チャーチル―イギリス現代史を転換させた一人の政治家 増補版 (中公新書)
- 中央公論新社 (1998年1月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121905307
作品紹介・あらすじ
植民地での従軍・観戦に、福祉政策の着手に、第一次大戦の作戦指揮に、時には反革命に情熱を傾け、歴史を書くことで政治家としての背骨を作ってきたチャーチル。彼は1940年、ただ一国でナチ・ドイツに対峙する祖国を率いて立つ。イギリスの過去と現在を一身に体現した彼は、帝国没落の暗黒の時を、輝ける一ページに書き変えた。資料を博捜し、貴重な見聞を混えて描く巨人の伝記に、あらたに「チャーチルと日本」の一章を増補した。
感想・レビュー・書評
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イギリスがEU離脱を決め、アメリカで風変わりな大統領が選ばれた今、「イギリス現代史を転換させた政治家」の伝記を読んでみた。本物の貴族であるチャーチルにはノブレス・オブリージュを感じる。また、天真爛漫な自己チュウからか働き盛りに「荒野の十年」を経験するなど、想像以上に波乱万丈な人生だったことが分かった。それだけに初組閣後の「私は運命とともに歩いているかのように感じた。私のこれまでの生涯がすべて、この時、この試練のための準備に他ならなかったと感じた」は感慨深い。歴史を意識しながらの強烈なGRIT, 今そのような政治家は見当たらない。
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・日本の政治家にたとえれば小泉純一郎と言ったところだろうか。
・根っからの帝国主義者である。
・政治家であるとともに文筆家であり、弁舌が大変有能であった。
・早くからナチスドイツに対して警鐘を鳴らしていた。しかし、周りは耳を傾けなかった。
・第二次世界大戦が始まり緒戦でしくじると、チャーチル待望論により首相になった。
・彼の弁舌の力でイギリス国民を鼓舞し、イギリスを勝利へと導いた。
・戦争に勝ったものの、イギリスの地位は没落し、植民地を失った。
<目次>
序章 この時、この試練
第一章 樫の大樹
第二章 剣とペン
第三章 政治家修業
第四章 人民の権利
第五章 世界の危機
第六章 再び保守党へ
第七章 荒野の十年
第八章 もっとも輝ける時
第九章 勝利と悲劇
終章 チャーチルと日本
2014.04.29 借りる
2014.05.11 読了
2014.10.24 「橘宏樹さんの『現役官僚の滞英日記』」の記事でふれる
http://naokis.doorblog.jp/archives/tachibana_hiroki.html -
私は、チャーチルについて、殆ど何も知らなかった。 その為、この本は、かなり興味深いものとなった。戦地に飛び込んで行く、支離滅裂さと、 学問に集中する素晴らしさ。火事場を 喜ぶ無邪気さ。一つの事に集中すると、他は目に入らないなど、圧倒的純粋な心。この人を首相に選ぶなんて、イギリスかなり、ユーモアのセンスがある。
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貧乏貴族から始まり、売れっ子作家、保守と自由とを行き来した政治家、逆境のイギリスを勝利に導いた首相の評伝。
政治家としての立場が、保守と革新の派閥を行き来きしたくだりは、解りづらかったが、タフなリーダーが生まれ形成された人生を概ね理解させてくれる。 -
17世紀に生きたチャーチルの祖先から始まる伝記。学生時代から落ちこぼれだったが、若い時から執筆活動を行ってその文才に磨きをかけていた。保守→自由→保守と党を移り、いくつか成立させた法案もあるが、失敗の方が多くしかも目立つ。ダーダネルス作戦の失敗により、約10年は政治に絡まずいたが、チャーチルが輝いたのは、やはり第二次世界対戦の時だった。多くの犠牲を払って勝利しても英国が失ったものは大きい。入門編というものの少々難解。ざっと流れをつかむのには良いと思います。
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◆WWⅠ、WWⅡの英雄とも目される軍人あがりのイギリス著名政治家の評伝。ヒトラーに対抗し続けた長所の反面、その強硬姿勢が大英帝国の落日を招来したというのは皮肉でしかないのだろうか◆
1998年(補訂前底本1979年)刊行。
著者は学習院大学名誉教授。
1900年頃から半世紀。大英帝国の没落の中、その最期に殉じたとも言えるチャーチル。
その政治家・軍人としての行動を、対立当事者や対抗政党、対抗国家のあり方を踏まえて広く渉猟する人物評伝である。
自分が移った政党が政権を担うことが多く、そういう意味で幸運とも嗅覚に優れていたとも言えなくはない。
とはいえ、意外な一面も多々開陳される。すなわち、反共の権化=自由主義の過大評価=敗者への冷遇というステレオタイプ的な政治思想家ではなく、商務相時代、漸進的な労働問題解決策を提示している。具体的には健康保険や労働保険の拡充がそれだ。
さらに内相時代、ボーア戦争時の捕虜体験が奏効したのか、行刑制度改革に乗り出し、政治犯の処遇改善、執行猶予や保護観察制度の積極的活用(つまり懲役案件の絞込みと抑制)、アイルランド自治への寛容な姿勢といった寛容政策も、現実主義的に採用する度量と定見を有していたところだろう。
とはいえ、ストライキ(特にゼネスト)など労働運動には強圧的。軍隊導入も辞さずという姿勢は、ナチス降伏後の総選挙で敗れた遠因にもなっていて、この件はチャーチルの面目躍如の感がある。
なお、細かい点では、アイルランド内乱勃発。これが第一次世界大戦開戦で表面化しなかった点、大恐慌時代に蔵相だったチャーチルが金本位復帰に否定的で、かつケインズ的政策の採用を打診していた点(実行されず)。また、演説は入念に準備し記憶していた点(つまり当意即妙という能力は乏しい)が挙げられるか。
というように評伝としては微に入り細を穿つ印象が強いが、英国政党の合従連衡と変遷、20世紀英国の政治システムと社会問題の内実、アイルランドを軸とする植民地・自治領との政治的・経済的関係性、そしてチャーチルの出自を彩る清教徒革命・名誉革命での父祖の内実とその経過。これらを知っていた方がよりよく理解できそうに感じられる。
なお、本書でも、ナチスドイツと宥和せず、徹底的に交戦し続けたチャーチルの姿勢が、大英帝国、つまりイギリス植民地支配政治を完全に叩き潰す結果となったという背理を語っている。まぁ英国近現代史の共通認識なのだろう。 -
チャーチルの「第二次世界大戦」て読んでみたい本の一つではあったけど、
これ読んでもういいかな、という気分に。
ドイツの空爆に耐えてイギリス国民を鼓舞、戦後はすぐ選挙に負けて失脚。
くらいしか知らなかったイギリスの政治家。
確かに第二次大戦の首相在任時が見せどころではあったけど、その60年近い政治家人生は波瀾万丈。
25歳で初当選してから保守党→自由党→保守党と行き来。
若いうちから閣僚を務め失業、健康保険という社会制度の創設にもかかわるけど、基本的には保守的。
あとがきの「左翼や進歩的な人々、理想主義的な若者の目から見れば、彼は昔ながらの帝国主義を忘れられない1人の老政治家でしかなかった」
ということに濃縮されるかと。
少なくとも著者はチャールズの政治家としての手腕や判断力をそれほど評価していない。
でもイギリスという世界の大帝国の支配階級としての誇りを端々に感じる。
あとイギリスは議会政治の国だけあって「まじめか」って突っ込みたくなるくらいやたら選挙が多い。
チャーチル自身、何度も敗れたくらい。
だから政治はどうしても議会や選挙を意識したものになるから、
歴史の流れを知っている側から見るといちいち決定が遅いように感じてしまう。
特にドイツへの譲歩を重ねるあたりのやりとりはやきもきさせる。
戦争中も議会や国民を意識し、ちょっと戦局が悪化すると責任を問うたり不信任決議が出るあたり、すぐ大政翼賛になって軍に引っ張られた日本と対照的。
ボールドウィンの「民主主義は常に独裁者よりも2年遅れるものである」という言葉がしっくりくる。
メモ
「帝国主義の経済的利益よりも、むしろ他国を支配することが支配者と支配民族の責任感を高め、彼らを高貴にし、被支配者に対する慈愛と理解を生むと信じていたから」
「つまりイギリスは戦後の世界において大国としての地位を維持できるかどうかという問題が浮かびあがってきた」
「私はイギリスと連邦が今やおとなしい小さな役割に追放されたという見解を拒否する」 -
ウィンストン・チャーチルの伝記。
名言が結構あるってことくらいしかチャーチルの事知らなかったから、いい勉強になった。
一回読んだ感じだと、自分が任された領域については驚異的な行動力でやり通す人だと感じた。他人の縄張りの政策よりも自分の縄張りの政策が優先、そういう考え方だから、立場が入れ替わると前と言ってることが逆じゃないかということにもなったり…。
でも、「これが優先、何を犠牲にしてでもやり通す」って方向決めて突っ走れる政治家だったから戦争時の首相には適役だったのかも知れない。 -
チャーチルの手紙
‘人生には、いろいろ不完全な点がありますが、それでも、時には、非常に面白いこともあります‘
クレメンタインへの手紙、卓越した警句を語るチャーチルらしい口説