アーロン収容所 (中公文庫)

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著者 : 会田雄次
  • 中央公論社 (1973年11月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122000469

アーロン収容所 (中公文庫)の感想・レビュー・書評

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  •  本書は、終戦直後から昭和22年5月までの1年9ヶ月間ビルマにおける英軍捕虜として強制労働に服せられた会田雄次氏の回顧録である。西欧ヨーロッパ、英国がヒューマニズムの源流国であるというのは嘘ではないだろう。しかし、人種偏見がいまなおヨーロッパ社会の底流に確実に存在しているということがわかる貴重な体験記だ。

    本書を読むことでできる疑似体験というのは、実際の捕虜生活の苦しさの数千分の一、あるいは数万分の一かもしれない。それでもなおその過酷さと生き残っていくために要領のよさが求められるという現実は、たいへん生々しいものとして伝わってきた。捕虜生活という非日常では盗みに長けているとか、嘘をついても毅然、平然としていられる大胆さが強力な武器になるというのは皮肉なことだった。こうしてみると、非日常的な世界と日常的な世界で求められる能力というのは、非常に大きな隔たりがあるように思う。つまり能力の発揮、その潜在的な力の発露というのはやはり、時代環境によってことなるので、ほとんど運とか偶然性に左右されるものなのではないかと考えずにはいられなかった。

  • 「夜と霧」「イワンデニーソブィチの1日」など他の収容所ノンフィクションとの違いは、生々しくて 自分が囚人になったように感じること、生命の危機を感じないこと


    最後まで 希望を感じない本だった。西洋人観は なるほど と思う反面 なぜ 捕鯨に 反対するのか 不思議に思った

    日本人、イギリス人、インド人など 国で人を分けるのが、戦争なのだろうと感じた。坂本龍馬のように 国を超えた世界観を持つにはどうすればいいのだろうか

  • 読むべき本

  • 第二次大戦後の捕虜収容所の話。この前読んだ虜人日記も面白かったが、本作も面白かった。この二作は著者の立場は違うが(本作は学徒の一兵卒、後者は軍属のエンジニア)どちらも逞しさを感じられて頼もしい日本人像に憧れるところがある。また、収容する側の違いも(本作は英国、後者はアメリカ)興味深い。日常から軍隊、前線、敗走、捕虜と変化目まぐるしい中にしか見えてこない人間の本質のようなものがそこにはあるのかも知れない。生きるってどういうことなのかを考えさせらる。

  • イタリア・ルネサンス研究を専門とし、日本人論、日本文化論でも多くの著作を残した会田雄次氏が、自らが太平洋戦争直後にビルマ(現ミャンマー)で英軍捕虜として過ごした約2年間の体験を綴ったものである。
    収容所(ラーゲリ)における想像を絶する経験を描いた作品には、フランクルの『夜と霧』、石原吉郎の『望郷と海』、ソルジェニーツィンの『イワン・デニーソヴィチの一日』など少なからぬ著名な作品があり、そこで主に描かれたものは極限状態に置かれた人間の姿である。
    しかし、著者が本書に描いたものはそれらとは異なり、「この経験は異常なものであった。・・・捕虜というものを私たちは多分こんなものだろうと想像することはできる。小説や映画やいろいろの文書によっても、また、日本軍に捕えられたかつての敵国の捕虜を実際に見ることによっても、いろいろ考えることができる。・・・ところが実際に経験したその捕虜生活は、およそ想像とかけちがったものだったのである。・・・私たちだけが知られざる英軍の、イギリス人の正体を垣間見た気がしてならなかったからである。いや、たしかに、見届けたはずだ。それは恐ろしい怪物であった」と語るもので、“収容された日本人”側の姿ではなく、“収容した英国人”側の異常な姿である。
    それは、裸で自分の下着を持ってきて、洗濯をしている日本兵に、「これも洗え」と放り投げる英軍女性兵士であり、うつ伏せで死んでいるビルマ人の顔を靴の先で蹴り上げ、「finish(deadではない)」と気の無さそうにつぶやく英軍軍曹の姿である。
    著者はそこに、英国人の言葉ではごまかせない人種差別・偏見を見てとる。即ち、英軍女性兵士からすれば、植民地人や有色人は「人間」ではなく「家畜」にひとしいものだから、それに対し人間に対するような感覚を持つ必要はないのであり、英軍軍曹からすれば、ビルマ人の死は、一匹のネズミの死と同じであり人間の死ではないのである。
    そして著者は、その経験は、ヨーロッパ(人)というものの特殊な姿を浮かび上がらせ、ヨーロッパ(人)に対する見方を根本的に変えるべきであることを示唆してくれたのだと語る。
    私は外国人とともに仕事をする機会が少なくなく、この類のテーマに安直に結論を出すことを好ましいとは考えないが、最も多様な人種を受け入れてきた米国においてさえ今なお頻繁に表面化する人種差別の実態を見るにつけ、現実の難しさを感じると共に、自らのプリンシプルを確立するためには、本書に描かれたような様々な事実(過去であれ現在であれ)を知った上で、それらを消化する必要があると思うのである。
    (2012年4月了)

  • ビルマでの2年間の捕虜生活体験談。同じ抑留でもソ連とは全く逆の、イングリの狡猾さが良くわかった。グルカ兵やインド兵や濠州兵や地元ビルマ人の観察もおもしろい。しかしなんと言っても、著者も含めた日本兵の様子が新鮮。現代日本のサラリーマン社会とあまり変わらないかも。 
    戦時に活躍する人と平和時に頭角を現す人は異なるという話(昼行燈大石内蔵助)や、抑留中の士官の権威の保ち方なども具体的に書かれていておもしろかった。

  • 筆者の戦後二年間のイギリス軍捕虜生活(在ビルマ)。
    不愉快で屈辱的な扱い(「私たちが英軍兵舎の掃除にノックの必要なぢといわれたときはどういうことかわからず、日本兵はそこまで信頼されているのかとうぬぼれた。ところがそうではないのだ」「ノックされると…(中略)…身支度をしてから答えねばならない。捕虜にそんなことをする必要はないからだ」)を受けながらも、「日本人は、ただ権力者への迎合と物真似と衆愚的行動と器用さだけで生きてゆく運命を持っているのだろうか。」など考えを巡らすなど、筆者の冷静な考察がまとまっている。多人種(英国人、インド人など)との民族性や感覚の違いや、そこから生じる妙なトラブルなど、リアルに描写されている。

  • ずいぶん前から読もう、読もうと思いつつ、難しそうな印象でなかなか手に取れないでいた本です。
    ところが読み出したら、夢中になって読み進めました。

    日本人論続出の導火線となったとありますが、アーロン収容所での経験や、ビルマでの戦時の状況などを説明しつつも、日本人というものを考察し、イギリス人、インド人、ビルマ人の性質についても指摘しています。
    また、本書を執筆した当時の日本に登場していたセンチメンタル・ヒューマニストや進歩主義者についても鋭い指摘をしている箇所があます。
    本書は著者の体験談ですが、それだけにとどまらず、人の性質をよくよく観察し、冷静な目で分析しているのだなと感じました。

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  • 致知2012年10月

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