発想法 改版 - 創造性開発のために (中公新書 136)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121801364

作品紹介・あらすじ

ここで語られる「発想法」つまりアイディアを創りだす方法は、発想法一般ではなく、著者が長年野外研究をつづけた体験から編みだした独創的なものだ。「データそれ自体に語らしめつつそれをどうして啓発的にまとめらよいか」という願いから、KJ法が考案された。ブレーン・ストーミング法に似ながら、問題提起→記録→分類→統合にいたる実技とその効用をのべる本書は、会議に調査に勉強に、新しい着想をもたらす。

感想・レビュー・書評

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  • 1.著者;川喜田氏(故人)は、大学教授で文化人類学・民族地理学者。野外調査の経験を元に、情報整理と発想手法としてのKJ法を開発。科学研究だけでなく、今でも企業のアイデア作りや情報整理に活用されています。氏は、秩父宮記念学術賞、マグサイサイ賞等を受賞しました。
    2.本書;著者が生み出したKJ法について、分かり易く解説した本。著者の名前から命名されたKJは、収集した多面的なデータを、発想としてまとめる情報整理法。この手法は、混沌とした情報を整理する中で、新たなアイデアを生み出す道具の一つです。「第Ⅰ章 野外活動(現場の科学)~第Ⅵ章 むすび」の六章立て。2019年2月時点で140万部を超えるロングセラーです。豊富な図解により、読者の理解促進と実際に活用できる内容になっています。
    3.個別感想(心に残った文章を3点に絞り込み、私の感想と共に記述);
    (1)第Ⅲ章 『発想をうながすKJ法;グループ編成』より、「(集団討議での発言エッセンスを記録した紙片群を)グループ分けする際に、(紙片群を)大分けから小分けへと進めようという我のある所には、ヒットラーやスターリンのような心がある。つまり、『自分の考え方が一番正しい』と決めてかかって、『民衆は俺の通りに従え』というのと同じである。小分けから大分けに進む心は、『民衆の語る所に耳を傾け、それに素直に従った結果、このようにまとまった』という事である。・・・この問題は、単なる喩え以上に、実は現代の民主主義の根本に触れる点なのだ」
    ●感想⇒(集団討議での発言エッセンスを記録した紙片群を)“大分け→小分けに進む”か、“小分け→大分けに進む”かは、ねらいで異なると思います。様々な意見を出し合って、何かを作り出す方法、すなわち発想法としては、“小分け→大分けに進む”民主的なやり方が良いでしょう。アイデアは論理的に引出すものではなく、発見するものだからです。それには、色々な考えを持った人々の知恵が必要です。しかし、問題解決については、“大分け→小分けに進む”事も良いと思います。誰かが仮説を立てて解決プロセス例を示し、それに対して様々な意見を出し合い、解答を探るやり方です。もちろん独裁的な議論にならない工夫は必要です。どちらにしても、重要な事は、独善的にならず、みんなで色々な知恵を出すという事でしょうか。
    (2)第Ⅲ章 『発想をうながすKJ法;KJ法による文章化』より、「文章化は図解の持っている弱点を修正する力を持っている。・・その誤りを見破って、発見し、かつ修正の道を暗示する力を持っている。・・」図解の長所は、瞬時に多くの物事との間の関係が同時にわかる事である。・・文章化の方が図解化よりも物事の関係認知の方法として優れているかといえば、決してそうではない。文章化は今述べた点で図解化に勝る代わりに、物事を前から後へと鎖状にしか関係づけられないのである。・・この両者(図解化と文章)は、互いに他方の欠陥を補強する力を持っている」
    ●感想⇒上司に、提案書を見てもらった時によく言われた事があります。「図解は提案の理解には欠かせないが、図解だけでは不十分だ。自分の考えを、文章で付記しなさい」と。確かに、図解だけでは 、人によって解釈が異なりがちです。解釈のバラツキを減らす為に、コメントの重要性を教えられました。「図解化=多くの物事の間の関係が分かる、文章化=物事の関係のメカニズムが分かる」という解説は見事です。他人に物を伝える為には、“図解化と文章力”は、車の両輪なのですね。
    (3)第Ⅳ章『創造体験と自己変革;日本人とKJ法』より、「日本人の現在の仕事のやり方の弱点は、情報処理を計画的にやらないという点ではないかと思う。自分の頭の中に体験的に積まれている狭い情報の範囲内で、カンを働かせてその雑然たる情報を統合的に処理する。・・しかし、その範囲を超えた複雑な情報処理に直面すると、面倒臭くてやろうとしない。あるいはどうしてよいのか放心状態にもなりかねない」
    ●感想⇒本書は約50年前に書かれた本なので、「日本人は情報処理を計画的にやらない」は、現在では言い過ぎかもしれません。よく言われる事です。成功体験を積んだ人間ほど、思い込みが強く、他人や客観的データを信用せず、自分の意見に固執すると。こういう考えでは、KJ法を使っても意味がありません。一人では体験出来ない大勢の複雑な情報を統合していかなければ、新たな発想に繋がるヒントは得られないでしょう。人と現場の生情報を信頼する心の有無が問われます。
    4.まとめ;KJ法は、アイデアを出す為だけではなく、問題の発見・解決する為にも活用されます。企業では、品質管理の一環としても必要な手法で、今でも版を重ねている所以です。私が気に入っている点です。本書は、技術的な内容に止まらず、考え方や意義について、独自の見解を自分の言葉で分かり易く書いている事です。例えば「無の哲学。受け入れの心。こういう心がないと、本当の有の哲学も生きない」など。また、批判的精神も旺盛です。著者曰く、「(科学者・技術者の中には)現場の資料それ自身をして語らせて、仮説、理論までもってくるのではなく、外国の学者の学説、或いは自分の思いついた仮説、或いは何とはなしにできあがったシキタリを心の中において、それだけで問題を処理しようとする(者がいる)」と。私は、常々「自分の頭で深く考えなければいけない、熟慮する事に意味があるのだ」と指導された事を思い出します。本書は題名からすると、“how to”書と思うかも知れませんが、内容的には誰が読んでも得るものがある本です。(以上)

  • 出てきた発想を整理して大きな地図にまとめるのはすばらしいとおもいます。
    ただこれだけだと、1つ1つの問題をうまくほりさげられないかったりするので、1人ブレストなどの手法もあって、横糸ばかりでなく、縦糸をだぐっていくような方向もあったほうがいいのでは。マインドマップと合わせてつかったほうが新鮮な論点がみつかるのでは?

  • KJ法を使う人は必ず読んでおくべき本.

  • ほぼ、考え方はデザイン思考と同じ。
    それを50年以上前にこれほど体系的にまとめられていることに驚いた。

    デザイン思考は台頭する日本を研究して生み出されたらしいが、まさにその研究対象となったであろう内容。

    今読んでもまったく違和感のない記述があちこちに見られる。
    こんな日本人がいたことを誇りに思う。

  •  発想のお勉強。

     …実験科学は仮説を検証するところに重要な性格があるのに対して、野外科学はむしろその仮説をどうして思いつけばよいのかという、仮説を発想させる方法と結びついているのである。

     …問題に関係ありそうな情報を集めるときに、最初に働く人間の能力は決して理性的ではない。なんとなくその情報が必要な気がするという感情のようなものが、理性よりもはるかに先を進んで探索活動をしているのである。それよりもずっと遅れて、「たしかにこの情報は問題に関係があると思う」という理性的な判断が、そのあとに従ってくる。さらにその理性的判断のなかでも、「どういう意味で、この情報は問題に関係があるのか」という理屈は、もう一歩遅れてやってくるのである。発想法の予備段階としての探索過程は、人間が元来備えているらしい、このような探索能力の順番を正直に認めて、その人間らしい自然な能力を十分に発揮させようとするものである。

     …どんな観察事項も次の四つの条件を備えていなければならない。それは(1)とき、(2)ところ、(3)出所、(4)採集記録者についてである。

    ■人間行動の観察についての着眼点
    ①類型的行動
    ②状況
    ③主体
    ④対象
    ⑤手段方法
    ⑥目的
    ⑦結果

     …図解のように空間的にものごとの関係認知能力を発達させる場所と、話すとか文章をつくるなどの読み書きのように、ものごとを鎖状に論理でつないで理解する認知能力は、別の場所で行われているのである。

     私の体験内のおおまかな感じでは、反対といわれている声の八、九割までの原因は、じつは提案の内容がわからないところからきている。

  • アクティブ・ブック・ダイアローグ読書会にて読了。

    KJ法が単なる整理の手法ではなく、「発想法」であることが理解できました。

    仮説ありきで事象を見るのではなく、ありのままの現実をそのまま受けとめ、そこに何があるのかを探ってゆく創造性の発揮。

    全体を見て、そこからつかみとろうとする姿勢。

    今まで知らなかった「KJ法」の新たな顔や表情を知ることができ、最後まで興味深く読みました。

  • ここで語られる「発想法」つまりアイディアを創りだす方法は、発想法一般ではなく、著者が長年野外研究をつづけた体験から編みだした独創的なものだ。「データそれ自体に語らしめつつそれをどうして啓発的にまとめたらよいか」という願いから、KJ法が考案された。ブレーン・ストーミング法に似ながら、問題提起→記録→分類→統合にいたる実技とその効用をのべる本書は、会議に調査に勉強に、新しい着想をもたらす。

  • 発想法を学ぶための本、KJ法は聞いたことはあったが具体的な方法はよく知らなかったが、それについて学べる本であるということ。しかし、全体を読んでもいまいち内容が理解しきれていない。
    また改めて読む必要があると感じる。

    学びメモ
    ・まずブレーンストーミング式の情報やアイデアの集積をやり、第二に、その結果をKJ法で構造計画に作り上げ、さらに、パート法によって、その構造計画を手順の計画に展開する。複数人で行う場合の計画の技法として、この3つのものを順番に使うのが1番有効な方法。
    ブレーンストーミングでアイディアを吐き出した情報は組み立てられなければならない。その組み立てにあたって統合を見出していくのに使うのがKJ法である。構造作りをやっていくと、単独では馬鹿げていると思ったアイディアが大切なものであると言うことが見出される。つまり、構造の中に位置づけた時にある単独のアイディアがどれぐらい良いか悪いかが単独の場合とは別の意味を持ってくることがある。KJ法で計画が構造的に作られたら、それをどういう手順で進めていけば良いか、手順の計画が必要である。それに必要なのがパート法である。
    ・KJ法はしっかりと訓練をして使いこなさなければならない。簡単ではあるものの、その使い方を誤らないように訓練する必要がある。

  • 「デザイン思考」を勉強している流れで読みました。

    KJ法は

    アイデアを集めて、グルーピング化して、図解化して、説明する。

    発散→収縮。

    言われてみれば、単純な気もしますが行き詰まっている時はこういう整理する作業をどうしたらいいのかわからなくなってしまっているのだろうなと思います。

    KJ法は「料理」に例えると自分の中ではしっくり来るかもしれません。

    思考の断片は具材。具材が集まったら分類して順番に調理していく。最後にできた料理のレシピを作る。

    みたいなことですかね。

    頭の中で考えるだけでなく、ポストイットに思考を書き出していくというプロセスを最初にちゃんとやるかどうかが違いを生みそうです。

  • KJ法は哲学の一種だと初めて知りました。
    そして論文で姓+名となっているのでKJ法。

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著者プロフィール

1920年(大正9年),三重県生まれ.1943年,京都大学文学部地理学科卒業.大阪市立大学助教授,中部大学教授などを経て,KJ法本部川喜田研究所理事長,元社団法人日本ネパール協会会長,ヒマラヤ保全協会会長.理学博士.昭和53年度秩父宮記念学術賞,マグサイサイ賞,経営技術開発賞,福岡アジア文化賞受賞.著書に『続・発想法』『野外科学の方法』『KJ法』ほか

「2019年 『まんがでわかる 発想法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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