生きている小説 (中公文庫 は 8-9)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122016934

感想・レビュー・書評

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  • 私はハワイが好きで今まで8回ほど訪れている。
    東オアフのワイマナロはオアフ島でも有数のヒーリングスポットであり気に入っている。元横綱でK-1戦士の曙太郎の出身地としても有名な場所である。長谷川伸『生きている小説』(1958年)には19世紀のワイマナロが登場する。
    この本は長谷川が見聞きした膨大なメモ類(ネタ帳)からピックアップした、古今数多くの日本人の群像を紹介しているエッセイである。
    その中で明治期、福沢諭吉の海外雄飛論に鼓舞され、裸一貫で海外に渡って半生を過ごした山崎寧(やすし)という男について章がさかれている。
    1890(明治23)年、山崎は米国軍艦モヒケン号に水兵として乗艦、太平洋航路上で働いていた。当時よくありがちだったことであるが、アジア人に対する人種差別がひどく数々の迫害やいじめを受けていた。それに対し山崎はひるむことなく艦内のすべての人間を敵にまわしてまで闘い続けた。そしてついには艦長によって山崎はモヒケン号を追い出される。その地がオアフ島のワイマナロだったというのだ。
    山崎はワイマナロで出会った先住民族のカナカ人に助けられ苦労してサンフランシスコに渡り、現地で成功を収める。まさに立志伝中の人物であった。エピソードの最後にそのカナカ人の日本人観が紹介されていてとても考えさせられた。「日本人はバケツの中の蟹だな。一つの蟹がバケツの内側をヤットコサとはいあがりかけていると、ほかの蟹がそいつをすぐ引きづりおろしてしまうからな。日本人は本当にバケツの中の蟹だな」・・・・・・そう114年経った現在も日本人は「バケツの中の蟹」なんだよ!海外旅行に行くとそういう日本人気質を目の当たりにする。文明批評としても一級品の長谷川伸の珠玉のエッセイ。21世紀の今こそ、読むべきかも。

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著者プロフィール

1884年、神奈川県横浜市生まれ。1963年、没。小学校を中退後、様々な職を転々とし、20歳の時に横浜新聞社に入社、その後都新聞社に転じ記者のかたわら創作を開始する。1928年に発表した「沓掛時次郎」が話題となり、いわゆる〈股旅〉ものの流行作家となる。代表作「瞼の母」「一本刀俵入」は今に至るまで繰り返し上演・映画化されている。著書に『荒木又右衛門』『日本捕虜志』など多数。

「2018年 『日本敵討ち集成』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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