明証性を学問的認識の模範と考え、あらゆる不合理を批判検討する立場を確立した。そのことによってしばしば近代哲学の父といわれる。一六三七年公刊の『方法序説』は思想の領域における「人権宣言」とも称される。長くオランダに隠れ住んだが、終焉の地はスウェーデンであった。

「2019年 『方法序説・情念論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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