失敗の本質: 日本軍の組織論的研究 (中公文庫 と 18-1)
- 中央公論新社 (1991年8月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122018334
感想・レビュー・書評
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1930年代以降に日本軍が戦略を立て実行し敗北した6つの作戦の事例をもとに、組織論の観点から日本軍の失敗を分析した本。
前半の各事例のパートは内容が細かくて読むのに時間がかかったけれど、後半の分析パートは読みやすくてスルスル読めた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
第二次世界大戦における日本軍の失敗を色んな角度から分析している内容
・日露戦争、第一次世界大戦の成功体験を引きずって、いつまでたっても古き良き作戦を追求する組織
・陸海軍双方間の疎通のなさ、それぞれが個別に全く違った目標を立てて突き進む横通しの無い組織
・義理、人情が先行して、本来進めるべき戦略から道を外し続ける上層部
・現場と上層部の実情認識の乖離
・失敗してもその要因分析を怠り、フィードバックも無く、毎回同じ失敗を繰り返す愚かさ
・失敗を糧に新しいことにチャレンジしたり見直したりしない、自己否認学習無き愚かさ
とにかく、今の日本を象徴して無いか?!と感じ続けた内容でした
本書は40年近く前に出版されたようですが、既に将来の日本が同じようなことになるかも、と言及されている部分もあり、まさにその通りで鳥肌が立ちました -
第二次世界大戦での日本軍の敗戦理由研究本。
日清日露戦争での成功体験から戦術が偏り、暗記に傾倒する教育、年功序列の人事、情や根性を始めとする精神論などが組織の変化・成長を阻み、結果として非合理的な作戦を連発してしまったらしい。
もっとより詳しく敗戦の分析がなされているが、随所に現代の大企業と同じような構造が見れて面白かった。
例えば、当時の日本軍の軍事大綱が正典化していて、実際の戦闘において有益だったこともなければ、改良されることもなかったというような話。
日本の大企業の社訓みたいなやつも、かなり昔に策定されて、かつ内容が曖昧なやつをアップデートもせず、朝や昼休みに意味も分からず復唱し、実際の会議や戦略策定の場で意思決定の指針にすることもないところと似てるなと思った。
好きなエピソードは、ノモンハン事件当時の日本では作戦で失態を犯した要職がそのまま帰還するのは不義という風潮があり、そのまま自決するケースが多かったため、作戦失敗という貴重な経験を次の作戦に活かす機会が消失していた、というのがなんか間抜けで面白かった。 -
失敗が失敗であった事は、後にわかる事なので、当時は失敗に終わると思って別に行動していなかったでしょ
何とも後付け感が漂う感じがするが、、
大東亜戦争期は、日本は官僚組織であった為、新しい考え、策略を良しとはしなかった。
イノベーション・進化は、異質からくるが、敗因からの学びが薄いかつ画期的策提示もないので、結果、日本は負け続けることとなった。
日本の成功者は、過去の成功体験を固定化し、学習棄却している。
要は、①自己革新思考をもつ②目的的思考をもつ と読み取りました。
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自己啓発(日本軍を現代の会社組織などに置き換えてマネジメントを学ぶ)としてのみ読もうとするのは相当しんどいです、多分。
戦争史、兵器などにかなり興味がある人じゃないと途中で心折れるだろうと思います。
私は興味あるクチでしたがそれでもなかなか歯ごたえがある1冊でした。
淡々と「失った兵力:○千人」などと記述されてますが、それぞれに家族や人生があり、それがポンコツ首脳陣の誤判断(そもそも開戦自体が最大の誤判断)のせいで失われたと思うと沈痛な気持ちになります。
ただ失敗ばかりにフォーカスしてるので、日本軍がとんでもなく無能な組織で、そのせいで戦争に負けたみたいに見えちゃいますが、そもそもアメリカとの国力差を考えたらどうあがいても勝てない戦争だったんだろうな、と私はみてます。
万が一にもあの戦争に日本が勝利して、軍人が国権を掌握し続けてたら…と思うと複雑な気持ちですね。 -
読書会で『超入門「失敗の本質」』を読み、原著(失敗の本質)もぜひ読んでほしい、との選書担当の言葉があり、購入。難解だった。きれいに感想を言葉にできない状態である。
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現代に通じるものだらけで軽く絶望しました。
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過学習に陥った余り、自己変革が出来なかったのが失敗の本質。
僕は日本語の曖昧性や忖度文化も、組織が緊急時に機能しない原因だと思う。
いずれにせよ、「失敗の本質」は政治も含む日本的組織に脈々と受け継がれてる。 -
経営学者による敗戦の分析。ノモンハン、ミッドウェー、ガダルカナル、インパール、レイテ、沖縄の6つの戦闘が分析対象。
個々の戦闘の敗因は、諜報の軽視、作戦目的の不明確さ、戦略に関するトップの指示の曖昧さ、逆に現場の細かい行動に対するトップの干渉、特殊な使命感を持つ声の大きな人物の暴走など。
全体に共通する敗因は、日本軍が日露戦争の勝利によって確立された「白兵銃剣主義」(陸軍)と「艦隊決戦主義」(海軍)に過度に適応し(シングル・ループ学習)、環境に応じて組織目標を変更したり新たな概念を創造したりといった自己変革(ダブル・ループ学習)ができなかったこと。
所与の環境や目的に適応しそれが通用する状況では異常な力を発揮するが、環境が変化すると成功体験が足枷になり逆境を転換させることができないというのは、戦後の日本の高度成長とその後の失われた数十年に当てはまると思った。