アジア史概説 (中公文庫 M 227-4)

著者 :
  • 中央公論新社
3.88
  • (15)
  • (13)
  • (19)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 278
感想 : 13
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (568ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122014015

作品紹介・あらすじ

東アジアの漢文明、西アジアのイスラム・ペルシア文明、インドのサンスクリット文明、そして日本文明等、異質文明が交通という紐帯によって結びつき、相互に競い、かつ補いあいながら発展してきたアジアの遠大な歴史を解き明かし、人類全体の真の歴史を発見する。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • おもに「中国」を記述、戦中の原稿では支那か。宋がそれまで軽蔑し朝貢貿易で利を与えて化外の民と見下していたキルギスに征服され皇帝の両立鼎立を認めざるを得なくなって阿Qのようにひねり出した自尊心の朱子学、民族意識が征服王朝である清に引き継がれ、それを倒した孫文、蒋介石にまで波及したとする。『特殊権益』は正当なもので、自衛的戦争として「大東亜戦争」と名付けた必然性が浮き上がる。情熱の書で見かけの厚さに反して読みやすい。「安易にアジアに介入する」アメリカの愚を鳴らしている必読の書。東南アジア、インドにも独創の見解
    2014/10/14

    Hironobu Yazawa
    唐から宋までの説明で全体の1/3。古代からアジア全体にわたって交流があり、文化や政治体制に影響を与えていたことがよく分かる。テュルクや蒙古族などの中央アジアさらには西アジアとのあいだの活発な交流が生き生きと描かれる。近世史以降は、各国史をつなげただけという印象は少なからずあるが、最後にある近現代日本史の解説は秀逸。
    2016/06/16

    たかしくん
    中々の骨太な1冊です。本著の真髄は第3章以降にあると思います。ユーラシア全体を、交通(すなわち物流、民族の移動)の観点から捉えてます。故にその要地である西南アジアこそが中世・近世への先駆けとなった主因であること、中でもイスラム教の出現が西南アジアのルネサンスで、それがヨーロッパ・東アジアの歴史に大きく影響を及ぼしていくとの史観にも説得力がある。もう一つ、ヨーロッパのアジア・アメリカへの帝国主義には、彼らの革命を通じた国民主義の勢いが不幸に発展した結果であること、この議論は新鮮でした。
    2015/08/16


    isao_key
    宗教について踏み込んで書かれているのが興味深かった。「小乗仏教が各派に分裂し、おのおのその主張の中にたてこもって細かい分析註解と論争を累積して他を顧みないうちに、かえって仏教の理想を見失い、しだいに現実社会から遊離してゆくのに対し、進歩的な大衆部の中より、仏教の本義を考えて現実社会にこれを活用して共済の実をあげようとする新運動が台頭した」

    MAT-TUN
    宮崎先生の本だからまずハズレは無いが、本書はその執筆された経緯から面白い。太平洋戦争中の1942年の文部省から、大東亜共栄圏が成立した暁には共栄圏内の諸国民に読ませようとする遠大な目的が本書にはあった。皇国史観のようなものではなく極めて良心的なわかりよい概説書で今読んでも非常に面白い。西アジアで興起した文明が東流する様が読んでる端から伝わってくる。

    umeko
    勉強モードで読み始めたのですが、見事にひっくり返されました。時間においても地域においても広範囲の歴史を的確にまとめ、ところどころに挟まれる筆者の歴史観が興味深かったです。とりわけ第8章の最後、「経済の高度成長も、短期間で達成できたものは、また短期間で失い易いと覚悟しなければならない。」の辺りは、まさに今現在の日本の状況を予言したかのよう。

  • 非常に面白かった。
    北方騎馬民族の遍歴や、韓国の嫌日教育がアメリカの政策だったなど興味ある話が盛りだくさん。
    白眉は日本に青銅器時代がないのは、中国との国交の断絶・復活から一気に鉄器へと進化したという説。
    歴史は古代から近代まで通して見ると流れがよくわかる。

  • 6年半ぶりにアジアでも仕事をするようになった。
    俯瞰で物を見、考えるのに役立つのは歴史である。
    宮崎市定『アジア史概説』(旧版:1947/1948, 新版: 1973)を読む。
    ときどきパラパラと目を通すことはあったが
    通読したのは初めてだ。
    「新版の序」にこうある。

       じつはこの書は何でもかでも書きこんである
       世のレファランス・ブックとは違い、
       ざっと通読して
       その間にある何かあるものをつかんでもらいたい
       という意図をもって書かれているので、
       おそらくそんな点が買われているのであろう。

                           (p.9)

    アジアには中国がありインドがあり
    東南アジアがあり、さらに西アジアがある。
    筆者は交通史観とも言うべき歴史観で
    この広大なエリアを数千年単位の時間でとらえていく。
    いかに他民族と交通で結ばれ交渉していくかが
    その民族の興隆と滅亡を決める。
    文庫版562ページ。碩学の名著。

  • ある地域の歴史を時系列(「タテ」の発想)に見ることは大事であり、学校の歴史の授業はそのような進め方が大半だったろう。しかし、同時に同時代における他の国の出来事を横断的に見る見方も非常に重要である。なぜなら歴史とは、前の時代に影響を受けることも多いが、それと同じくらいあるいはそれ以上に、同時代の他国から受ける影響も非常に大きいからだ。それは今現在生きている私たちが何に影響を受けているかを考えれば一目瞭然だろう。本書はその「ヨコ」のつながりを意識しながら「タテ」の歴史を紐解いていく壮大な試みである。著者の風情からしてそもそも骨太の内容だが、思想的偏りを排除して、純粋な「タテ」「ヨコ」の因果関係を探求する様は、文字通り「真の歴史」を追及した書と言って過言ではない。

  •  この本は、1987年に発行された古い本であるが、とてもいい本です。アジア史全体を記述した本というのは極めて珍しく、その分量を500頁に抑えることは、宮崎市定という歴史の大家だからこそできたのだろう。
     アジア全体の歴史に触れながら、通り一遍ではなくその本質を記述しているところがすごい。途中で飽きるかななんて思っていたのですが最後まで興味深く読むことができた。良書でオススメします。

  • 自分があまり知らない国名や地名が多々出てくるので地図と交互に読みながらで時間は掛かったが良い内容だった。
    文明の誕生や勃興がアジア?ヨーロッパの各地域で進行し、相互に大きな影響を与えている事はある程度は知っていたが、この本で大きな視点から知る事ができた。
    アジアの中の日本を1章割いて、書いているが日本もアジアの一部であるという印象を強く感じる内容だったな。少し古い本なのでここ20年分ぐらいが書かれていないんだけど、日本が変わりつつある現在、過去の歴史を学び、注視する必要を強く感じたよ。
    まあ、ここまで近隣諸国が声を上げるという事は日本の影響力はまだまだ衰えてはいないと言う事だ考え方によっては良いことなのかもしれないね。
    しかし、それだけ大きな責任を伴うと私は考えるよ。

  • ・ウマイア王朝…第四代教主アリのときに、教主選挙についての内訌により、シリア総督ムアビアがシリアを根拠地としてダマスクスに都した。以後父子相続
    ・ムガール王朝…蒙古人バーブルが西北インドを確保し基礎を築く(1526年)。ムガールとは蒙古という意味
    ・インドは第二次世界大戦における日本の行動に賠償を求めなかった。さらにインドは、東京裁判において、戦犯の罪を問う不合理さを主張

  • 学生社版を近所の古書展で購入。500円也。

  • 626夜

  • 文化は交通である @千夜千冊 by 松岡 正剛

全13件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1901-95年。長野県生まれ。京都帝国大学文学部史学科卒業。京都大学名誉教授。文学博士(京都大学)。文化功労者。専門は,東洋史学。主な著書に『東洋に於ける素朴主義の民族と文明主義の社会』(1940年)、『アジア史概説』全2巻(1947-48年)、『雍正帝』(1950年)、『九品官人法の研究』(1956年、日本学士院賞)、『科挙』(1963年)、『水滸伝』(1972年)、『論語の新研究』(1974年)、『中国史』全2巻(1983年)ほか多数。『宮崎市定全集』全24巻+別巻1(1991-94年)がある。

「2021年 『素朴と文明の歴史学 精選・東洋史論集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

宮崎市定の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三島由紀夫
J・モーティマー...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×