言わなければよかったのに日記 (中公文庫)

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著者 : 深沢七郎
  • 中央公論社 (1987年11月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122014664

言わなければよかったのに日記 (中公文庫)の感想・レビュー・書評

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  • これは深沢七郎のごく初期のエッセイ集であり、「風流夢譚」事件よりも前に書かれたものである。
    「楢山節考」の作者の頭の中がどんな風になっているか、人はこの本で少し知ることができ、同時に、驚いたことだろう。或る者は侮蔑の意で「白痴」とも呼んだらしい。
    深沢七郎はどうやら本当に、文学のことをほとんど何も知らずに、文学の世界にやって来たのである。そして文学者たちの知識の豊かそうな言動にいちいち感動し、「びっくり」し、自分の言動が「恥ずかしく」なる。なんという素朴さだろう。
    遠藤周作のユーモアは、知識人が知識人たることを最後まで捨てない、矜持をたもったユーモアだった。北杜夫のユーモアは、優れた文人たちより自分を一段ひくく見ながら、しかし卑屈さを感じさせないようにゆるやかな浮遊感、漠然とした境地をもって、「笑い」を醸し出していた。
    深沢七郎のこのエッセイは確かに可笑しいが、そこには衒いも何もない。ひたすらに素朴なのである。この人は「天然」と呼ぶべきなのだろう。しかしこの「天然」ぶりは愚かさなのではなく、不思議な世界観から来ているものらしい。知能が高くわけのわかっている「野人」が、文明人の滑稽さに出会ったことの滑稽さを、全身で表現しているような。
    彼には、「近代人」がとらわれてきた過剰な「自意識」が無い。これは驚くべきことだ。彼には野望がない。文学者としてトップに立とうとか、他の作家を批判しようとか、そんな棘はまったく無いのだ。
    なんということか。
    私たちは必死になって「勉強」し、他人よりも高い視点を獲得するべく血眼になって努力してきたのに、ここに、そんな世俗の欲望にからめとられない素の人間がいる。
    深沢七郎、彼は私にとってはまだまだ謎が多いのだが、音楽的な成果をあげようと汲々とし、自己の能力の低さに悩み、それはそもそも自尊心が強いからで、「世間」への復讐心から高みに立ってやろうなどという、くだらない野心にとらわれた私とは何というちがいだろう。彼の文章を読むと、自分のくだらない執着があほらしくなってくる。これは衝撃だ。価値観を一変させるような発見なのだから。
    このような「とらわれなさ」が、現代人にはあまりにも異様なので、彼の小説はあんなにも不気味なのだろう。
    恐るべき作家である。

  • あほか天才か。気前がいいのかケチなのか。
    深沢七郎とつきあいのあった当時の文豪たちが、ちっぽけに思えてくる。ニセモノに思えてくる。ところが、がっかりさせられるのでなく、ちっぽけに見える正宗白鳥や武田泰淳なども、どことなくかわいらしく思えてくるから不思議。たぶんかれらが深沢七郎に困惑してたじたじになっているからだろう。

  • ユーモア。『小泉今日子書評集』にて。昭和の文豪たちとの交流を綴ったもの。

  •  
    ── 深沢 七郎《言わなければよかったのに日記 1958-19871110 中公文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4122014662
     
    http://q.hatena.ne.jp/1467109851#a1257554(No.1 20160629 00:43:06)
     わが美学暦 ~ 虚論と空論の進化論 ~
    ── 深沢 七郎《楢山節考 19570201 中央公論社 19640803 新潮文庫》
     
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    (20160702)
     

  • この日記を読む限りでは、やはり深沢七郎氏はなかなか変わっていますね。でも「楢山節考」は素晴らしい作品だと思っています。この作品と氏の言動のギャップがなんとも言えないおもしろさですね。真面目に振る舞うほどひとの失笑を買ってしまうようなひとは、あまり見かけなくなりましたね。みんな賢くなったのか人前では少なからず演技をしているのか。今の世は素のままに生きることが難しくなったということでしょうか。

  • 素直で、ピュアで、まじめで、不器用で。そんな人となりが目に浮かぶ。だから、みんなに愛されて、ちょっと変わっているといわれて。
    嵐山光三郎の酔仙人を読んで、この本にたどり着き。読んでみて、しっくりきた。読んでよかったぞ日記。

  • これは、本当にあの『楢山節考』の作者なのか…?
    と思うような日記でした。正宗白鳥に「先生は酒の…、菊正宗の…?」と聞いてしまうエピソードとか、思わず笑ってしまった。(もちろん「ボクはそんな家とは何の関係もないよ」と白鳥先生に否定されている。)
    偉大な作家にこういう言葉を使うのは失礼だけど、天然で自然体で、少し人とはずれていて、可愛い人だなあと思う。きっと、正宗白鳥をはじめとして文壇の先輩方に可愛がられていた人なのでしょう。深沢七郎の人間的な魅力に触れることのできる一冊でした。

  • 読売新聞サイト上の小泉今日子の書評を読み、タイトルに惹かれ手にとってみた。
    『楢山節考』の著者が綴ったエッセイといくつかの短編。文豪や著名 な俳優と交流するなかで、ぐずぐず思い悩んだり、あれこれ後悔する様子がおかしい。謙遜なのか、自信がないのか、トボけているのか、よくわからない人。
    『楢山節考』がベストセラーになり、「おっかさんが生きていたら」 (喜んだだろう) などと言う人について、「どうしてもできないことを、ボクにさせようと苦しめる」「残酷な人」と書いている。人間臭い人だなと思った。
    とにかく『楢山節考』を先に読んでから、これを読むべきでした。

  • わたしも友人・知人・家族らとのエピソードを、この本のように(白々しいほど無邪気に)まとめておきたい。グルメとマンガ録に成り下がっているブログをちゃんと更新しよう…

  • 楢山節考は昔に読んですきだった覚えがある。その人が書いた日記。表題作は、少し面白かったけど最後のほうはあんまりだった。

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言わなければよかったのに日記 (中公文庫)の作品紹介

小説「楢山節考」で中央公論新人賞を受賞し、異色の文壇デビューをした著者が、畏敬する作家たち正宗白鳥、武田泰淳、井伏鱒二などとの奇妙でおかしい交流を綴る。生涯を自然流に生きた異才の抱腹絶倒の文壇登場日記他。

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