無意識の構造 (中公新書 481)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121804815

作品紹介・あらすじ

私たちは何かの行為をしたあとで「われ知らずにしてしまった」ということがある。無意識の世界とは何なのか。ユング派の心理療法家として知られる著者は、種々の症例や夢の具体例を取り上げながらこの不思議な心の深層を解明する。また、無意識のなかで、男性・女性によって異性像がどうイメージされ、生活行動にどう現れるのか、心のエネルギーの退行がマザー・コンプレックスに根ざす例なども含めて鋭くメスを入れる。

感想・レビュー・書評

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  • 河合先生の本は、進んで読ませて頂いており、何冊か読ませていただいたが、今回の本は少々難しかった。

    「あとがき」で、「本書ではやはり、はじめの部分はどうしても入門的なことを書かねばならないが、後の方にはすこし深い、思い切ったことも述べることにして、筆をとった」と書かれており、理解不足もやむをえないかと、少し救われた気分だ(笑)。

    作家・随筆家としての河合先生ではなく、日本を代表するユング派の心理療法家としての本気が、なるべく初心者にも理解できるように書き下ろされたものであり、内容的には一般人読者にはハードルの高いものだと思う。

    しかしながら、ユング派の心理療法(見る夢を解釈して、無意識の状態を知り、治療に生かしていく)について、少しでも覗いてみたいと思い手に取ってみた。

    フロイトもユングもともに「無意識の世界」の研究を進めたが、簡単に言えば無意識のとらえ方の違いから袂を分かつことになったようだ。本書の著者・河合隼雄先生は、そのユングの考え方を支持されている。

    本書は、ユングの理論の中で、コンプレックスとはどのようなものか、自我とは何か、無意識から現れるイメージやシンボルとは何か、無意識の深層に潜む、グレート・マザー、元型、影について、ペルソナとアニマ(アニムス)の関係について説明されている。

    「夢は、無意識層から意識へと送られてくるメッセージ」と言うことで、本書の中でも数多くの夢の解釈事例が掲載されており、その解釈を通じて上記の概念について説明されている。

    正直のところ、夢の解釈については、プロの心理療法家の領域であり、素人が分かろうはずはない。

    夢の解釈を理解することより、人の心が病んだり、回復したりすることにちゃんとした理屈があるのだということや、それを知らずに間違った行動をとることがいかに危険であるかを知ることに、本書を読む意味があると思った。

    我々が普通にわかる「意識」層。
    その「意識」層に影響を与える「無意識」の構造を知ることが大事。そこには我々が知らない重要なメカニズムがあるということを知るだけでも大きな意味があると思う。

    最終部分に、ユングが自身の体を使って自身の理論の実証実験を行うような場面が書かれている。凄まじい格闘の末に成果が得られたようだが、それはユングの自伝などに記載されているとのことだ。

    ユングが最終的に至ったのは、自身の考える「無意識」の構造との共通点が、古代の東洋哲学に見られるということであったようだ。

    「ユング心理学と仏教」という河合先生の別の著書もあるようでそちらの本も非常に興味深い。

    ふだん我々が何気に見てる夢・・・これには、自分自身の心の状態が確実に反映されている。夢は大事なメッセージだ。

    本書によれば人は一夜に5本立てくらいの夢をみているという。なのに朝思い出せない(涙)。そして、思い出せたとしても、その夢の解釈は素人ではやらないほうがよさそうである。

  • 興味のある分野だったが、如何せん主観的にすぎるように感じてしまった。学問の性質上避けがたい部分があるのも理解できるし、この分量では根拠を充分に示せないことも理解できるが、学者の思い込み、と指摘されたらそれまでに感じてしまう。

    ただ、普遍的無意識、という考え方はとても面白いと感じた

  • 『無意識の構造ー改版』(河合隼雄、中公新書)読了。ユングの思想を中心に、精神分析学の発達過程をよく理解できた。「普遍的無意識」「自我と自己」「アニマと投影」「自己のシンボル」などについての理解を深めることができた。個人の精神分析に留まらず、日本人の思考形態を深く理解するためにも役立つと思う。

    「中年の危機」について触れているところがあるが、個人的にはここが深く心に残った。
    ひとことで言うと、「意識の力で無意識界に抑え込んでいたアニマ・アニムスが中年期に表面化する」とでもいうべきか。

  • 日本に箱庭療法を広めたユング派の第一人者、河合隼雄による著書。分析心理学について解説している。
    最初は夢分析などを行う分析心理学に対して胡散臭いと思っていたが、本書を読んで印象が変わった。
    人間本来の性質に出来るだけ近づいていこうという態度が非常に共感が持てるものだった。
    具体例を見てもあまりパッと想像しやすいものではないものもあったため時代を感じたが、それも含めて考える材料として格好の本であった。

  • この名著が上梓されたのは1977年。今から40年前である。人の半生分の長さほど昔に書かれたという事実は、評価する上では考慮すべきでしょう。評価などと生意気な、とお叱りを受けるのは当然、自分でもおこがましいと思っています。
    こんな前置きを書いておきながらですが、いやはや素晴らしい。特に後半。
    ユングという人の研究が進み、ある程度の普遍性を得ている現代では特に驚きがあるわけではないでしょうが、ここには生きる指標がありました。
    人生を、とくにその後半をいかに生きるか、答えだと思っていたことに確信が持てました。

  • (1977年9月22日発売)の方を読みました
    https://booklog.jp/item/1/4121004817

  • 意識と無意識の統合について知りたいというのが読み始めた動機。
    読んでいる最中、よく夢を見た。
    自分の無意識に何があるのか、少しずつ意識できている感がある。
    次の本は河合隼雄さんの「影の現象学」。

  • 無意識についての全体像が分かりやすく説明されている。
    特に自我と自己についての捉え方は、禅の教えに繋がるものを感じてもう少し知りたいと思った。
    でももう一歩知りたいところまでは書かれないからユング心理学入門を読もうかなと思った。

  • ユング派心理学の入門書。
    ・無意識と自我、自己
    ・夢分析の様々な実例
    ・アニマとアニムス
    ・自己の象徴としての曼荼羅

    ★母性を否定する女性はしばしばエロスに圧倒されてしまい次々と異なる男性と関係を持つ傾向にある
    ★孤独は人格変化の糸口になることが多い
    ★その女性のアニムス像を夫に投影出来ぬ時、
    アニムスに対する期待はその女性の子供に向けられる→教育ママの誕生

  • ごく短い本だが、ユング心理学という今まで考えたこともなかった世界へと思考を飛ばしてくれる。

    一般に大学などで教えられる心理学は認知心理学や社会心理学といった、データや実験に基づいた文理融合型の学問、というイメージがあるが、この本で扱われるユング心理学は全く異なる。
    そもそも深層心理や集合的無意識という概念自体が実験・観察に基づいて発見されたというよりは仮説的に観念されたものという感じだし、その裏付けとして所々に挿入される実際の患者の夢もあまりにも荒唐無稽で、こんな夢を見る人が本当にいるのか、と疑いを挟みたくなる。
    総じて今までの自分の常識や固定観念からは受け入れ難い思考法で、これは科学といえるのか、とすら思った。

    しかし、そのように一笑に付すには惜しい説得力が本書にはあった。
    思うに、ユング心理学はある意味では非常識な学問であり、だからこそ現在の心理学のメインストリームは認知心理学を始めとする自然科学的な実験を重視しているのだろう。
    だが、そういった「まっとうな」学問では当分辿り着けない遥かな神秘を人間の意識は宿していて、その一端を、一足飛びに垣間見る可能性を有するのが、ユング心理学なのではないか。そう考えて、信じてみたくなるような魅力を持つ一冊だった。

  • 感想
    無意識の驚異の能力。その姿を眼前に鮮やかに描き出す。無意識は心身二元論に残された最後のフロンティアか。脳科学の知見も交えて議論したい。

  • 言ってることは分かるけど難しいな…

  • 無意識には普遍的に共通するものと、各個人ごとに持つ独自のものがあるという解釈から、無意識を意識化することの難しさと重要性を感じることができました。

    河合氏は日本の心理学の第一人者ではありますが、事例が多く挙げられているため、非常にわかりやすい読みものになっていると思います。

    ( オンラインコミュニティ「Book Bar for Leaders」内で紹介 https://www.bizmentor.jp/bookbar )

    毎回、楽しませていただいています。引き続きよろしくお願いいたします。

  • ユング派の心理療法家の河合隼雄が無意識の世界を解き明かす。西洋人と東洋人とでは自我が位置する意識構造が異なること、無意識の中にあるアニマ/アニムスという異性像、他者に投影される「影」、コンプレックスの心的エネルギー、夢の意義や夢分析について、明快に語られています。精神分析は現在ではあまり重要視されていませんが、本書を読むと人の精神構造も絶妙なバランスの上に成り立っているのが解ります。ユング派心理学は読んでいて面白いので、これからも色々読みたい。

  • 夢の意味について考察がされていたが、難しくてよくわからなかった。

  • 集合的無意識、シンクロニシティ、ペルソナ、アニマ・アニムスの話をもっと詳しく知りたいと思った。

  • 記録

  • 人間が意識として感じられる領域と自我だけでなく、無意識や人類共通の普遍的無意識もあわせた自己、を考えさせられる。個別化の過程で葛藤するあたりが、エヴァのATフィールドの話とつながっておもしろい。

  • 興味深い話が多かった

    無意識の存在を明らかにする本は読んだことあったけど、さらにその構造まで踏み込んでいた本は初めてだった。

    夢は解釈の仕方によって幾らでも都合よく捉えられると思っていたから信用していなかったけど、無意識の構造を理解したらある程度無意識からのメッセージが分かってくるのだろうな

  • ユングの無意識論解説

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