エティカ (中公クラシックス W 48)

  • 中央公論新社
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (469ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121600943

作品紹介・あらすじ

定理と公理から、神と人間精神との本性を演繹的に論証した汎神論体系。

感想・レビュー・書評

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  •  この本を読むと自分の信仰心を,スピノザの公理・定理・系といった一連の論理規則によって,より強固にすることができる.
     初めから読むと,公理系なので退屈であるが,最後にスピノザが書いたまとめ的なのがあるので,そこから遡ると読みやすい.
     内容は,キリスト教(というか一神教)によくあることがベースにある感じを受けた.その上に哲学的説明が加えられる.
     直観知によって把握したものと神への愛が結びつくプロセスが良かった.一方で巷にある,「神は世界であり,世界は神だ」という考え方が,無神論であるという批判とその議論については無意味だなと思った.「神即自然」は当たり前のことすぎて,議論の余地がない.そこに議論の余地を見出してこねくり回すことこそ,無神論のばかだと思う.スピノザのように,信仰と生活の体系を公理と定理を使って構築することに憧れる.学術の書というより芸術作品に近いんじゃないのと思った.

  • 「神とは、絶対無限の存在者、いいかえれば、そのおのおのが永遠・無限の表現する無限に多くの属性から成りたつ実体のことである。」
    ・・・・・・第一部 定義6

    この『エティカ』という本は、幾何学的記述によって世界を説明している。
    定義、公理、定理、証明で構成される、極めて異質な存在だ。
    誤謬なく出来る限り排除し理解してもらうため、この記述法を選択したらしい。
    「冗長ではあるが」と本人が言っているので、繰り返し似たような記述があることは、自覚してもなお、これが最善と判断したのだろう。
    ただ、読み解くのは、困難を極め自分がどこまで理解できたのか判断しがたい。
    それでも、多くの興味深い思想がそこにはあった。

    「われわれは、どのような場合にも、ものを善と判断するから、そのものへ努力し、意欲しあるいは衝動を感じあるいは欲求するのではない。むしろ反対に、あるものを善と判断するのは、そもそもわれわれがそれにむかって努力し、意欲し、衝動を感じあるいは欲求するからである。」
    ・・・・・・第三部 定理9 注解(193頁)

    善悪の解釈について、ニーチェのそれに似ていると感じた。
    (時系列を考えれば、ニーチェのそれが、スピノザに似ていると表現すべきかもしれない。)

    「人間が自然の部分でないということは不可能であり、またそれ自身の本性のみによって認識され、そしてそれの十全な原因であるような変化しかうけないことも不可能である。」
    ・・・・・・第四部 定理4(306頁)

    『神即自然』という言葉で表される汎神論はスピノザの思想の基盤といっていいと思う。
    現代では、人間と自然を、対立する関係と表現、理解されることが多いと思う。「人間と自然の共存」を声高に叫ぶ人もいるだろう。共存と表現すること自体、人間と自然を別個のものと捉えているからだ。だが私は、そこに自然の価値を不正に貶める人間の傲慢さ、奢りを感じずにはいられなかった。人間は所詮、自然の一部に過ぎない。構成するパーツであり、人間を含め、全てを包括するのが自然なのだ。誰も「森と木が共存する」などとは言わない。それと同様に「人間と自然の共存」という言葉には違和感と意味の履き違えがある。
    スピノザの思想に出会ったときに、私の思想を言語化してくれている、そう思った。
    また、スピノザは、その自然そのもの、世界そのものを神と呼び、唯一の実体と解した。
    あらゆるモノが神の一部であり、様態なのだと。
    これは、よく擬人化される神のイメージとは全く違う解釈であり、八百万の神をもつ日本の伝統的思想にも、他のあらゆる宗教にも相容れない。だが、現代の科学的世界解釈と比較的近しい思想ではないかと思う。

    「われわれは第三種の認識によって認識するすべてのことを楽しむ。しかもこの楽しみは、原因としての神の観念をともなっている。」
    ・・・・・・第五部 定理32(449頁)

    「神は自分自身を無限の知的愛をもって愛する」
    ・・・・・・第五部 定理35(452頁)

    世界をより深く正しく認識すること、それこそが神への愛であり。それを行う人間は神の一部であるから。人間の神への愛は、神による自分自身への愛と解することができる。
    私がスピノザに好感を持つ理由のひとつに、理性への信頼、あるいは「理性への強い期待」
    を感じるからだ。

    巻末の最後の言葉を、私はとても気に入っている。

    「さて、私がここに到達するために示した道は、きわめてけわしい道であるかのように見えるが、それを見いだすことは不可能ではない。じっさい、まれにしか見いだされないものは、困難であるに違いない。なぜなら、もし幸福が手近なところにあり、たいした労力もかけず見いだされるならば、それをほとんどすべての人がどうして無視することができようか。
    とにかくすぐれたものは、すべて希有であるとともに困難である。」
    ・・・・・・463頁

  • 20/11/25。

  • 読んでて、面白いところもあるんだけども、でもこれをしっかり理解しようとすると、ここからでは正直、しんどいと思った
    入門書、解説書的なものを頼ろうと思う

  •  何を言っているのかよくわからない、というのが正直な感想。幾何学的方法に基づき「定理」「証明」が繰り返され、しかもそれが思いついた順に書かれているような感じで全体像が見えづらい。もっとも、このわかりづらさはスピノザ自身も認めているようで各章の最後にまとめがある。それによって何をどう考えていたのかがおぼろげながら見えてきたが、それは解説のおかげで何を言わんとしているのかを事前に知らされていたからで、それがなければ読み進めることはできなかった。

  • 本作の証明は果たして常軌を逸していないのだろうか。実体とか属性とか様態とか本性とか、解説本を読んでなんとなくわかりはするけれども、「神」の存在があまりにあっさり証明されていて拍子抜け。
    なにせ神になじみがないから仕方がないのだけれど、「神」をすべて「自然」に置き換えて読んでみたらすんなり読めるようになった。この読みはオススメ。

  • だめだ。好みじゃない。主体論すぎ、感情論すぎ、つまり何かが”近すぎる”のだ。そっちの派閥のひとにとってはいいのではないか。

  • 2015年 10月新着

  •  エティカの重要性とは、その徹底的に論理的帰結を追及した幾何学的方法である。この方法が形而上学的な存在論、いっさいを包括する全体的、統一的空間を創造している。定義と公理によってすべての命題を導きだすことで、哲学の体系を構成する数学的アプローチはあらゆる意味で、彼の偉大な仕事であったと思う。 

     スピノザの神即自然、すべての事物は神の中に存在するという汎神論的立場は、意志の自由をも否定する決定論に帰結することになる。しかし、この自由意志の否定は単に自然的・機械的法則に服するという意味ではなく、神的存在の永遠な唯一の権力に服するということだ。(ここで神という言葉を使っているが通俗的な意味での、人格的な存在としての神ではなく、非人格的な無限という絶対存在のこと)
    この自由意志の否定こそ汎神論の完成であり、ここでは善悪の根源的対立も解消されることになる。

  • この人も異端、って破門されてるらしくて気になる。
    読むときはパスカルも一緒かなあ。

    自由でいるためにこんなに努力し続けないといけないなんて、なんて不自由なんだろう、って思ってた10代の頃を思い出しつつメモ。

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著者プロフィール

1632年11月24日オランダ、アムステルダムのユダヤ人居住区で商人の家に生まれる。両親の家系はイベリア半島でキリスト教へ改宗したユダヤ人(マラーノと呼ばれる)で、オランダに移住し、ユダヤ教の信仰生活を回復していた。ヘブライ語名バルッフ(Baruch)、ポルトガル語名ベント(Bento)、のちにラテン語名ベネディクトゥス(Benedictus)を用いた。ユダヤ教会内で早くから俊才として注目されたとも伝えられるが、1656年7月27日、23歳のときに破門を受ける。友人・弟子のサークルとつながりを保ちながら、ライデン近郊ラインスブルフ、ハーグ近郊フォールブルフを経て、ハーグに移る。1677年2月21日ハーグで歿す。同年、「エチカ」を含む『遺稿集』が刊行される。他の著作は「デカルトの哲学原理」、「神学・政治論」、「知性改善論」(未完)、「政治論」(未完)、「神、人間とそのさいわいについての短論文」、往復書簡集ほか。

「2018年 『スピノザ エチカ抄 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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