台所太平記 (中公文庫)

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著者 : 谷崎潤一郎
  • 中央公論新社 (1974年4月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122000889

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台所太平記 (中公文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 戦前・戦中・戦後を背景に、千倉磊吉家に仕える「女中」たちの顛末をユーモアたっぷりに描く人間模様小説。
    「初」「梅」「駒」「定」「小夜」「百合」「鈴」「銀」・・・エトセトラとこれでもかという具合に「女中」たちが登場し、それぞれのエピソードが面白く細やかに綴られるものだから、賑々しいことこの上ない。週刊誌での連載ものだったせいか、最初はユーモアな描写が主だったのが、次第に谷崎的エロスの世界が垣間見えるようになり、恋愛模様の描写も増えていくところは興味深い。(笑)これほど多数の「女中」を家に入れ、ある意味、育てあげる態度は、谷崎自身の男の性(さが)の顕れであるか。
    ラストの大団円はとても微笑ましい。
    終始、細やかでどこかユーモアを保持し続ける書きっぷりが楽しかった。

  • 作家の家に仕えた女中たちの太平記。面白すぎて、読み出したら止まらない。どうしてこうも面白いのか考えてみたけれど、その理由が言葉にできない。

  • 女性に対する愛情も、そしてもちろん敬意も感じられるのだけど、だめだよこれは、とちょっと思って読んでしまう。
    でも面白いことには変わりない。
    男性が女性のどこに、どんな視線を寄せているかもわかって興味深い。
    女中たちの生態がそれほど風俗史的に語られているような気がしなかったけど、女中たちの生活の真実の一面が語られているのかもしれない。

  • 久々、現代小説でない本を読んだから乗り切れなかった感があるけれど。。
    そして人がいろいろ出て来すぎて混乱しましたが、こういう本の面白さがあるなと。
    読み慣れればまた違った面白さがあるのだろうな。

  •  文豪・谷崎潤一郎さんが、大正・戦前・戦後と、雇い続けた大勢の女中さん。その女中さんについての想い出を、そこはかとなく書き綴ったような本です。
    エッセイ風の小説で、実に他愛もない、取り留めもないお話を、軽く淡々と綴っているようで。
    どうしてどうして、仕組まれた小説になっているなあ、と思いました。
    読み易い軽い文体で、滑稽だったり不器用だったり、お下品だったり、ちょっとスキャンダラスだったりするような。
    週刊誌の記事を読んでいる気分なんですが、時代の移ろいやら、一人一人が、歳を取っていく感慨みたいなものが巧みに織り込まれていきます。
    太平記、と銘打っていますが、ある意味、源氏物語の趣。と、言うと大げさかもですが、軽いけど、軽いだけでも終わらない。大人の小説ですね。
    実に名人芸、大好きな本でした。パチパチ。
    ここのところ、やっぱり谷崎潤一郎は面白い、と感心することしきりなんですが。

    (でもこういうのは、読み手によっては、
    「内容は?テーマは?メッセージは?社会性は?
     年寄りの金持ちが想い出書いただけじゃん」
    という批判的な意見も、十分あるんだろうなあ、とは思いますが)

    1962年、谷崎潤一郎さん76歳のときに出版された小説です。
    いちおう、あらすじの備忘録を、というのも野暮な話…という、軽い本なんですが。
    うろ覚えしていることだけメモっておきますと。

    何年の事だか判りませんが、谷崎さんが阪神間で再婚して一家を構えたときに、女中を雇おうということに。
    しかし、一応この本は、小説の形をとっていますので、谷崎、ではなく、架空の名前の文士ということになります。
    (まあでも、全然隠すつもりないみたいで、全て谷崎さんのことだなあ、と読んでいくと判るんですが)

    コネがありまして、鹿児島県から女中さんが来る。
    この女中さんが、美人ぢゃないけど良き女中さんにて、この後、立て続けに、その鹿児島県の地域から陸続と女中たちがやってくる。
    純朴な田舎者の女中さんの中には、美人もいれば不美人も居て、頭が良い女性もいれば、どうにも間が抜けている人もいる。
    鹿児島出身だけではなく、京阪神からも色んな伝手で女中がやってきては、1年居たり、数年居たり、十数年いたりする。
    谷崎さんは、途中から熱海にも別荘を持ちます。
    熱海にも京阪神にも家があって女中さんがいる。女中さんがいっぱいいます。

    てんかんもちの女中さんがいる。
    可愛くて、谷崎さんのお気に入りの女中さんがいる。
    悲惨な境遇の女中さんがいる。
    親のいない女中さん、夫が死んだ女中さん。
    女性同性愛、レズだった女中さんがいる。
    怪我しちゃう女中さん、恋愛する女中さん、恋愛しない女中さん、失恋する女中さん、結婚する女中さん。
    谷崎さんの奥さんや娘さんと仲良くなる女中さんもいる。
    谷崎家を辞めて、大女優の高峰秀子さんのおつきになった女中さんもいる。
    結婚して辞めて、子供と遊びに来る女中さんがいる。
    火事に見舞われた女中さん。戦時をまたいだ女中さん。竹槍訓練を受ける女中さん。

    いずれにしても、そんなに高度な教養と自意識を持っている、四大卒です、という女中さんはいません。
    それぞれに純朴だったり子どもだったり意地になったり、泣いたりわめいたり。
    それぞれに、にんげんらしい感情豊かな女中さんたちを、愛情在りつつも、持ち上げもせず、貶しもせず。
    そんな女中さんたちに、ある種、振り回されちゃう谷崎さんも、三人称で軽いタッチで描きつつ。

    あくまで女中さんたちを語りながら、
    その当時の市民生活が見えてきて、その変化が見えてきて、都市と農村の格差も見えてきて。
    そして戦争に向かう時代、戦争の時代、焼け跡の時代、復興の時代。
    そういう中で移り変わっていく文化や習慣が炙りあがってきます。

    やはり、初代の鹿児島から来た、どうも美人ではないけど逞しい女中さんのお話。
    それから、谷崎さんが割と偏愛した可愛い美人女中さんの成り行き、谷崎さんの父親的な(祖父的な?)偏愛ぶりの可愛らしさ。
    熱海を舞台にしたタクシー運転手さんとの三角関係的な恋愛。
    そして、いろいろあって辞めていった女中さんたちがの、幸福だったり不幸だったりするその後。
    そんなことが印象に残っていますね。

    「だからいったい、なんなのよ」と言えばそれまでよ、みたいな、他愛もないエピソードを紡ぎながら、
    数十年に渡り、台所を中心に女中さんたちが繰り広げる、壮大で気軽な、でも時折しんみりもする太平記。

    太平記、と銘打つからには、やはり「時の流れ」「時代」みたいな感覚があるんだと思いました。
    冒頭が、「最近は女中さん、と、さんを付けるけれど、それではどうも調子が出ないので」と書き出したりしています。
    それから、文体が戦略的に俯瞰なところが、うまいなー、と思いました。
    文章の語り手は、正体不明な人物な感じなんです。そして、谷崎さんのことも三人称で、心理まで淡々と描きながら進めていきます。
    なんだけど、いわゆる記録文体三人称とも違って、「語り部口調」なんですね。
    そして、自在に読み手に語りかけながら、エピソードの順番を説明したり、解説しながら進むわけです。
    これ、ある種、谷崎さんがライフワークにして三度に渡って翻訳を出版した、「源氏物語」の文体なんだなーっ、と思いました。

    歴代の女中さんを軸にした、「女中版・大正昭和版・源氏物語」(笑)。
    そんな笑える大上段な構えを楽しませてくれながら、最後は老いた主人=谷崎が、夢の浮橋的な?もののあはれを軽いタッチで触れて終わる訳です。
    ある種、小津安二郎さん晩期のカラー映画を観ているような愉しみ。

    近年では映画「小さなおうち」で、黒木華さんが女中さんを演じていましたが、まあ、ああいうビジュアルを考えれば良いんだと思います。
    ころころと日本語を転がしながら、気軽に読み終われる短さ。こういうのも書けちゃうから、谷崎さんすごいなあ。
    でも、十分他の谷崎作品と通底音は揃っていると思います。
    ナルホド、これだけ色んな女中さんと接して、観察してたから、ああいうのも書けたんだなあ、とかにやにやしちゃいました。

    豊田四郎監督の映画も、観てみたい、と思います。
    70年代、80年代にテレビドラマにもなったそうですね。

  • 数々の個性あふれる女中さんたちの話。女性の同性愛も出てくる。鹿児島弁もいい。興味深い数々の逸話に満ちている。

  • 谷崎の、京都と熱海の家に仕えた、女中さんの話。個性派揃いで、はちゃめちゃ。だけど、料理の腕は立つ粒ぞろい。

  • 風情があって、ユーモラスで面白いのだけれど、細雪にも共通する階級社会のそこはかとない差別がね…登場人物達は皆すごく良い人達なのだけれど、なんだかどうしても嫌な気持ちになる自分がいる。

  • 出てくる「女中」さん達が皆生き生きと描かれていて、読んでいて楽しかった。
    行間に谷崎の趣味が垣間見えて、思わずにやりとしてしまう。銀や百合の性格は谷崎がよく描くわがままな女性を思い起こさせるし、初の白い脚の描写とかね。

  • 女中さんたちのはなし。色々なひとがいて、昔の人も態度が悪いひといたんだなーと。

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