犬が星見た: ロシア旅行 (中公文庫 た 15-4)

著者 :
  • 中央公論新社
4.01
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本棚登録 : 882
感想 : 91
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  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122008946

感想・レビュー・書評

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  • 読みたかった本。食べ物や観光・同行者の話の羅列と思ったら、銭高老人の口癖やさばけた感想を綴る百合子さんにはまり、面白くて一気に読んでしまった。そしてあっけない静かな幕引きにも痺れた。

  • ★3.5
    この「犬」というのは、百合子さんご本人のことなのねえ。淡々としている旅の記録がいい。

  • 素朴なロシア紀行文。
    ときたま発揮される著者の茶目っ気も魅力的なのですが、夫の寝ているところやしょんぼりする様子が挿まれることも多く、じんわりと夫に対する著者の愛情が感じられました。
    タイトルにある犬は、著者の様子を指して夫からポチと冗談で言われたことからきているとあとがきで書かれていますが、本文中の夫の描かれ方もなんとなく愛犬を愛でているような感じであるので、どっちもどっちなような。

  • 武田百合子の書くものってなんかもう武田百合子そのものでしかない。唯一無二。

    ーーーーーーーーーーー

    "写真機がこわれても、本当は私は平気なのだ。見ているだけの方がいいのだ。"(p.112)


    "六月十二日 トビリシ
    いい天気。泣きたいばかりのいい天気。
    存分に泣け、と天の方から声がすれば、私は眼の下に唾をつけ、ひッと嘘泣きするだろう。"(p.155)

  • 武田泰淳とそのズッ友の竹内好、武田百合子のロシア旅行記

    あとがきがすごく良かった
    女房をポチと呼ばれて怒らない奴があるか、と思うが時勢かな
    好奇心旺盛で目がキラキラしていたんだろうな

  • 作家の武田百合子が、まだ海外旅行が一般的ではなかった時代に、夫と夫の友人と三人でロシアをめぐる団体旅行に参加したことを描いた旅行記だ。
    高山なおみがこの本に影響を受けて旅に出た、という旅行記を読んで、興味をもって手に取った。

    確かに面白い。
    往時の風俗がわかることもだけれど、物おじせずに世界と相対する武田百合子の愛嬌ある行動や語り口が魅力的だった。

    夫に酒を探してきてくれと言われて単身街中を歩き回り、酔っぱらった身振りで酒がほしいことをアピールするくだりや、不機嫌なガイド見習いを快く思わず去り際に日本語で堂々と悪口を伝えて「イヒヒ」と笑うちょっと意地悪なところなど、なんとも可愛げがある。
    また、同じ団体旅行に参加している大阪の大金持ちの「銭高老人」がいい味を出していて旅を面白おかしく彩っている。
    現代のツアー旅行にいたら完全に迷惑なわがまま老人なんだけれど、この時代のおおらかさというか、敬老精神というか、みんな微妙に迷惑で面倒くさそうなのに老人を愛している感じがいい。
    冒険だ、世界を見てやる、という意気込んだ旅行記(=自分記)ではなく、フラットな視点で平易に書かれた内容が、まさに「犬が星見た」というタイトルにふさわしいなと思った。

  • 『つれて行ってやるんだからな。日記をつけるのだぞ』


    ご主人が著者を子どもか妹、はたまた犬のような可愛がりかた
    珍しいチーズを知っていれば百合子がそんなことを知っているのかー!
    神妙な顔をして本を読めば、やいポチわかるか、など。
    でもちゃんと妻として寝台での酒やつまみ(チーズなのにキャラメルと間違い食べてくれなかったりしたが)を用意したりしている。
    カメラで写せ写せと写していたものがフィルム入ってなくて撮れておらず、ばかといわれるからひた隠し次の日散歩で適当に撮りに行くのが可愛らしい。
    そこでドッカーンの事故を見てしまったり。
    アクシデントでひとつ町に寄れなくなると、どうしていけないのかなぁと著者にだけ聞こえる声で主張する夫さん、子どもみたい。
    2人で別行動しようか?とゆっても却下。
    どちらが子どもでポチなのか。
    気に入った食物をあぷあぷと食べたり。

    同行した竹内さんも、銭高老人も、ご主人も、この旅以降からだを壊したりして結局そのまま最後の旅となった。
    犬が星見た、なんてほんとうにセンスがいいなあ。

  • こんなに心動く随筆は初めて。
    百合子さんの文章は憧れです。
    まだ見ぬロシアを想像して読んだ学生時代。
    今は夫婦という結びつきに思いを馳せながら読んでいます。

  • 1969年、横浜から船でロシアへ。鉄道や飛行機でロシア大陸横断の約一ヶ月の旅へ。のんびりとした、不便さも楽しむロシア旅。決してはしゃぎ過ぎず、臆することもなく、悠々と大陸を行く武田百合子。私も一緒に旅した一ヶ月、旅の終わりのセンチメンタルな気分に、あとがきがまた秀逸。

  • 武田 百合子
     中央公論新社 (1982/1/10)
        (中公文庫)

    ラジオで小川洋子さんが紹介されていた
    「 武田百合子全作品(4)」で読んだ
    今の旅行とは全く違ったロシア旅行
    淡々とした目線にユーモアがあって クスッと笑ったりしながら引き込まれて読んだ
    単なる旅行記ではない飾らない素直な文
    同行の方々もユニークで楽しい
    初めて知った方だけど 今は亡き著者にとても好感をもった
    いい本に出会える喜び 

    ≪ 淡々と その国・人を 受け入れて ≫

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著者プロフィール

武田百合子
一九二五(大正一四)年、神奈川県横浜市生まれ。旧制高女卒業。五一年、作家の武田泰淳と結婚。取材旅行の運転や口述筆記など、夫の仕事を助けた。七七年、夫の没後に発表した『富士日記』により、田村俊子賞を、七九年、『犬が星見た――ロシア旅行』で、読売文学賞を受賞。他の作品に、『ことばの食卓』『遊覧日記』『日日雑記』『あの頃――単行本未収録エッセイ集』がある。九三(平成五)年死去。

「2023年 『日日雑記 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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