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- Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122011694
感想・レビュー・書評
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檀林皇后私譜(上)(下)を3/21に読了。
奈良朝から平安朝初期、第五十代桓武天皇から平城天皇・嵯峨・淳和・仁明・文徳天皇の治世下、皇后・親王・内親王そして親子・兄弟・姉妹に藤橘氏族が絡んだ血みどろの権力抗争と陰謀の数々が下敷きである。藤原四家の北家と結ぶ主人公嘉智子が嵯峨天皇の皇后となるまでの出世譚と彼女の権力を極めたあとの子孫への妄執と同族執着の顛末である。
前半は史実に基いて濃密な描写で希望に満ちた展開をするが、後半は藤原と謀って保身に身をやつす孤独な権力者になり、心なしか作者の筆圧も落ちたように感じる。
嘉智子は何のために生きたのか、人生に迷い、贖罪のための檀林寺創建にも虚しさが残る。
歴史に対しては「人名・事件年代・覚える」の思考に囚われるが、作者の著す人間模様の世界は自分の従来知識とは別物であり想像力に愕然とすることが多い。
皇室を巡る藤原家支配の悍ましさや権力に群がる人間のまがまがしさ等々に厭な気持ちになるが、実際の歴史の発見でありそんなものかという諦観に落ち着く。詳細をみるコメント0件をすべて表示