旅は道づれガンダーラ (中公文庫)

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  • 中央公論社 (1992年10月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122019386

旅は道づれガンダーラ (中公文庫)の感想・レビュー・書評

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  • (2006.07.14読了)(2003.06.24購入)
    夫婦で書いた旅行記です。「クシャーン王朝・遺跡の旅」へ一緒に行ったのは、作家の井上靖さん、国立民族学博物館教授の加藤九祚さん、京都大学文学部教授の樋口隆康さん、などです。1978年10月8日から10月27日までの三週間のアフガニスタン、パキスタンの旅の記録です。1979年末にソ連軍がアフガニスタンに侵入しているので、今から考えると割りと安全に旅行できた最後の年ということになりそうです。
    破壊される前のバーミヤンの大仏も見ています。うらやましい限りです。
    この本の単行本は、1979年に潮出版社から出ています。旅行には潮出版社の方もついていっていますので、旅行の企画自体が潮出版社だったのでしょう。
    遺跡の旅は、テレビなどで見る分には、壮大な建物の跡やかつてどのようであったかとか、そこで発掘された彫刻や宝飾品なども見れますが、発掘された現場へ実際に行ってみると建物の一部があればまだいいほうで、見渡す限りの荒野であることが結構あります。しかも都会からかなりはなれてレストランもホテルもありません。朝ホテルを出て、車でいやになるほど移動して、たどり着いた遺跡を見て、野原でホテルを出るときに持たされた弁当を食べて、またホテルに帰るなどということになります。
    遺跡で掘り出された彫刻や宝飾品は、大都市の博物館に収められています。発掘された現場へ行っても何もありません。肝心の博物館へ行ってもたまたま休館日だったりするので、なんとも歯がゆい思いをすることがあります。
    そんな思いをしながらも遺跡を訪ねる旅は、個人的には好きで何度か出かけています。
    松山善三さんの方は、遺跡の旅は好きなようです。高峰秀子さんは、遺跡の旅はあまり好きではないようですが、井上靖さんや加藤九祚さんなどの高齢者が行くというので、身の回りの面倒を見てやらねば、と出かけたようです。

    ●考古学・歴史学(24頁)
    野郎というものは、女性への興味が薄らぐとともに、過去への強い郷愁と、学問という不可思議な道楽に走る。(善三)
    ●多民族国家・アフガニスタン(58頁)
    歴史を振り返ればペルシア人、ギリシア人、トルコ人、モンゴルの血が縦、横、斜めに走っているから、異形といってもいいような顔が、ずらずらと並んでいる。(善三)
    ●生水(64頁)
    生水を避ける、ということは実に至難なことで、サラダを作るには生水で洗うだろうし、食器を洗うのも水を使うだろうし、その食器を拭く布巾も水洗いをするだろう・・・と、考えてゆくと、手も足も出なくなる。(秀子)
    ●ヘロドトスの教え(93頁)
    「昔々は、元気な老人をみんなで食った。食われることで、老人は歓喜と共にその生を終わる。老人を食った若者たちは、食うことで老人の精気と知恵を貰ったと思い、老人は食われることで、再び若者の中に生きる。輪廻の思想の始まりである」
    ●遺跡の旅(115頁)
    日本を出発する時、見た旅程表には「クシャーン朝・遺跡の旅」と印刷されてあったから、僕は、てっきり京都、奈良にでも行くつもりで、あちらへ着けばのんびりと構えて、美味しい羊の肉など食いながら、香り高い茶を飲む旅かと思っていたのです。ところがどっこい遺跡という遺跡のことごとくが、人界魔境の砂漠の中にあるとはしらなかったし、・・・(善三)
    ●バーミヤンの大仏(116頁)
    私は、8世紀の昔に一体どんな方法でこの巨大な仏像の面をそぎ落としたのか?ということが気になってしかたがない。
    ●助け合いの精神(152頁)
    バスの前輪がその溝にはまり込んでしまった。車体を軽くするために私たちはバスから降りた。とたんに、そこいらにいた男たちが、二、三十人ほどもバスをめがけて突進して来た。男たちは、バスにしがみつくと、掛け声をかけながらたちまちにしてバスを溝から引き上げてしまった。そして、人々は、私たちの感謝の言葉を期待する様子もなく、歓声をあげサッサと散っていった。(秀子)
    ●ハッダの遺跡(215頁)
    左手の龕には等身大と思われる仏陀の両脇に、ギリシャの神話の、ヘラクレスの像と、ビーナスのような女人像が刻まれているではないか。右手の龕には、これも等身大の仏陀を囲んでアレクサンドロス大王の顔と、葡萄をかかげたギリシャ女神が、仏陀への敬愛を捧げている。(善三)
    ●絨毯工場(246頁)
    大きな織機の前に腰をかけて絨毯を織っているのは、なんと小さな男の子なのだった。年のころは9歳から12歳くらいまでの男の子が30人ほども、かっと見開いた目をすえ、織機にしがみつくようにして小さい両手をせわしなく動かしながら絨毯を織っているのだった。(秀子)
    (エジプトで絨毯工場を見せてもらったときは、女の子たちが織っていました。)
    ☆関連図書
    「西域物語」井上靖著、新潮文庫、1977.03.30
    「遺跡の旅・シルクロード」井上靖著、新潮文庫、1982.12.25
    「アレキサンダーの道」井上靖・平山郁夫著、文春文庫、1986.12.10
    「熱砂の中央アジア」加藤九祚・加藤久晴著、日本テレビ、1981.10.06
    「万年雪の大コーカサス」加藤九祚・加藤久晴著、日本テレビ、1981.10.29
    「東西文明の接点・ガンダーラ」樋口隆康著、NHK市民大学、1984.04.01
    「旅は道づれツタンカーメン」高峰秀子・松山善三著、中公文庫、1994.01.10
    「私の梅原龍三郎」高峰秀子著、文春文庫、1997.10.10

    高峰秀子 映画女優
    1924年生まれ
    1976年 「私の渡世日記」で日本エッセイスト・クラブ賞受賞
    松山善三 映画監督・シナリオライター
    1925年生まれ

  • 高峰、松山夫妻がそれぞれに綴った旅行記。
    交換日記になっているわけでなし、同じ場面をそれぞれの視点で書くわけでなし、なんとなくコンセプトの分からない本だった。
    あまり馴染みのない発展途上の地に向う夫婦の感覚が大仰で笑ってしまう。
    大量の消毒薬や過剰な防衛策。しかし、未だに日本を離れる機会がなかったり、少なかったりする人はこんなものなのかもしれない。
    ある意味、初々しいのか。
    そのせいか普通の視点で書かれる旅行記は面白い。旅慣れた人では見逃してしまうような場面も、なにげなく書かれている。
    追体験しやすい旅行記だ。
    折々に挟まれる写真は、ガンダーラの地の日常を写し取っていて溜息が漏れる。
    この二人が(旅行団は他にもメンバーがいる)辿った道を、自分もいつか歩けたらと思う。

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旅は道づれガンダーラ (中公文庫)はこんな本です

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