潤一郎訳 源氏物語 (巻1) (中公文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784122018259

感想・レビュー・書評

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  • 令和6年大河ドラマに備えて『源氏物語』の最新の角田光代訳で読んでいます。私がいままで読んだ源氏物語は、高校の授業と、漫画『あさきゆめみし』、田辺聖子の『私本源氏物語』、そして角田光代版なので女性による現代訳ばかりでした。
    そこで男性訳でも読んでみようかなと思って、谷崎潤一郎版を角田光代訳と同時進行で進めてみます。

    角田光代訳はとーーーっても読みやすくわかりやすくなっていますが、かえってそのために現代感覚で「この男いい加減にしろー」と思ってしまうこともありました。(当時の価値観宗教観は今と違う!とは分かっていますが)

    こちらの谷崎潤一郎訳は、「丁寧過ぎる意訳にはせず平安朝の女性が造った写実小説ということを大切にする/読んでいくうちに自然と会得しそうなこと、字引きをひけば分かることは注意を入れていない/一字一句の詮索にとらわれずに安易な気持ちで読んでもらいたい」という訳し方です。
    そのため言葉や行動がわからないこともあるのですが、それがむしろ一つ一つの出来事に引っかからずに全体の流れに乗る読み方になり、現代感覚での「いい加減にしろー」とはあまり感じませんでした。良かった(笑)

    私としては角田光代訳で人物や流れを把握し、谷崎潤一郎訳で日本語の言葉を楽しむという順番で良かったなと思います。

    こちらの一巻は『桐壺』から『花散里』まで。
    巻ごとの出来事は角田光代版で書いたので、登場人物を改めて整理整頓します。
    角田光代版感想
    https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/430972874X

    <光君血縁>
    ・光君:色好みの主人公。危険な恋、無理な恋ほど燃える。良いところは面倒見の良いところ。一度通った女性はちゃんと面倒見る。
    ・桐壺帝:光君の父
    ・桐壺更衣:光君の母。身分が低いのに寵愛されたので、他の女性たちからいびられたり「帝がどこにでも呼ぶ軽い女」扱いされる。心労に倒れて亡くなる。
    ・朱雀帝:両親は桐壺帝と弘徽殿女御。光君の異母兄。『葵』の巻で帝になった。

    <藤壺女御>
    ・藤壺女御:桐壺更衣に似ているという事で入内した。前帝の四の姫なので身分は高い。光君にとっては、母親であり、理想の女性。光君と関係して若君を産む。

    <左大臣(ひだりのおとど)>
    大殿(おおいとの)とも呼ばれる。光君関連で「大殿のほうでは…」と書かれていたら葵の上のことを示すとか。
    ・左大臣:頭中将と葵の上の父。葵の上を嘆く場面は痛ましい。半ば引退していたが、光君のたっての願いで太政大臣になった。光君の面倒見の良さ、恩を忘れないところが現れる。
    ・頭の中将:葵の上と母親を同じくする兄。正妻は右大臣家の四の君。光君と仲が良い浮気っぽい色男。
     位がかなり変わりますが、現代語訳では便宜上「頭中将」で統一します。
    ・葵の上:左大臣と正妻との姫。頭中将の妹。光君の正室だがなかなか心が通わなかった。出産直後に物の怪に取り殺される。

    <右大臣(みぎのおとど)家>
    ・右大臣、正室:光君、左大臣家とはどうもうまくいかん。
     頭中将の正妻は右大臣家の姫。夫婦仲はあまり仲良くないようだけど子供は数人いるみたい。頭中将は人脈がバランスいいな。
    ・弘徽殿女御→太后:右大臣の姫。朱雀帝の母。桐壺更衣も気に入らないし、光君も気に入らないし、藤壺女御も気に入らない。
    ・朧月夜(内侍):右大臣家の姫で弘微殿大后の妹。朱雀帝に入内しているが光君との逢瀬がバレてピンチ!光君に連れ込まれたときは「困ったことになったけど、光君なら安心だし(安心なの!?)、騒いだりして強情で無粋だと思われたくないし」ということ。これが当時の恋愛感だったのか?

    <貴族や従者>
    ・藤式部丞(とうしきぶのじょう)、左馬頭(ひだりうまのかみ):『箒木』の巻で、光君、頭中将とこの二人の合計四人で女性についてあれこれ言う。
    ・惟光:光君の乳母の息子。

    <六条御息所周辺>御息所とは、帝や東宮の子を産んだ女性です。
    ・六条御息所:前夫桐壺院の弟(先の東宮)の死後、光君の恋人になったらしい。桐壷帝は光君に「弟が大切にしていた妻なんだから通うだけじゃなくてもっと大切にしてくれよ」と言っていたようだ。光君より年上で気位も高いので光君は近寄りがたく思うようになっていた。
     嫉妬に悩み生霊になって、夕顔と葵の上を取り殺したっぽい。六条御息所の葛藤描写はさすが女性作家だなあと思う。
    ・斎宮:六条御息所と、桐壺院の弟の間の姫。伊勢神宮の斎宮に就く。

    <空蝉周辺>
    ・空蝉:衛門督(えもんのかみ)の娘で入内も期待されていたが、伊予介の後妻になった。忍んできた光君と一夜を共にするが、その後は避け続ける。そのため思い通りにならない恋ほど燃える光君の忘れられない女性になる。
    ・伊予介(常陸守):空蝉の年上の夫。
    ・小君:空蝉の弟、12,3歳。光君は、空蝉を口説き落とすために小君を引き取って、朝廷で働けるように面倒を見る。この年齢でも恋愛事情に参加するのね…
    ・軒端荻(西の対の女):伊予介の前妻の娘。空蝉の部屋に入り込んだ光君は人違いに気がついたけど、うまいこと口説いて関係を持つ。「光君は女性に不誠実なことはしない」って書かれるけど、軒端の荻には不誠実だと思う。間違えて手を出して「ずっと好きでした☆結婚するより忍び合うほうが燃えるよね☆」そして彼女が結婚するときには「処女じゃないってバレても大丈夫かなあ」って無責任では…
    ・紀伊守:『帚木』で光君を迎えた伊予介と前妻との息子。

    <紫の上周辺>
    ・兵部卿宮:桐壺院の弟で、紫の上の父親。
    ・尼君:紫の上の祖母。
    ・紫の姫君:父親が、先帝の息子であり藤壺女御の兄。藤壺の姪なのでよく似ている。光君は、理想の妻にするため隠して育てていた。いきなり妻にされて傷心だったが、光君の理想の妻になっていく。

    <女性たち>
    ・夕顔:物儚げな家に隠れ住む女。頭の中将との間に娘もいるが、正室の実家である右大臣家から嫌がらせをされて姿を隠した。光君との廃屋の逢引きの最中に物の怪に取り殺される。
    ・朝顔の君:式部卿宮の姫。朝廷女房。賀茂の斎院も務めた。光君とは適度な距離を保ちつつ関係を続けている。
    ・花散里:桐壺帝の女御の麗景殿(優しい人柄らしい)の妹
    ・末摘花(常陸宮の姫君):常陸の親王の遺された姫。うら寂しい屋敷に住む。「零落した姫」であり個人資産もない。光君が顔を覗き見たら、座高が高く鼻が長くて赤くてなんか興ざめしちゃった。でも関係しちゃったら面倒見ないとなあ、と思う。
    ・大輔命婦(たいふのみょうぶ):左衛門の乳母の娘。末摘花の様子を気にかけている。浮気者だがおもしろいところがある女として光君もよく用事を言いつけている。酸いも甘いも噛み分けた熟女ってところ??
    ・源典侍(げんのないしのすけ):年配で好色。面白がった光君と頭の中将が手を出す。「年配」と書かれているが、この時代の年配なら30歳くらいだろうと思ったら、56、7歳なの??やるなあ。

    • hei5さん
      谷崎訳の源氏物語は、青空文庫の作業が終わるのを待ってゐます。
      与謝野晶子訳は ストックだけしてるけど、全く手付かずデス。
      とことん読書にはお...
      谷崎訳の源氏物語は、青空文庫の作業が終わるのを待ってゐます。
      与謝野晶子訳は ストックだけしてるけど、全く手付かずデス。
      とことん読書にはお金を掛けないことにしてマス
      2023/12/23
    • 淳水堂さん
      hei5さん

      いいねとフォローありがとうございます!
      私も基本的には図書館で借りて、手元に置きたい本だけ買ってます。
      『源氏物語』...
      hei5さん

      いいねとフォローありがとうございます!
      私も基本的には図書館で借りて、手元に置きたい本だけ買ってます。
      『源氏物語』は訳がたくさんあるし、大長編だし、どれにするか悩みますよね。
      2023/12/27
  • 大河ドラマ「光の君へ」を観ているので、モノは試しと、谷崎潤一郎訳で、全54 帖の最初の帖「桐壺」だけ読んでみた。

    その後、Wikipediaであらすじを再確認。主語が少ないので読み間違えた点多々。

    原文の雰囲気を味わえただけで一旦満足して、別の本に移ろう。読み終えられる気が残念ながらしない。(12 帖でギブアップする所謂「源氏の須磨帰り」よりもはるかに早いが、諦めの早さには自信がある。。)


  • 約3年ぶりの再読です。再読で初めて、10年20年先どころか50年以上先にまで及ぶ無数の伏線が張り巡らされていることと、その伏線がきちんと回収されてさらに次の展開へと続く構成力と展開力の見事さ、そして、源氏や紫の上といった主役級人物にとどまらず、約300人に及ぶとされる登場人物たちの哀しみ、憎しみ、もがきなどの無数の感情が大なり小なり丁寧に描写されて複雑に絡まり合って展開していくことに気がつき、驚愕させられている真っ最中です。

    端役ですら誰一人として無駄がなく的確な役割と効果が与えられ、見事な群像劇となっており、物語の層を厚くしています。
    源氏物語はよく恋愛小説にカテゴライズされていますが、個人的には、源氏個人の恋愛以上に、色々な登場人物の親しい人との死別の悲しみや無常観、子や孫の将来を思って嘆く姿、境遇に苦しむ心理描写の方が見事だと思うので、もっと別のカテゴライズにしたいな、と思ってしまいます。

    谷崎源氏の第一巻では、主人公の源氏の乳児期から不遇を得る青年期までが描かれています。
    章で言うと、帝である父の異常な執着が身分の低い母を結果的に殺すことになる「桐壺」から、世の常である権力争いと自らの生来の悪癖が招いた結果によって須磨・明石に隠棲する直前の時期を描いた「花散里」まで。

    この間に、かの有名な、継母・藤壺との不義や、紫の上と出会いなど、多くの名場面が含まれています。

    源氏物語の登場人物には、完璧な人は誰1人いません。そして、絶対的に幸福な人も誰1人としていません。源氏も、紫の上も、例外ではないです。
    源氏は母方の地位の低さと周囲の思惑から臣籍に降ったとはいへ、周囲に認められており、色々なことを人並み以上にできるし、基本的に優美で優しい男ですが、自分でもわかっていながら何度も愚かなことをしでかしては生涯の苦労の種を幾つも背追い込むし、ものすごく冷淡で残酷な面もあります。

    紫の上も、誰よりも源氏に愛され、美しくも寛容で優れた女性ではありますが、その地位の不安定さもあり、色々な人に嫉妬し、不安がり、死ぬまで嘆き続ける生涯を歩みます。

    誰もが、人との関係や自分の人生に悩み、苦しみ、時に憎んで、たくさん泣いて、そして、愛しい人と死別しながら、それでも日々を生きています。

    読み進めている次の第二巻は、源氏が不遇の境遇から返り咲いて絶頂の栄華を極めるまで。その華やかさの中にさへ、人々の哀しみや苦しみが散りばめられていきます。

  • 原文と同じく主語がないのでわかりづらいが、日本語がとにかく美しい。他の資料や手引きを参考にしてなんとか読んでいる。

  • 谷崎さんは生涯で3回源氏物語を訳しているんだけど、その最後の訳「新々訳」と呼ばれるものの第一巻です。
    この最後のいい訳♪に収録されているのは「桐壺」から「花散里」までだよ。

    谷崎源氏は原文に忠実なので、主語がほとんど抜けています。
    なので、敬語の使い分けで誰が主体なのかを読み分けるんだ。
    なので、初心者には向きません。

    源氏物語中級者には、かなりお勉強になる本だと思います。
    挿絵が安田靫彦さん、奥村土牛さん、福田平八郎さんってのも豪華だった~♪

  • 原作に忠実な訳です。
    現代語訳とは言うものの、読みづらいです。
    女性の訳者が多いなか、男性が訳したということで面白味がありました。

    ※(巻1)以降省略※

  • 与謝野晶子訳に比べて、原文に近い感じの谷崎訳。谷崎が訳すと、光源氏も、更に艶っぽさが増して良い。

  • 潤一郎訳源氏物語 (巻1)
    (和書)2010年07月04日 20:45
    1991 中央公論新社 紫式部, 谷崎 潤一郎


    読み易いというのが一番良い。そういう意味で読んでいて苦痛にならない。

    主語が曖昧であるが、原文がそうなっているらしい。原文の色気を生かしたつくりになっているらしい。

    だいたい光源氏というのは、それが超個人的なものらしいから、はっきりさせなくてもいいのかもしれない。

    ただ、集中して読んでいたら眩暈がした。

    本の所為か、体調の所為か?

  • 源氏物語を読んだことないのも格好がつかないなと思い立って、いくつもある中から谷崎潤一郎訳のものを読み始めた。

    学校の古典の授業では、かいつまんだところしかやらないので何のことやらという感じだったけれども、ちゃんと読むとちゃんとわかる。

    多少読みにくさがあって、雰囲気で読んでいる部分もあるけれども。

    光源氏ってのは本当にとんでもないやつだな、というのが正直な印象。
    1巻目の最後はまさに女性問題で終わるわけで。

    中身だけを捉えるとそんな印象になってしまうけれども、全巻読み終えたら、源氏物語の価値についてまた勉強してみてもいいかもしれない。

  • 確か高校のころに一度読んだのですが、また読んでみようと思い立ち、
    1か月に1巻読もうと計画しました。
    源氏よ、あんまり気が多いぞと思いながらも面白いです。

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著者プロフィール

平安時代の作家、歌人。一条天皇の中宮、彰子に仕えながら、1007~1008年頃に『源氏物語』を完成されたとされる。他の作品として『紫式部日記』『紫式部集』などが残っている。

「2018年 『源氏物語 姫君、若紫の語るお話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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