園芸家12カ月 (中公文庫 C 15)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (175ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122002845

感想・レビュー・書評

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  • 園芸家あるある、です! 面白い。たくさん記されている草花の名前、わたしにはほとんどわからないけど、夫ならわかるだろうし、もっと楽しめるだろうなあと思った。自分のことが書かれているみたいで(笑)。

  • なんとなく古本屋で買ってみた本だけど、たっぷりの皮肉とユーモアで趣味人の沼の深さが存分に表現されていて、思ったよりも楽しんでしまった。
    どんなに園芸の労働が大変で尽きない悩みがあろうとも、結局それも込みでやめられないだろうなあ。

    この本の楽しみ方の一つとして、カレル・チャペックのとびっきりの皮肉と園芸愛だけではなく、ぜひ翻訳家の小松太郎さんも意識して読んでほしい。15pに及ぶ訳注と解説あとがきを見れば、カレルの園芸愛と同じぐらいの熱量を持つ、カレルおたくと言う他ない。お二方とも沼が深すぎる。

    出てくる植物の名前がほとんど知らないもので、日本じゃ見ない植物だから想像もつかないけれど、訳者渾身の訳注とヨゼフ・チャペックのユルい絵でなんとなく頭の中で想像してしまう。たぶん実物と違うんだろう。(調べながら読むといいのかもしれないけれど、そうすると一々中断されてしまう。)

    皮肉なユーモアが目立つけれど、
    やはりチェコを代表する文学家なので、自然の美しさの表現はとても引き込まれる。
    3月の芽吹きのマーチは、春へ歓びがあふれんばかりに綴られていて、とても好きな箇所だ。今このレビューを書いているのが2月なので、春がとても待ち遠しくなる。

  • カバー裏の紹介文の最後に書かれた、「無類に愉快な本」これに尽きる。

    カレル・チャペックと言えば戯曲『R.U.R.』でロボットという言葉を世界で最初に使った作家で有名ですが、それと共にこの「園芸家12カ月」もまた有名で、ようやく読めました!と感慨もひとしお。

    著者は自分を園芸家と書きますが、国を代表する作家であることは間違いないのに、この園芸への傾倒ぷりったらちょっと尋常ではありません。
    しかも彼の趣味は園芸だけではなく、解説によると写真、絵、犬、昆虫採集、幼虫飼育と多岐にわたるらしい。

    とはいえこれは園芸家の話。
    園芸家はとにかく1年のうち11カ月は草木や花のために身を粉にして働かなくてはならない。
    おちおちバカンスになんて行っていられない。
    水をやり、雑草を抜き、支柱に括り付け、肥料を作り、空いているスペースがあれば何かを植えなければならない。

    園芸家に不要なもの、それは背中。
    何の役にも立たないのに、一日働いた後は痛くてかなわない。
    次いで邪魔なのが長い脚。
    地面からの距離は遠くなる、踏んではいけないものを必ず踏んでしまう、踏まずにやりすごすには短すぎる。
    生物の進化の最初から園芸家が存在していたら、その形態は絶対に無脊椎動物であったはずだと断言する始末。

    そんなに辛いならやめりゃあいいじゃん。
    たかが趣味でしょ?
    なんて意地の悪いこと言わないで。
    とにかく彼の文章は面白いんだから。

    園芸家がじっくり自分の庭を眺めていられるのは、庭が雪に埋もれているたったひと月だけ。
    とにかく園芸家の第一の仕事は、土づくり、これに限るらしいです。
    そして園芸家が一番気になるのは天候。これは言わずもがなですね。

    ”天候ってやつは妙なものだ。ぜったいに順調ということがない。かならず予想がはずれる。温度が、100年間の平均温度とぴったり一致するということは、ぜったいない。かならず、五度高いか、五度低いかだ。雨量は、標準より10ミリ低いか、20ミリ高いかにきまっている。旱魃でなければ、かならず過湿だ。”

    園芸家はまず土を見る。
    うん。私は花を見る素人でいいや。

  • 某なんとか男子ベランダーの原作の元ネタということで気になっていた…
    園芸には前々から興味があったが、やはり俺には無理なのかもしれない。
    なんか出来る気がしないんだけど…
    いつかできるようになったらいいなぁ〜

  • もう、どこをとっても「チャペックさん」。
    歳時記のように、月ごと季節ごとに開きたい本。
    植物は偉大だ、と常々思う、動物よりも、もちろん人間よりも。

  • 読みながら、北杜夫の「どくとるマンボウ昆虫記」を思い出す。
    ある趣味者を半ば滑稽に描きながら、その趣味のもの(園芸・昆虫)を魅力を描き出すという、その文章に。


    しかし、俺には園芸は向かないな。せいぜいサボテンをテーブルに飾る程度がいいところだ。
    (この本によればサボテン一派は「宗門に帰依する信徒」らしいけれどw)

    処分日2014/09/20

  • 園芸家の悲喜こもごもが滑稽に描かれている。作者の、自然に対する愛を感じ、読んでいてあたたかい気持ちになる。
    お兄さんのイラストが内容とぴったりで、この本の味わいをまた深めている。
    やっぱりおもしろいな、チャペック。

  • 園芸をテーマに、カレル・チャペックのユーモアと独創的な論調が楽しめる本。サクサク読める楽しい本です。

    季節ごとにどのような植物を育てるか、どのように土や自然と付き合うかということにもかなり詳しく触れつつ、折々で人生訓や著者なりの視点が紹介されています。
    中でも個人的に面白かったのは、「労働は好きでするべきである。もしくは技量があるからするべきである。主義、もしくは道徳的な動機から仕事をしてもあまり意味がない」というのと、「秋は自然が休養する時期である。秋は自然が突貫して下に向けて育つ時期である。秋は、現在という古い土の中に、太った白い芽、つまり未来が育つ時期である」の二つ。
    このあたりを読んで、秋が少し楽しみになりました。

  • 本書p.76に「やまい膏肓(こうこう)にいった偏執狂患者」という言葉があります。
    「膏」は心臓の下、「肓」は横隔膜の胸腔側の上をさすそうで、やまい膏肓とは病気が心臓と横隔膜の間にまで入り込んでしまったため手の施しようがない状態のことです。
    つまりガーデニングに熱心なあまり丹精込めた庭を愛でる暇も有らばこそ、魔女の調合する秘薬の如く用土を配合、ままならぬ天候に毒づき哀訴し、もはやスペースもないのに数多の苗を注文し、…
    ええ。そういう哀しくも可笑しい愛すべき園芸家の生態が余すところなく書かれています。
    そして訳者の方も、負けないくらいの園芸家とお見受けしました。
    たいへんユーモアに溢れていますが、著者が第一次・第二次世界大戦前後のチェコスロバキアの人ということを念頭に置くと、しばしの平和を愛おしむ気持ちが行間にあるようです。
    挿絵は兄のヨゼフ・チャペックの手によるもので本書の味わいを引き立てています。
    もっとも彼は強制収容所に送られ亡くなりました。

  • カバーイラスト/ヨゼフ・チャペック カバーデザイン/建石修志

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著者プロフィール

一八九〇年、東ボヘミア(現在のチェコ)の小さな町マレー・スヴァトニョヴィツェで生まれる。十五歳頃から散文や詩の創作を発表し、プラハのカレル大学で哲学を学ぶ。一九二一年、「人民新聞」に入社。チェコ「第一共和国」時代の文壇・言論界で活躍した。著書に『ロボット』『山椒魚戦争』『ダーシェンカ』など多数。三八年、プラハで死去。兄ヨゼフは特異な画家・詩人として知られ、カレルの生涯の協力者であった。

「2020年 『ロボット RUR』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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