哲学 (中公クラシックス W 66)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (513ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121601247

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  • 『精神病理学原論』で出発したカール・ヤスパースはいつの間にか哲学者に転身してしまい、1931年にこの大著『哲学』を著す。ハイデガーの『存在と時間』刊行よりも4年あとだ。
     この訳書は、ヤスパース『哲学』全3巻のうち真ん中の第2巻「実存解明」だけを訳したもので、しかも最後の方はかなり省略されている。
     このため、ヤスパース哲学の全体像をここで知ることはできないのだが、翻訳の生硬さも手伝って、かなり難解で論理的にもある意味たどたどしいこの文章は、読むのに骨が折れた。

     この本を読むと、サルトルはハイデガーよりもずっとヤスパースに影響されたのだということがよくわかる。ハイデガーには欠如している「他者」が、ヤスパースに哲学にはしっかりと組み込まれている。また、どこか文学的な主観性がただよう思考内容は、サルトルの「まさしく文学者」な頭脳の中で一層濃密になったわけだ。
     実存主義は哲学の主役を「主体=実存」に置くがゆえに、まさに主観的にしか見えない。この一群の哲学者たちは、フーコーのいう「主体の死」へと連なる時代のカタストロフの中で、あえて「主体」の最後の燃焼を試みたのだろうか。無論彼らはそんなこと考えていなかったのだが、現在から見るとそんな感じがする。
     ヤスパース(とサルトル)の言う「自由」は私にはちょっと疑問だし、実存主義が立脚する「意識」なるものが、いったいフロイトの無意識を包含しうるものなのかどうか、大いに疑問なところ。
     しかし、「悪」についてのストレートな分析(282ページ付近)はなかなか面白かった。
    「自殺」についてせっかく語り始めたのに、関連の章が翻訳・収録にあたって省略されてしまっているのは非常に残念だった。

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