玩物草紙 (中公文庫 し 9-6)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122013124

作品紹介・あらすじ

観念の大胆さを弄ぶがごとく語られた著者の内なる小宇宙。

感想・レビュー・書評

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  • 究極のフェティシズム。
    この上品で猥雑な語り口がたまらない。

  • 朝日ジャーナルに連載されたエッセイをまとめた本。
    この人は本当に守備範囲が広い、と言うか思いがけないところにある。

    実名でのポルノ鑑賞暴露とか自分の自慰体験とか嫌らしさを感じさせずに澁澤色に染めて酒脱な文章でさらり。
    からりと乾燥したようなこの人の文章が好きです。

    蟻地獄の話が何だか妙に心に残った。

  • 歳取ってまん丸くなったエッセイ集。読みやすく素顔が見えて面白いけれども、幻想が薄れて少し哀しい。
    若い頃なら自分をエッセイストとは分類しなかっただろうなぁ。つるつるだ。

  • ものすごく面白かった。ほんとに広く深くものごとをみて考える人やなあと思うけど、変な人やなあと思われてなかったんやろうか。広いとはいえ偏ってるし。

    とくに印象に残っているのは、「虫」の中に出てきた、「少年少女の敏速な矯正のための蒸気機械」で尻をしばかれている少年少女の版画とその説明文が、何かえっちだなあと言っちゃってるところ。そして、別に特殊な感覚じゃなかろうよと言ってるところ。
    うん、わたしもそう思うよ。

  • 裸体/虫/沼と飛行船/ミイラ取り/枕/蟻地獄/星/神のデザイン/家/反対日の丸/ポルノ/変身/花/ピストル/体験/テレビ/猿の胎児/天ぷら/美術館/書物/劇場/寓話/地球儀/猫と形而上学/男根/カフスボタン/輪鼓/夢/燃えるズボン/衣裳

  • コアな澁澤氏ですが、こちらでは追想録として身近な体験談を語りつつ、氏特有の知識を優しく盛り込んでます。ユングからラプンツェル、天ぷらまで、好きと不思議を行き来する、確かな語り口が楽しいです。

  • 満点の読書感。

    とても軽やかに独自の世界観を自然に書き出している。
    澁澤を知らない人でも楽しめるかもしれない。

  • 高校生の頃、友人にもーりという読書家がいて彼女がよく、おとちゃんは、だの、たっちゃんは、だの話していた。よく聞くとおとちゃん=加賀乙彦で、たっちゃんがこの澁澤龍彦だったわけで、でも当時のあたしは澁澤=サド=なんかへんたい(失礼)という印象しかなくて、高岡親王航海紀を読んで猛烈に感動した割には他の本はまるで読まなかった。

    で、先日ふらふらとブックオフで乱雑に買い物をしていたとき、確か斎藤美奈子さんの本だったか、さまよった視線の向こうにおやたっちゃん。いや失礼澁澤さん。と、まさに書物と目があってしまってじゃあ参りましょうかそうですね、と、ウチにやってきたわけなのです。


    あ、感想までが長い・・すみません。


    さ、本題本題。
    朝日ジャーナルの連載モノをまとめた一冊。ということでおそらくは、1つ1つのエッセイに、多少の時期的な幅があったのだと思われる。なので時に表現が重複していたり、ちょっと似たようなまとめが並んだりしているのが、かえって澁澤さんの素の文体が垣間見える気がしているのだ。そうしてそれが本当に、チャーミング。たっちゃん、って、もーりが呼びたくなったの、今ならわかる。

    あったことないけどきっとこの人、すごく繊細で優しくて、本質的に育ちのよい、チャーミングな人だったんじゃなかろうか。ちょっときわどいことを描いたりしてもいやみもなく、あったかい視線にあふれている。

    朝日ジャーナル、という雑誌なので、ターゲット層にあわせてか文章量もさほど多くなく、なにか1つ、ものをテーマにした回顧録だったり見解なので非常に読みやすいのだけれど、その中から特にお勧めを選んだとしたらあたしならこれ。



    神のデザイン、か、テレビ。


    神のデザインは、子供だった澁澤少年の動物園の記憶を交えつつ、動物の造形についてとても美しくまとまっているし、テレビはショートショートに収められてもおかしくないほどの、キッチュな浮遊感のある素敵で(ちょっとセクシーな)エッセイと言うよりショートショート。


    とても薄い本だけれど、秋の爽やかな気候で読むと、一気に世界が広がりそう。文章とその背後のモノへの愛情や文学の造詣がきれいにオーケストレーションした、まさにゲイジュツの秋にふさわしい、良書だと思います。

  • 澁澤50代の朝日ジャーナル連載エッセイ。こういう人がいられたのは、昭和までなんだろうなぁ。

  • 久しぶりに楽しい読書体験ができました。

    澁澤龍彦さんについては、コクトーなど多くのフランス文学作品の翻訳に携わっておられるので名前はよく目にしていたのですが、なかなか澁澤さん自身の作品に触れる機会はなく、今回の『玩物草紙』が初めてでした。マルキ・ド・サドにもお詳しいと聞いていたので、幾分変わった方なのだろうと思っていましたが…期待通り、エキセントリックで刺激的なエッセイ集でした。

    内容についてうまい仕方で触れられそうにない―というのも、個人的には「枕」だとか「カフスボタン」あたりがすてきだな、とは思ったのですが、どこがどうとか具体的に説明できそうにありません―ので、この本を読んでいて私が感じた印象を言葉にしておきます。

    この本は、澁澤さんがフランス文学に精通しておられるからなのかもしれませんが、フランスの作曲家が作った木管アンサンブルの作品のようでした。たとえば(私がよく聴くのは)ジャック・イベールだったり、ジャン・フランセだったり、それからダリウス・ミヨーだったり…挙げればきりがありませんが、共通して言えるのは、軽快で明るく、(ところどころダサいところもありますが)全体的に洗練されて品のある、そういう作品です。《Divertissement(気晴らし/喜遊曲)》と言っていいかもしれません。symphonie(交響曲)のように、大きな物語があり、壮大さがあり、全体性があるわけではなく、ともすれば思いつきのような断片が続いているのですが、気付くとそこには一つの作品が出来上がっていて不思議な関係性を作り上げています。そんな不思議な、しかしとても魅力的な作品でした。

    まだこれ1冊しか読んでいないのでわかりませんが、澁澤さんの作品が好きな方はきっとフランス音楽が好きだと思います。ぜひいろいろな作品に手を出してみようと思います(すこし勇気が必要とも思いますが…)。

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著者プロフィール

1928年、東京に生まれる。東京大学フランス文学科を卒業後、マルキ・ド・サドの著作を日本に紹介。また「石の夢」「A・キルヒャーと遊戯機械の発明」「姉の力」などのエッセイで、キルヒャーの不可思議な世界にいち早く注目。その数多くの著作は『澁澤龍彦集成』『澁澤龍彦コレクション』(河出文庫)を中心にまとめられている。1987年没。

「2023年 『キルヒャーの世界図鑑』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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