- Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122003477
感想・レビュー・書評
-
ジェイコブ・シフ。米の銀行家。フランクフルト生まれ。ユダヤ人。ロシアのユダヤ人迫害(ポグロム)に怒りの感情。ロシアと戦おうとしている日本の国債を500万ポンド買う。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
高橋是清氏といえば大蔵大臣としての手腕が一番有名かと思いますが、本書を読んでこんなに波瀾万丈な人生を送っていたことを初めて知りました。10代での渡米、帰国後は英語力を活かして通訳、翻訳、英語教師、さらに役所勤務、ペルー銀山事業と上巻だけでもストーリーが盛りだくさんです。その意味では何人分かの人生をいっぺんに歩んでいるような印象があり、私は個人的にそれぞれのパートをもっと詳しく読みたいと感じました。上巻のなかで一番感動した下りは、ペルー銀山事業が大失敗に終わった後に、友人に紹介された官職を断ったときの話です。高橋氏は、「衣食のために官職に就くことはない。それでは自分の意に沿わぬ事があっても、上官の命であれば従わねばならぬ事があるかもしれない。それはしたくない」というようなことを述べています。本文中にも官庁在職中にたびたび上司(大臣含め)に「たてつく」シーンがありますが、高橋氏の場合はこれが独りよがりのわがままにならず、仮に上司が反対しても、共感する人が周りにいる、そして運もあってか最終的には自分の考えるようにことが進むと言うことで、リーダーシップを十二分に感じました。
-
ダルマ宰相、高橋是清の自伝。上巻は、ペルー鉱山事件で大失敗するまで。
失敗を繰り返し、逆境に追い込まれつつも、それをはねのける逞しさ。追い詰められても、易きに流れて人の道を踏み外すことのない、揺るぎなさ。是清のスケールの大きさを改めて実感できる一冊。 -
2018/07/15
-
江戸から明治に生きた、本当に波瀾万丈の人生。昔の人は人使い(上も下も)が上手だね。
日銀の総裁騒動に際には、国際社会からどう見られるかという観点から意見を述べているのが印象的。
(抜き書きメモ)
臨終の間際に侍する心得(生きる執着を指摘し、安らかに成仏できるよう)
大蔵省で整理節約により得た剰余金は後年度において使用できるようにした。
余剰人員を集めて農商務省に新たな課を設置したが、上に立つ者次第で非常に能率を上げた。 -
積んでた本がなくなったから幕末本再読キャンペーン再開。
高橋是清は「ダルマさん」の愛称で親しまれ大正時代に第20代内閣総理大臣にもなった幕末生まれ(嘉永7年=1854年)の政治家。総理大臣より大蔵大臣のイメージのほうが強いかも。そして二・二六事件のときに暗殺された。
出生はいろいろややこしく、実父は江戸の絵師、それが行儀見習いで奉公にきていた16才の女の子に手をつけて、生まれたのが是清。庶子なので養子に出された先が仙台藩(江戸藩邸)の足軽だった高橋家。ここでお祖母さんに寵愛されて育つ。
12才で横浜のヘボン塾に通い頭角を顕し、14才で勝海舟の息子・小鹿らのアメリカ留学に付いていくことになるが、その世話役となった貿易商のヴァンリードという男が実はとんだクズで預かった留学費用を着服。そうとは知らない是清ともう一人の少年はアメリカのヴァンリードの両親の家で使用人としてこき使われ、まだ十分に英語が読めなかったため騙されて奴隷契約書にサインさせられ、今度は別の家に売り飛ばされてしまう。
この家の奥さんがわりと良い人だったのは救いだけれど、ホームステイのつもりで行ったら向こうは使用人ゲットとしか思ってないとか酷過ぎてもう。結局なんとか他の留学生に連絡つけて脱走したり裁判までして解放はされたけど、今よりもっと人種差別がひどかったであろう時代、アメリカ人側が悪いと思ってる様子はなく、憤りしかない。
ただしかし、基本的にとってもポジティブな是清、そんなに酷い目にあったとも思ってないようで結果英語力だけは身に付き、日本に帰国後は森有礼の推薦で文部省へ。その後さまざまな仕事を経て特許制度の確立に尽力、明治22年にペルーへ渡航、銀山事件に。
特許局あたりまでは、明治政府の要人にまだ幕末からの有名人が生き残っているので、勝海舟、西郷従道、品川弥二郎、井上馨、谷干城らの人物評がちょいちょい読めるのが面白かった。維新後長く生き残った人たちは長生きの分だけ失策もあるし、先に死んだひとたちより小物に見られるむきはあるけれど、やっぱりそれなりの決断力や行動力があって凡人とは器が違うなと改めて思った。
ペルー銀山については結局騙されて大失敗となったわけだけど、それまで公式にペルーに行った日本人はそれほどいなかっただろうから(この10年後くらいから集団移住が始まる)、アンデス登山や現地の様子などの描写がなかなか興味深かった。 -
所々に有名人が現れますね。ペルーの銀山で破産寸前までいった所で上巻は終わり。
-
高橋是清の偉業自体は知識として知っていたが、これほどまでに波乱万丈な人生を送っていたとは知らなかった。ある程度の日本史知識があった方がより楽しめるだろうが、語り口調も愉快で読みやすいので、普通に小説のように読むこともできると思う。
とにかく楽天家で大酒飲み、幼少期には騙されてアメリカで奴隷として売られ、芸者の家で厄介になっていた放蕩期を経て官僚になるも、ペルー銀山の投資に騙される、と漫画にでもなりそうな生涯を送っている。キャラ立ちしすぎ。
惜しむらくは、高橋是清が歴史的に最も脂が乗っていたともいえる首相〜大蔵宰相時代を書く前に本書が終わっていることだろう(日露戦争の外債募集のあたりで記述が終了している)。 -
是清の無茶さと強さに圧倒された
留学のはずが売られていたエピソードは読売新聞で読んで知っていたが、
そのときも気の強さで乗り越えた -
次々に仕事が変わっていた。
大酒飲みで何度も仕事で失敗したり、
チリ鉱山経営で失敗したときは、潔く責任を認めて、
丁稚から再スタートする覚悟を決めたところ、
その後、自分のかつての教え子の下で、平社員として働き直したり、
懐が広く、破天荒な人物だとわかった。
総理も経験し、その後また財務大臣に就任するなど、
日本が危機に陥ったとき、頼みの綱として、
大仕事を任された人。
無私で、日本のためということ1つを想っていた人だったらしい。
ピンチにたよりになる高橋是清のような人になりたい。