チャーチル―イギリス現代史を転換させた一人の政治家 増補版  (中公新書)

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著者 : 河合秀和
  • 中央公論社 (1998年1月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121905307

チャーチル―イギリス現代史を転換させた一人の政治家 増補版  (中公新書)の感想・レビュー・書評

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  • イギリスがEU離脱を決め、アメリカで風変わりな大統領が選ばれた今、「イギリス現代史を転換させた政治家」の伝記を読んでみた。本物の貴族であるチャーチルにはノブレス・オブリージュを感じる。また、天真爛漫な自己チュウからか働き盛りに「荒野の十年」を経験するなど、想像以上に波乱万丈な人生だったことが分かった。それだけに初組閣後の「私は運命とともに歩いているかのように感じた。私のこれまでの生涯がすべて、この時、この試練のための準備に他ならなかったと感じた」は感慨深い。歴史を意識しながらの強烈なGRIT, 今そのような政治家は見当たらない。

  • ○この本を一言で表すと?
     チャーチルの先祖からの系譜と一生を追った伝記の本


    ○面白かったこと・考えたこと
    ・「血と労苦と汗と涙」演説や戦車の新発想を考え出したこと、「鉄のカーテン」発言をした人、くらいのイメージしかなかったチャーチルについて、その先祖や両親の話からチャーチルが成長していくにつれてどのような立場にいるかということが、栄光と挫折の波を含めてまとめて知ることができてチャーチルに対するイメージが変わりました。

    ・チャーチルの人格や人柄について、不正をしない・浮気をしない・自分の発音がダメだという欠点を見据えて徹底的に準備をしていたなどの良い面もありますが、他人に悪態をつく・人の話を聞かない・乱を好むなどの悪い面もあり、人間らしいところもある人物だなと思いました。

    ・チャーチルはまさに「治世の能臣、乱世の奸雄」といった人物だなと思いました。政治家としての演説能力などは治世でも乱世でも役立つでしょうが、これだけ大きく活躍できたのはまさに活躍できる場所がそこにあったからだ、という印象も受けました。

    ・ノンフィクション作家としてノーベル文学賞を取るほどに著作活動にも励み、むしろその著作能力で金欠時代を乗り越えてきたというのは他にいないすごい政治家だと思いました。

    ・チャーチルの祖先のモールブラ公爵が名誉革命の立役者と言われるほどの功績をあげた人物であること、チャーチルの父親も皇太子と決闘になりかけるほど決裂したりしながらも政治家として大成した人物であることなど、かなりのエリート一家だったことは初めて知りました。その家系の浮名の流しっぷりがそれぞれの代ですごいですが、その家系の中でチャーチル自身は妻一筋だったというのはすごいことだなと思いました。(第一章 樫の大樹)

    ・チャーチルの学生時代に体が弱いながらもフェンシングでそれなりの成績をとったり、戦争の観戦武官のような立ち位置でいろいろな戦場を見て回って記事にしたり、若い頃からかなりの行動力だなと思いました。ボーア戦争時に捕虜になってその後もトラウマになるような目に遭いながらも脱走して難を逃れたり、ハードな人生を送りながら、それらの体験を記事にしたり小説にしたりして生活費を稼ぐというのはギリギリながらもすごいなと思いました。(第二章 剣とペン)

    ・若くして議員になり、自由貿易主義を推したり、父親の伝記を書いたり、講演をしてまわったりしながら政治活動を続け、1908年に33歳で閣僚に列することになったというのはすごいなと思いました。若い頃から政治家として活動し続けていたというのはチャーチルの政治家としての強みだったと思います。(第三章 政治家修行)

    ・チャーチルの閣僚としての最初の役職は商務相で、福祉関係の充実と軍縮・軍予算の削減の方向にその力を向けていたというのは意外でしたが、その時代やその立場に応じて自分の全力を向けるというのはそれも一つの資質かもしれないなと思いました。商務省から内相に昇格しながらも海軍のあり方について意見し、海相になるという流れは、口出ししたくてたまらないところと多才なところが出ていて面白いなと思いました。結婚の経緯がなかなか不器用なところが出ていて面白いなと思いました。主義主張が違っていて、人の話を聞かないところがあるチャーチルと結婚して円満に過ごしていったクレメンタインがすごいなと思いました。(第四章 人民の権利)

    ・チャーチルが第一次世界大戦時に推していたダーダルネス作戦が失敗し、政治家としての危機を迎え、絵を描くことに走ったというのはずっとそれなりにうまくやってきた人物が大きな挫折を迎えた時の逃避行動としてはまだマシな方かなと思いました。(第五章 世界の危機)

    ・チャーチルが陸相になったり蔵相になったりして、その蔵相時代の政策がケインズに批判されるような、結果としてもイマイチだったりして、他の分野に口を出し続けたり、主義主張から他の政治家に警戒されたり、能力があっても人間関係が読めない人にありがちな行動がその立場ゆえに大きな話になっているような印象を受けました。(第六章 再び保守党へ)

    ・ボールドウィン、チェンバレン政権の10年間、チャーチルが閣僚として選ばれずに過ごしてきた10年間でイギリスの政策の失敗ぶりはすごいなと思いました。チャーチルがいなかったから、とは思いませんが、違った政策を採っていれば第二次世界大戦の形勢も大きく変わり、歴史が変わっていたかもしれないなと思えるほどの裏目っぷりでした。この時代に閣僚として動いていなかったこともチャーチルにとって結果的には良い目となったと思うと、すごい流れの中で生きている人物だなと改めて思いました。(第七章 荒野の十年)

    ・第二次世界大戦でのチャーチルの活躍は他の本でも出てきてよく知っていましたが、チャーチルの失敗についてはあまり知らず、ルーズベルトとの個人的な友情を信じすぎたり、米英で組んでソ連に対抗する考えは見当はずれだったり、割と独り善がりなところも出ていたのだなと初めて知りました。ただ、その独り善がりな徹底抗戦の意思がドイツへの降伏を蹴ってイギリス自体を動かしたというのは、人が「場所」によって全く違う輝き方をすることを改めて感じることができたように思えました。(第八章 もっとも輝ける時)

    ・戦後のチャーチルが一度失脚しながらもまた首相として返り咲いたのは、戦時だけの人ではなかったのだなと思いました。戦時と違って大きく国政を動かせなかったことは、戦時と平時の違いが大きいこと、それぞれで適した体制も考え方も違うのだろうなということを思い起こさせました。(第九章 勝利と悲劇)

    ・チャーチルと日本はそれほど大きな関わりがなかったものの、チャーチルが活動している時代の日本の変遷が大きく、イギリスにとっても味方になったり的になったりで、チャーチルから見た日本の印象もその時期その時期で大きく違っていただろうなと思いました。(終章 チャーチルと日本)

  • チャーチル(1874-1965)の評伝である。モールブラ公爵家に生まれたチャーチルは当時の英国上流階級のならいで、乳母に育てられ、あまり両親にかまってもらえず、またラテン語ができなかったために、軍人の学校に入った。若い頃はあちこちの戦争におしかけ、勲章をあつめた。南ア戦争で捕虜収容所から脱出、一躍英雄になった。知名度を得たチャーチルははじめ保守党から選挙にでて当選するが、チェンバレンに関税の勉強をするように進められ、自由貿易論者になり、自由党にうつった。自由党では商務省長官、内相などを歴任、失業保険の基礎をつくった。第一次世界大戦時は海軍大臣だが、東方作戦の失敗で罷免され、野にくだった。ロイドージョージによって軍需相に呼び戻され、戦車の戦線配備を行った。戦後、保守党にうつり、蔵相になる。反ソ干渉戦争やゼネスト弾圧など、共産主義とたたかった。戦間期は10年ほど野にくだった。ドイツの台頭に備えるように常に訴えていたが、彼の意見は用いられなかった。ドイツのポーランド侵攻によって、総理になり、不屈の闘志で戦争を遂行し、党派をこえた人民の戦争とした。第二次大戦後は台頭した労働党に対して、野党の党首として対立、ヨーロッパ・アメリカなど西側陣営をまとめた国際的政治家となったが、大戦期にきざしたイギリス凋落の趨勢を救うことはできなかった。基本的に戦争で輝くタイプの指導者であり、共産主義を憎悪していた。蔵相時代にはケインズにこき下ろされている。

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    辛口だった

  • チャーチルの「第二次世界大戦」て読んでみたい本の一つではあったけど、
    これ読んでもういいかな、という気分に。

    ドイツの空爆に耐えてイギリス国民を鼓舞、戦後はすぐ選挙に負けて失脚。
    くらいしか知らなかったイギリスの政治家。
    確かに第二次大戦の首相在任時が見せどころではあったけど、その60年近い政治家人生は波瀾万丈。

    25歳で初当選してから保守党→自由党→保守党と行き来。
    若いうちから閣僚を務め失業、健康保険という社会制度の創設にもかかわるけど、基本的には保守的。
    あとがきの「左翼や進歩的な人々、理想主義的な若者の目から見れば、彼は昔ながらの帝国主義を忘れられない1人の老政治家でしかなかった」
    ということに濃縮されるかと。
    少なくとも著者はチャールズの政治家としての手腕や判断力をそれほど評価していない。
    でもイギリスという世界の大帝国の支配階級としての誇りを端々に感じる。

    あとイギリスは議会政治の国だけあって「まじめか」って突っ込みたくなるくらいやたら選挙が多い。
    チャーチル自身、何度も敗れたくらい。
    だから政治はどうしても議会や選挙を意識したものになるから、
    歴史の流れを知っている側から見るといちいち決定が遅いように感じてしまう。
    特にドイツへの譲歩を重ねるあたりのやりとりはやきもきさせる。
    戦争中も議会や国民を意識し、ちょっと戦局が悪化すると責任を問うたり不信任決議が出るあたり、すぐ大政翼賛になって軍に引っ張られた日本と対照的。
    ボールドウィンの「民主主義は常に独裁者よりも2年遅れるものである」という言葉がしっくりくる。

    メモ
    「帝国主義の経済的利益よりも、むしろ他国を支配することが支配者と支配民族の責任感を高め、彼らを高貴にし、被支配者に対する慈愛と理解を生むと信じていたから」
    「つまりイギリスは戦後の世界において大国としての地位を維持できるかどうかという問題が浮かびあがってきた」
    「私はイギリスと連邦が今やおとなしい小さな役割に追放されたという見解を拒否する」

  • ウィンストン・チャーチルの伝記。
    名言が結構あるってことくらいしかチャーチルの事知らなかったから、いい勉強になった。
    一回読んだ感じだと、自分が任された領域については驚異的な行動力でやり通す人だと感じた。他人の縄張りの政策よりも自分の縄張りの政策が優先、そういう考え方だから、立場が入れ替わると前と言ってることが逆じゃないかということにもなったり…。
    でも、「これが優先、何を犠牲にしてでもやり通す」って方向決めて突っ走れる政治家だったから戦争時の首相には適役だったのかも知れない。

  • チャーチルの手紙 
    ‘人生には、いろいろ不完全な点がありますが、それでも、時には、非常に面白いこともあります‘ 
      クレメンタインへの手紙、卓越した警句を語るチャーチルらしい口説

  •  チャーチルって…イギリスでは結構嫌われていたんですね…。それはともかく、本書はチャーチルの人となりを知る上ではよかったのですが、政治におけるダイナミックさの記述に欠けていたような気がします。それがチャーチルだって言われたらそれまでですが。

  • チャールズの長女の名前はダイアナである。なぜかそれが心に残ったよ。なぜ!?

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チャーチル―イギリス現代史を転換させた一人の政治家 増補版  (中公新書)の作品紹介

植民地での従軍・観戦に、福祉政策の着手に、第一次大戦の作戦指揮に、時には反革命に情熱を傾け、歴史を書くことで政治家としての背骨を作ってきたチャーチル。彼は1940年、ただ一国でナチ・ドイツに対峙する祖国を率いて立つ。イギリスの過去と現在を一身に体現した彼は、帝国没落の暗黒の時を、輝ける一ページに書き変えた。資料を博捜し、貴重な見聞を混えて描く巨人の伝記に、あらたに「チャーチルと日本」の一章を増補した。

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