地震の日本史: 大地は何を語るのか (中公新書 1922)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121919229

感想・レビュー・書評

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  •  地震考古学(考古学と地震学を合わせた新しい学問分野)の提唱者である著者が、これまでの研究をふまえ、縄文時代から現代までの日本史を地震の歴史としてたどったもの。元本は2007年刊だが、これは東日本大震災後に出た増補版。

     日本が世界有数の地震国であることを、我々は知識として知ってはいる。が、本書を読むと、それが改めて実感として迫ってくる。どの時代にも、地震と津波の被害によって多くの人々が塗炭の苦しみをなめてきたのだと……。

     テーマがテーマだけに「面白い」などと言うのははばかられるのだが、不謹慎を承知で言うと、古代から中世あたりまでの記述は退屈。いつごろどんな地震があったかをただ羅列しているだけという感じで、考古学か歴史の教科書のように無味乾燥なのだ。
     私は鎌倉時代の「正嘉の大地震」(日蓮が「立正安国論」を書く契機となった地震)についてくわしく知りたくて本書を手にとったのだが、「正嘉の大地震」については1ページほどしか記述がなくて、ガッカリ。
     まあ、考古学に関心のある読者なら前半部分も面白く読めるのだろうけど……。
     
     第四章「安土桃山時代」あたりから、俄然面白くなる。時代が現在に近づくほど史料が豊富になり、“地震をめぐる人間ドラマ”を描くことが可能となるからだろう。地震と鯰を結びつけて語った最古の史料は豊臣秀吉の手紙である、などという知識が得られるのも愉しい。

     あの山内一豊夫妻は、地震で6歳の一人娘を喪ったのだという。そのようなエピソードを通じて、日本人が昔から地震がもたらす悲しみと隣り合わせで生きてきたことがよくわかる。

     原発という言葉は2回くらいしか出てこないが、それでも本書を読むと、「こんな地震国に54基も原発を作るなんて、やっばり狂気の沙汰だよなあ」と感じざるを得ない。

  • (^▽^)/

  • 古代から現代まで(増補版では東日本大震災も含む)の日本列島に影響を与えた大きな地震の歴史をまとめた一書。理系らしい著者の手になるからか、抑制がきいて淡々と事実が述べられている。あるいは、インデックスとして役立つだろう一書。

  • 地球の表面を覆うプレートがぶつかり合うところ。
    その結果ひび割れ、隆起沈降が地形を形作っているのが日本列島だと頭では理解していても、自分の周辺にそれらが存在しているとの実感はなかなか持てないでいるものだ。
    本著は数々の文献、調査から過去の地震の痕跡を取り上げ、日本列島の地震と歴史を語る。
    短い周期の大地震に人々は注目しがちだが、1000年単位で考えると(それでも地震、火山の単位では短いが)日本の各地で被害を及ぼした地震は多く、再びそこで地震が起きないとは誰も言えない。
    それが明日なのか1000年先なのかに関しても。

  • 日本は昔から地震ばかりの国だった、ということがよくわかる。ただ、文章が単調なので途中少し飽きそうになった。

  • 東日本大震災を受けて、8ページ補筆された増補版。歴史上でこれだけ多くの大規模地震災害があったんだなと、にも関わらず日本史での扱いの薄さに、正直驚きます。記録も大事だが、事実を忘れない努力も必要なんだなと思います。新書としてはもう少し読みやすいと良かったかな。

著者プロフィール

1947年、香川県生まれ。東北大学大学院博士課程修了、理学博士。地震考古学を提唱。通商産業省地質調査所と産業技術総合研究所で長く研究に携わる。主な著書に『地震考古学』『地震の日本史 増補版』、『秀吉を襲った大地震』『日本人はどんな大地震を経験してきたのか』、『歴史から探る21世紀の巨大地震』などがある。

「2019年 『地図で見る 日本の地震』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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