雲と風と―伝教大師最澄の生涯 (中公文庫)

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著者 : 永井路子
  • 中央公論社 (1990年6月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122017153

雲と風と―伝教大師最澄の生涯 (中公文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 信頼できる資料、できない資料の全てをきっちり読み込み、それらの資料を残した作者の意向まで推測する。「虫が這うように」徹底的に資料を追った上で更に歴史知識と想像力をフルに働かせ最澄の人生を浮かび上がらせてくれた著者の仕事に感謝。文章も綺麗でいいな、と思いました。
    前半の密度に比べて最澄の晩年に関する記述があまい気がするのですが、そこは更なる最澄研究が待たれるということでしょう。

  • 伝教大師最澄の生涯を描いた歴史小説です。
    幼少のころから修行時代、桓武天皇との邂逅、唐への旅、空海との確執が、時代考証とともに語られます。
    空海と比べると、最澄の最後は、なんとも物悲しいですが、鎌倉仏教に与えた影響は多大なるものがあります。
    最澄の生きざま、平安仏教の概略がよくわかりました。
    読み応えがありました。

  • 「愚直」まじめでいい子な最澄。「有能」できる天皇の桓武。対照的な二人の運命の出会いを描いたリレー小説(半嘘)

     最澄と言われたら、同時に空海も連想するものである。その空海に比べたら、あまりにいい子すぎる。マキャベリズム的に考えたら、最澄はリーダーに向いていない人間だろう。結果、桓武天皇というバックを失ってからの苦悩を見れば、そのようになっている。
     逆に空海はあらゆるタレントを持ち合わせていて、機転を利かせて悪いこともできる人間だったんだろう。

     最澄は純潔な人間だったけど、最期には天台宗を確立させた(死を以て、まさに命がけで)。そうして後世で大繁栄を見せるが、天台宗には次を担う偉人がどうしてたくさん生まれたのだろう。やっぱり権力と結びついたから名が売れたのかな。それにしても、比叡山の地は都の東北で、やはりただならぬ場所なんだろうなぁ…と感慨深い。

     桓武天皇の記述が多いのはうれしい。日本史で習った「薬子の変」らへんはずっとイメージの湧かないままスルーしていたけど、これを読んで掴むことができた。安殿親王(平城天皇)のわがままっぷりも公家らしくて掴みやすい。

     全体的に小説というよりは、砕けた歴史解釈本のような感じであった。軽い気持ちでは読めないが、途中挫折はせず読める本である。そういえば司馬遼太郎の『空海の風景』もこんな感じだったな。

     桓武天皇の怨霊信仰を読んでいて、諡号の「武」についてなんか曰くがあったのを思い出した。東征や遷都と精力的に政治活動をした桓武に「武」という文字がつけられることはイメージ通りである。けれど、同じように「武」のつく、天武・文武・聖武とか皆、実権争いで恨みを買うようなことをしている人間なんだよね。壬申の乱、不比等の暗躍、長屋王の変…と権力の黒い影と戦った天皇たちを思い出さずにいられない。

  • 最澄についての小説。

    『氷輪』と同様に、小説、というよりは永井路子さんの視点で、
    最澄の人物像が語られる形式。

    桓武天皇と最澄とのかかわりは、単に政治的な庇護関係ではなく、
    魂からの親交であったとする見方が面白かった。

  • 吉川英治文学賞

  •  緻密な考証に基づく冷徹かつ柔軟な考察、及び繊細で奥深い筆致による、永井路子女史の作品には秀作が数多い。
     歴史とは干涸びた遠い過去でなく、現代の我々と変わらぬ血の通う人間の足跡なのだと実感させてくれる。
     中でも特徴的な史伝形式の著作は、殊にお勧め。
     歴史解釈の検討に当たり、著者自身が小説文に顔を覗かせて叙述する手法が生み出す、世界の広さが快い。
     双璧の一つが本作。
     弘法大師・空海に比し妙に印象の薄かった最澄の一生を、まさに“史料の上を虫が這うように”丹念に辿った解釈は、じわじわと胸を襲う静かな衝撃がある。
     一見素っ気無い史料文の様々な仕掛けや奥行きに唸らされたり、冷徹で尚誠意に満ちた復元の成果に感動したり。
     遠い時間の果てより再現された僧の輪郭は、真摯な信仰に溢れ全身全霊で情熱を燃焼させる、生身の人間であった。
     歴史的岐路に立たされた求道者は、純朴さ故に正面から傷つき、仏教の裾野の広さに呆然と佇み、それでも悲観も絶望もせず前向きに手探りし続ける。
     受戒後も若輩の身の無知・未熟・研究の不備を痛感し、修行に打ち込まんと叡山に登る背が、無垢なまなざしがまざまざと想像できた。
     焦燥・情熱・覚悟に痛い程共感しながら。
     そして、彼の人生とリンクする、桓武天皇の苦悶の呻きの壮絶さ。
     清僧と王者が巡り逢う瞬間のドラマには固執せず、著者は、彼らの魂の触れ合いの真髄に踏み込んでゆく。
     新たな宗教的信念に生きる最澄の進言に支えられつつ、淡路での悔過は為された。
     『日本後紀』のたった一行の記事が含む、帝王の懊悩の帰結。
     復元される光景に、頁を捲る指すらも震えた。
     自己批判と変革宣言としての、名誉回復の詔の重さ。
     そうして王者に尽くした心情を、愛だと著者は言い切る。
     その魂の救済に全力を傾けた法師の姿を、愛情によるものだと。
     律令国家体制の原則が緩やかに崩れゆく、鮮やかな終焉でもあった桓武の治世。
     時代を形成してきた枠組みが、時代の流れによって軋みを上げ変質する。
     やがて、苦悩する王者の不在が、時流の変化が、宗教者たちの間に仮定の余地の無い距離を生み出す。
     殉教者とも言える人の、信仰のひたむきさと生真面目さ。
     愚直なまでの正直さ、悲壮と紙一重の清廉さは、眩しく哀しい。
     最澄と桓武。
     歴史の波と闘い敗れて死した二人は、必然の犠牲を払ったにせよ、彼ら自身もまた歴史を回転させる一部であったことは違(たが)わない。
     著者の洞察の見事さは、常に深い感銘を与えてくれる。
     人物の顔立ちの彫りが目に見えるような描写というのが、小説の手法においても成り立つのだと目を見張る思いがしたもの。

  • <07/10/16〜21途中放棄>

  • 最澄に関する歴史小説はあまりないので、読んでみた。面白かったけど、内容が最澄に対してちょっと辛口。

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